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母への暴力、お金の無心…ひきこもりの40代男性が進む復帰へのいばらの道

ひきこもりの家族の中には、子どもからの暴力やお金の無心が続いているケースもあります。その解決策とは、どのようなものでしょうか。

親に対するお金の無心や暴力が続くケースも…
親に対するお金の無心や暴力が続くケースも…

 長期化、高齢化したひきこもりのご家族の中には、子どもからの暴力やお金の無心が続いているケースもあります。親子で話し合いができない状態になってしまい、何もできないまま時が過ぎていく…そんなご家庭も多いです。

 しかし、お金の問題は待ってはくれません。いずれは現実を受け入れなければならないときがやって来ます。このまま何もしないでいると、親子で共倒れするリスクが高まります。ご家族だけで何とかすることが難しい場合、成果はすぐに現れないかもしれませんが、できるだけ多くの支援機関とつながり、サポートを受ける必要があります。

大学を2度留年して中退、社会に出ず…

 相談者は60代の母親。現在は40代の長男と別居しています。父親は4年前に亡くなり、長男に兄弟姉妹はいません。長男と一緒に暮らしていない理由を聞いたところ、母親は「父親が亡くなった後、長男が母親に暴力を振るうことが増え、別居せざるを得なかったから」といいます。

 長男は小さい頃、友達が少なく、家の中で遊ぶことが多かったそうです。学校や家の中で気に入らないことがあると、物を壊したり両親に暴言を吐いたりすることがありましたが、そのようなときは、父親が一喝して長男を抑えつけていたそうです。

 大学生になると、今までとは打って変わって友達と夜遅くまで遊ぶようになりました。授業に出られないことも増え、単位が足りずに留年してしまいました。留年後も友達と遊ぶことをやめず、2度目の留年が決定。ショックを受けた長男は大学を中退しました。

 中退後、家の中でただ漫然と過ごしている長男に「せめてアルバイトでもしたら」と声をかけると、「こうなったのはお前たちの育て方が悪かったせいだ!」と逆上し、壁を殴ったり物を壊したりしたそうです。

 成人しても社会に出ず、家で親に暴言を吐いたり物に当たったりしていました。心配した両親は、近所の心療内科受診を促しましたが拒否。「俺はおかしくない! おかしいのは、お前たちの方だ。お前たちが診てもらえ!」と怒鳴りました。両親だけで近所の心療内科へ相談に行きましたが、医師は「本人が来ないことには何とも言えません」。保健所や市役所にも行きましたが、いずれも「本人を連れてこないと何もできません」と言われてしまいました。

 本人を連れて来られないから困っているのに…八方ふさがりになった両親はどうすることもできないまま、不安定な長男と一緒に過ごしました。しかし、そのような生活も4年前の父親の急死をきっかけに大きく変わることになります。

 父親が亡くなってから、長男の暴言暴力はますますエスカレートし、「お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ。お前が最後まで責任を取れ!」。そう怒鳴り、母親をたたいたり、蹴ったりすることも増えました。「このままでは殺されるかもしれない」と恐怖を覚えた母親は長男に黙ってアパートを借り、別居しました。母親の住民票の住所は自宅マンションのまま、新しい住まいの住所は長男には教えていません。長男との連絡は電話やメールでし、お金は長男の銀行口座に月1回振り込んでいます。

 長男の住まいは実家の賃貸マンションで、家賃は管理費などを含め月10万円。家賃のほかに生活費として月10万円を振り込み、合計で月に20万円援助しています。それでも足りない月には長男からお金を無心する電話が入るそうです。母が渋ると長男は大声で怒鳴って責め続けます。結局根負けして、いけないと思いつつ、数万円振り込むこともあるそうです。もちろん母親も生活費がかかります。年金収入の範囲内で何とかやりくりしていますが、貯蓄はみるみるうちに減っていきます。

 このような生活を続けると、あと6年くらいで貯蓄が底をつくことが分かりました。このままでは、母子共倒れの危険があります。母親に「今後どうしていきたいのか」と聞くと、次の通りでした。

・長男と同居はできない
・お金の援助をいきなり断ち切ることはしたくないが、いつまでも続けられない
・母親一人で長男に対応するのは難しい

 長男の意見や希望も聞かなければなりませんが、まずは母親の意向も踏まえ、長男に関するお金の見通しを一緒に立ててみました。今後1年間は今まで通り月20万円援助し、その後の3年間は月12万円に減らします。その他の費用も含めて、4年間で合計700万円を長男に援助。4年の猶予期間を設け、その間に長男の新しい生活について準備することになります。もちろん、すべてがうまくいくとは限りませんが、具体的な数字を出すことで長男もイメージがしやすくなる効果があります。

「長男と対面でお話をするのは危険でしょうから、まずは電話やメールで伝えてみてください。その後、いろいろな支援機関とも連携を取るようにしましょう」

「はい。そうしてみます。きちんと話を聞いてくれればよいのですが…」

 母親の表情は曇ったままでした。

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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