認知症になって妻に不倫された43歳男性、娘を守りたい一心で離婚を決断するまで(上)
不倫発覚後、実家に雲隠れした妻
「会えないなら写真だけでも送って!!」
「水曜の昼間はパパがいないから、うちに来てもいいよ」
普段、雅一さんに言わないような甘い言葉のオンパレードがLINEに残っていたのです。雅一さんは手が震え、歯ぎしりが止まらず、過呼吸にならないように息遣いを整えるので精いっぱいでしたが、LINEの画面を自分のスマホで撮影し保存することはできたようです。
このように、不倫の証拠はダダ漏れ状態だったわけですが、夫は病気の影響で判断力や記憶力が低下しているからバレないだろうと高をくくっていたのでしょう。雅一さんは、ただでさえ病気発覚のショックで打ちひしがれている中、不倫発覚のショックに見舞われ、平静を保つのは無理でした。
こんなふうに稼ぎ頭の夫のことを見下し、軽んじ、大事にしない妻が塩らしく謝ったり、涙を流したり、腰を低くしたりすることを期待するのは到底無理。案の定、妻は自分の過ちを棚に上げ、あろうことか雅一さんへ責任を転嫁してきたのです。
「これ以上、結婚生活を続けるなら、私はあんたに一生、口答えできないでしょ!」
結婚生活の中で、夫婦の間で意見の不一致や考え方の違い、方向性の相違などが生じ、けんかになることは避けられませんが、妻は雅一さんがその都度不倫のことを蒸し返し、マウントを取り、従わせようとするだろうと決め付け、「夫が悪い」と言っているのですがそれだけではありませんでした。
「周りと比べてお前が一番幸せだろうって言ってたよね。もう最後だから言わせてもらうけれど、私は今まで気持ちよく過ごした覚えはないから、ずっと苦痛だったんだよ!」
配偶者の採点が100満点で何の問題もなければよいですが、誰しも多少なりとも配偶者への愚痴や不満、悪口を抱えているもの。しかし、どちらか一方が10割悪いことは少なく、例えば、夫が5割、妻が5割という具合でお互いさまなのだから「人の振り見てわが振り直せ」が正解でしょう。相手のことを一方的に責め立てるなんてお門違いです。
「何不自由ない生活をさせてあげるって言ってたよね? でも今は何? こんな病気じゃ、いつ働けなくなるか分からないし、最初の約束と違うじゃん。偉そうなことを言わないでよ!」
まるで、病気になった雅一さんが悪いという感じで責め立ててきたのですが、雅一さんも病気になりたくてなったわけではないのに、ひどい言いようです。
専業主婦の妻にとっては、夫についていけば一生安泰と信じ、安心しきっていたところに突然振りかかってきた病気の発症です。まだ現実を直視できず、背を向けていたのかもしれませんが、それにしても「やっていいことと悪いこと」があるでしょう。
結局、雅一さんの詰問に耐えかね、妻は最低限の荷物を持ち出し、実家へ雲隠れしたのですが、雅一さんにとっては予想外の展開でした。いきなり妻が姿を消したせいで気持ちが不安定になり、さらに症状が悪化し、ベットから起き上がるのがやっとの状態に。食事は娘さんに現金を渡して何とかしてもらい、洗濯は自分(娘さん)の分だけやってもらうというありさま。雅一さんは仕事を1週間休まざるを得ませんでしたが、妻は病床の雅一さんを一切容赦せず、地獄へ突き落そうとしたのです。
今度は何をしでかしたのでしょうか。
(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)
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