認知症になって妻に不倫された43歳男性、娘を守りたい一心で離婚を決断するまで(上)
暗証番号を思い出せず…認知症と診断
「早く楽になりたいと思い、死にたくなることもあります。しかし、娘のためにできるだけのことをしてあげたいという気持ちで奮い立たせています」
雅一さんは涙ながらに語りますが、自分の異変を感じ、病院を受診し、担当医から若年性の認知症だと告げられたのは3カ月前のこと。きっかけは銀行のATMでした。
「今月分の生活費を自分の口座から引き出そうとしたのですが、どうしても暗証番号を思い出せないんです。それからはスマホにメモするようにしたのですが、他にも大事なことを忘れてしまうことが続いたので記憶がおかしいのではないかと思って…」
医師の見立てによると、病気からくる記憶障害が原因で、薬の投与によって進行を遅らせることはできるものの、完全に止めるのは難しいとのこと。
「すでに母は3年前に亡くなっています。父は75歳ですが、もういい年なので心配をかけたくありません。今回のことを知っているのは姉だけです。大事なものの保管場所も教えました」
筆者が引っかかったのは、後を託すのが妻ではなくなぜ姉なのかという点。妻には法定相続分(法律で決まっている相続分)があり、姉にはないのですが、法律ではなく常識で考えても、遠くの姉より近くの妻の方が信頼関係が強いはず。配偶者より兄弟姉妹を優先するなんて「よほどの事情」があるのでしょうが、雅一さんと妻との間に何があったのでしょうか。
雅一さんは薬の副作用で目まいや嘔吐(おうと)に悩まされており、「この場で倒れてしまうのではないか。みんなに迷惑をかけたくない!」という恐怖にさいなまれたり、「病気になる前はもっと早くできていたのに…どうしてなんだ!」という焦りや、「みんなは病気の僕のことを足手まといだとばかにしているんだろう」という妄想に襲われたりすることも少なくなかったようです。
このような不安に負けず、病気に立ち向かうため仕事の合間を縫って通院を続けてきたのは、「妻子のために病気に打ち勝たなければならない」という一心からでした。「妻は自分のことを全面的に応援してくれている」と思い込んできたようです。「夫婦なら助け合うのが当然」という感じで。
「妻には、いつも付き添ってもらって悪いと思っていたので、その日は『大丈夫だよ』と言い、1人で病院へ行ったんです。今まで妻は家のことと僕のことで手いっぱいで、たまには自分の時間も必要だろうから。でも、何をしてもいいわけではありませんよ! 僕の目を盗んで男を連れ込むなんて」
雅一さんの怒りは、火山の噴火のように爆発したのですが、何があったのでしょうか。妻は健康オタクで10年来、ジム通いを続けているのですが、そこで声をかけてきたのが、ジムの男友達。妻は意地悪な女友達にいじめられており、この男性が女友達を注意してくれたのです。男性に「飲みにいきませんか」と誘われ、妻は「お礼をしないと」と乗り気だったそう。
雅一さんはもちろん反対したのですが、「やましいことがないなら(スマホの)ロックをやめる」という条件を付け、渋々送り出したそう。妻は約束通り、家にいる間は自分のスマホのロックを解除したのです。そして、雅一さんは「どうせ白だろう」と深く考えず、妻がゴミ出しに行っている間にスマホを見てみたのですが…。
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