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いじめになるケースも…「ママ友」同士のトラブルはなぜ起こる? 良好な関係築くには?

「つるむ中学生」と同じ構図

 ママ友のコミュニティーの中には、「親分」のポジションに該当するママが必ず存在します。強い立場にある「親分」を取り囲むように、下に4~5人のママがいるのです。いじめのターゲットとなるママ1人に対し、常に数人のママが取り巻いている状況です。つまり、「1対1」ではなく「1対4~5」の構図であり、いわば一昔前の「つるむ中学生たち」と何ら変わっていないのです。

「親分」のママは、あることないことを言って味方のママを増やします。もし反抗するようなことがあれば、仲間外れにされ、グループ内に戻ることはできません。一方で、ママ同士が対立するケースでも、子ども同士の仲は良好なままであることもあります。

 しかし、こうした子どもの仲に親が介入するケースも珍しくありません。例えば、子どもたちの間に何らかのトラブルが発生したとき、子ども同士はすっかり仲直りしているにもかかわらず、親同士の関係が元に戻らず、親が子どもに「○○君とは遊んじゃだめ」と言い、それを聞いた子どもは「ママが○○君とは遊んじゃだめって言った」と、相手の子どもと遊べなくなってしまうのです。

 ママ友間でのトラブルは本来、子どもには関係のないもののはずなのに、トラブルを理由に子どもの人間関係を壊しているのです。それはもはや「保護者」ではないですし、親が「子ども化」しているといっても過言ではないでしょう。

 親の感情一つで子どもの人間関係が切られてしまい、結果的に、親も子どももグループの外へ追い出されてしまう…このようなケースは少なくなく、「子どものいじめ」が社会的問題として多く取り上げられる昨今、こうしたママ友間のトラブルの話を耳にするたびに「親の方はどうなのか」と疑問を感じます。

「巻き込まれたくないけど、断れない」。これがママたちの本音でしょう。コミュニティー内で嫌われたり、孤立したりするなどして、つまずきたくないからです。もし、学校内で起こっている子どものトラブルであれば、学校側が介入することで、双方の主張を聞き取り、相談に応じることも可能です。子ども間の事実関係を客観的に確認・整理することで、適切な判断もできるでしょう。しかし、親同士のトラブルに、学校側は安易に入ることはできないのです。

 ママ友間のトラブル自体は、おそらく今に始まったことではなく、以前から少なからず存在していたと思います。しかし、スマホやSNS、メッセージアプリの登場により、トラブルやその原因となる「種」が可視化されやすくなりました。広く知られる必要のない情報、家庭内でだけ表出させればよい感情や言葉…そうした「本来は隠されておくべきもの」がスマホなどのツールを通じて本人に届いてしまったり、自動的に見えてしまったりして追い詰められていくのです。

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上條理恵(かみじょう・りえ)

少年問題アナリスト

少年問題アナリスト、元上席少年補導専門員、東京経営短期大学特任准教授。小学校、中学校、高校講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。小中学生、高校生、大学生、保護者、教員に向けた講演活動は1600回以上に及ぶ。

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