長男にしてやられた父の遺産争続教訓に…母が長女に残した「遺言」の意味(上)
家族を亡くして、お金の心配をするのは大変
(2)口座を凍結されても必要なお金を引き出すことができる
「主人のときは、お金を引き出せなくて大変でした」
和歌子さんはそう回顧しますが、相続の場合、銀行に逝去の事実を伝えると本人の口座は凍結され、お金を引き出せなくなります。和歌子さんは夫が保険に入っておらず、一時金がなかったので、病院の医療費や施設の利用料、葬儀などの費用が発生して困ったそう。これらの費用を立て替えなければなりませんでしたが、大半の預金は夫名義で、和歌子さん名義の口座は限られていました。
そのため、立て替え分を工面するのに苦労したようですが、故人を亡くして悲しみに暮れている中、お金の心配をしなければならないのは大変です。
しかし、2018年7月に法律が改正され、口座が凍結されていても遺族が一定の金額まで引き出せるようになりました。具体的には「口座の残高×3分の1×法定相続人の人数(今回は2人)」ですが、残高が少なすぎて立て替え分に満たないようでは困ります。
筆者は「残高が足りるように1つの口座にまとめましょう」とアドバイスしたのですが、残高を引き出すには、銀行名、支店名、口座番号が必要です。残された長女が、口座の在りかが分からないようでは元も子もありません。そのため、遺言には財産目録を添え、その中に和歌子さん名義の口座をすべて挙げておきました。
(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)
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