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認知症になって妻に不倫された43歳男性、娘を守りたい一心で離婚を決断するまで(下)

娘の親権を手にして離婚すべきか

「万が一のことがあったら、このままでは(離婚せずに婚姻関係を続けると)、娘さんは奥さんのところへ連れて行かれますよ」

 筆者は雅一さんに、心を鬼にして切り出したのですが、相手は闘病中の夫を追い詰めるために手段を選ばない「異常性格」の妻と、認知症を患った夫に気兼ねせず不倫に興じる男のペアです。

「相手の男は『自分の娘として育てていくんだから、頑張ろう』と思うでしょうか。想像してみてください」

 筆者はそんなふうに雅一さんへ投げかけたのですが、娘さんの容姿や性格、言動には、父親をほうふつとさせるところがあるはず。男はたまたま、子連れの彼女を好きになっただけで、必ずしも娘さんを好きなわけではありません。父親の面影を感じるたびに娘さんの存在をうっとうしく感じるかもしれず、男を継父にすれば育児放棄や虐待に走る可能性もあり、そうなれば、娘さんには「生き地獄」のような日々が待っています。

 夫婦が結婚している間は、夫も妻も未成年の子の親権を持っています(=共同親権)。しかし、離婚届の親権者欄に名前を記入することで、片方は親権を持ち続け、もう片方は失い、非親権者になります。このことを踏まえると、雅一さんが娘さんの親権を持つことができれば離婚に応じてもよさそうですが、たとえ、妻が親権を失っても、娘さんを引き取る余地は残るので安心できません。

 もし、雅一さんが病気の進行によって娘さんのそばから離れた場合、誰が娘さんを育てていくのでしょうか。雅一さんの父親は75歳と高齢なので除外するとして、未成年後見人の候補は実の母親である妻と雅一さんの姉です。しかし、妻と姉が話し合って決めるのではなく、最終的には家庭裁判所が決定します(民法840条)。外で間男を作り、闘病中の夫を残して家出し、「これからは彼が父親だから」と言い、離婚を切り出したとはいえ、姉が妻の過去の悪行を確実に証明できるかどうか分かりません。

「こんな奥さんでも戸籍上は実の母親です。裁判所がそれらの事情を知らなければ後見人を奥さんに指定する可能性もゼロではありませんよ」

 最後に筆者はそう言って、雅一さんにどうするかの判断を仰いだのです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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