予期せぬ妊娠をした36歳女性、父親になろうとしない相手に“責任”を取らせた方法(下)
恋人同士で盛り上がるイベントが目白押しの12月下旬ですが、予期せぬ形で子どもを身ごもってしまう女性もいます。筆者の元へ相談に来た、36歳女性のケースです。

父親になる心の準備も、結婚するお金の準備もない男性の子どもを身ごもった36歳女性のケース。「本当に俺の子なのか」と逃げ回り、「美人局(つつもたせ)と同じだ!」と暴言を吐く男性に、責任を取らせることはできるのでしょうか。今回はその後編です。
支払うべき養育費は1000万円以上
そして、2つ目のポイントは、出産中絶の選択権の所在と金銭負担のシミュレーションです。彼は中絶を強要した自分より、中絶を決めた麻衣さんの方が悪いと言わんばかり。身勝手な持論を展開し、責任の所在をすり替えようとしてきたのです。しかし、考えてみてください。
もし麻衣さんが彼の反対を押し切って出産に踏み切った場合、どうなるのでしょうか。中絶するには子の父親である彼の同意が必要ですが、逆に、出産するのに彼の同意は不要です。なぜなら、彼の同意がなくても、そのまま時間が経過し、途中で何事も起こらなければ、子どもは無事産まれてくるのだから。
「出産するかしないかを決めるのは、彼ではなくあなたですよ。だから、もっと堂々としていないと!」
私は麻衣さんを励ましたのですが、彼にとって子どもの存在は不都合なのだから、麻衣さんを説得し、中絶に同意させ、手術を受けさせなければ困るのは彼の方です。しかも、おなかを痛めるのは、彼ではなく麻衣さんなので、本来、彼が麻衣さんに頭を下げるべき力関係のはず。
彼が心配しているのは、子の行く末や麻衣さんの体調ではなく自分の懐事情だけ。「あの女にだまされたんだ! できない体だから(コンドームを)つけなくても大丈夫って言うから」という理由で親と子の縁を切ることは不可能。しかも、親と子の間には法律上、扶養義務が存在するので、彼は子が成人するまでの間、麻衣さんへ毎月決まった額の養育費を支払わなければなりません。養育費の受け取りは、麻衣さんではなく子どもの権利で、妊娠の経緯を理由に支払いを拒むことは困難です。
例えば、厚生労働省の「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」によると、母子家庭が受け取る養育費の平均は毎月4万3482円。つまり、彼が支払うべき養育費は合計で1043万5680円(毎月4万3482円×20年)なので、養育費の有無で人生が変わります。
「できない体だから(コンドームを)つけなくても大丈夫」と誘ってきたのに…納得のいかない経緯で望まざる子が誕生したとしても、彼が1000万円の大金を失うことに変わりはないのです。
一方、麻衣さんが彼に請求した中絶費用は25万5000円。万が一、麻衣さんが途中で「やっぱり産むから!」と翻意した場合、このまま何事もなく堕胎する場合に比べ、男性の負担額は40倍(養育費1000万円は中絶費用25万円の40倍)に膨れ上がるのだから、雲泥の差です。彼が「どうしても産まないでくれ!」と頭を下げるのが先か、麻衣さんが「どうしても産めないの!」と泣きつくかのが先か…互いが互いの腹を探り合う「チキンレース」の様相を呈してきたのですが、長引けば長引くほど「出産」という悪夢が現実味を帯びてくるので長期化すると困るのは彼の方。
「ああ言えば、こう言う」という不毛な応酬に業を煮やしたのか、彼は麻衣さんのことを「金の亡者」だと揶揄(やゆ)してきたのです。「結局、金か?! 金さえもらえれば、それでいいのか」と、子どもの命をお金で解決しようとするあさましい女だと麻衣さんの人格を否定しにかかったのです。
コメント