認知症になって妻に不倫された43歳男性、娘を守りたい一心で離婚を決断するまで(下)
夫が、働くこともできないような病気にかかったとき、妻が助けてあげるのが本当の夫婦かもしれませんが、生活苦や夫の世話が嫌で“離婚”に踏み切ろうとする女性もいるようです。
若年性認知症と診断された会社員の夫と、病気の夫を尻目に他の男性と不倫をする専業主婦の妻のケース。前回は、妻が不倫発覚後、娘を残して実家に帰るまでを描きましたが、後編の今回は、夫が、娘の親権を手に入れるために離婚すべきか否か判断を迫られます。
送られてきたのは「離婚調停の申立」
「裁判を起こされるなんて、身に覚えがありませんでした。当時の僕は、妻に裏切られたショックで臆病になっていたんです。開封するまで2~3日かかりました」
それから2週間後。家庭裁判所から雅一さんの元に手紙が届いたのですが、手紙の件名は「離婚調停の申立」。妻は雅一さんと離婚すべく裁判所へ離婚調停を申し立てたのです。さらに妻は調停の申立書を補足するかのように「一緒になりたい人がいるから離婚してほしい。心寧(娘)はこっちで育てるから、さっさと返してよ!」とメールを送ってきたのです。
「病気の症状が進めば近い将来、働けなくなり、収入が途絶えるでしょう。夫は役に立たないので用なし! まだ40歳なのに夫の介護を押し付けられるのは嫌。それなら、もっと若くて元気で、少なくとも夫より健康な彼に乗り換えようかしら!」
雅一さんは激しい目まいに襲われ、さらに過呼吸を引き起こして、その場にひっくり返ってしまったそうですが、自分の存在を全否定されたのだから無理もありません。闘病中の夫を「ポイ捨て」するのに、何の躊躇(ちゅうちょ)もしない妻の異常性を目の当りにして平常心を保つのは到底無理です。
「そんなに娘のことが大事なら娘を連れて行くのが普通ですよね。それなのに、娘を引き取りたいってチャンチャラおかしいですよ! もしかして、あの男に父親代わりをやらせようとたくらんでいるんじゃないでしょうか。僕は離婚なんて考えていないし、本当に娘のためを思うなら、早く男と別れて家に戻り、元の生活に戻るべきじゃないですか!」
雅一さんはあまりにも興奮しすぎて、首から上、そして左右の耳は真っ赤に染まり、目は血走って充血している様子でしたが、薬の影響でしょうか。顔が全体的にむくんでパンパンでした。
筆者が最も心配していたのは「娘さんが自立する前に雅一さんに万が一のことがあった場合のこと」です。病気を治そうと必死で頑張っている雅一さんに、「もし(病状が悪化し)娘さんのそばにいられなくなったら」という後ろ向きな言葉、運気が下がる物言い、そして最悪のタラレバは伝えたくなかったのですが、とはいえ娘さんのことを考えると、見過ごすわけにはいきません。
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