オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

44歳ひきこもり息子への相続、「障害者手帳」が解消する相続税の懸念

親の財産を子どもが相続する際、相続税がかかるケースがあります。子どもがひきこもっている場合、できる限り財産を残したいところですが、どうすればよいのでしょうか。

ひきこもりの子の相続税対策は?
ひきこもりの子の相続税対策は?

 ひきこもりのお子さんがいるご家族の中には「親亡き後、ひきこもりの子どもに財産を残すことはできそうだが、相続税が心配」という不安を抱えているケースもあります。

 相続人である、ひきこもりのお子さんに障害がある場合、条件を満たせば相続税の障害者控除を受けることができます。この障害者控除を受けることで、相続税を低く抑えることも可能です。

相続税の不安が頭をよぎる

 ひきこもりのお子さんを持つご家族向けの講演会を終えた筆者は、帰り支度をしていました。かばんに荷物を入れていると、不意に背後から、ある父親に声をかけられました。

「少しお話ししたいことがあるのですが、お時間よろしいでしょうか?」

 振り向いた筆者が「どうぞ」と応じると、父親は硬い表情のまま不安を口にしました。

「私には、ひきこもりの次男がいます。親亡き後、次男には生活できるだけの財産を残せることができると思いますが、相続税が心配なのです。何か良い方法があれば教えていただきたいのですが…」

「なるほど。ちなみに、私は税理士ではないので一般的な話しかできません。それでもよろしいでしょうか?」

 父親は、もちろんという様子でうなずきました。

父亡き後の相続税対策は?

 状況を把握するため、父親から可能な範囲で話を伺いました。

「私は今年で75歳になります。妻は2年前に亡くなりました。長男は結婚し、独立しています。次男は今年44歳で、20年以上ひきこもっています」

「なるほど。そうなると、相続人はお子さまお二人ですね。相続税の基礎控除というものはご存じですか?」

「はい。調べたことがあるので、それは知っています。相続人は子ども2人ですから、基礎控除は3000万円+600万円×2人=4200万円。つまり、相続財産が4200万円までなら相続税がかからないということですよね?」

「そうですね。一般的にはそのようになりますね」

「私には財産がそれ以上あるので、相続税がかかってしまうことになりそうです」

 そこで、筆者は父親にある質問をしました。

「大変失礼ですが、ご次男は通院されていますか? 障害年金を受けていたり、精神障害の障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)をお持ちだったりしますか?」

「はい、通院はしています。しかし、障害年金はもらっていません。症状が軽く、障害年金には該当しませんでした。障害者手帳は取得しています」

「ちなみに手帳は何級ですか?」

「3級です。それが何か関係あるのですか?」

 父親は疑問を口にしました。

1 2

浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

コメント