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予期せぬ妊娠をした36歳女性、父親になろうとしない相手に“責任”を取らせた方法(下)

関わりたくない一心で、誓約書に署名

 麻衣さんは彼の子を身ごもり、結婚を拒否され、中絶手術を受けざるをえなかったのですが、一連のトラブルに巻き込まれなければ、健康を害し、仕事を失い、収入が止まることもなかったでしょう。そのせいで失った利益を法律上、「逸失利益」といいます。

 例えば、交通事故の場合、事故の影響で被害者にまひなどの後遺症が残り、働くことが難しくなった場合、加害者は被害者に「事故に遭わなければ得られたであろう給与の総額(=逸失利益)」を支払わなければなりませんが、今回のケースに同じ理屈を当てはめることは可能でしょう。

 しかし、逸失利益の支払いは分割にせざるをえず、彼が毎月きちんと支払うかどうかは不透明で、支払いが遅れたり止まったりしたら麻衣さんは彼に催促しなければなりません。そして、現時点で予見できない費用が発生した場合も同じく、彼ともう一度話し合って負担額を決める必要があります。麻衣さんは彼と一刻も早く縁を切ることを最優先に考えているので、多少のお金を手に入れるために彼の存在を思い出し、トラウマが蘇り、悪夢にうなされるようでは本末転倒です。

 そこで、麻衣さんは慰謝料を受け取るには彼が用意した誓約書に署名するしかありませんでした。誓約書には今回の件を口外しないこと、何があっても追加の金銭請求をしないこと、そして「本日25万5000円を支払い、確かに受け取ったこと」が書かれていました。麻衣さんは彼と関わりたくないという一心で誓約書に署名したのです。

「今回のことで『本当に』子どもを産めない体になったら、どうすればいいですか」

 麻衣さんは切実な表情で訴えかけますが、彼の本質、例えば、人間性や人格、考え方や価値観が結婚相手としてふさわしいのかを見定める努力をしたのでしょうか。麻衣さんは「もし(子どもが)できたら結婚してくれる?」という質問に、彼がイエスと答えたら大丈夫と安心していたようですが、残念ながら相手がうそつきだったら意味がありません。実際のところ、結婚する気がないのに体目的で「一緒になれたらいいね」と言ってのける輩は一定数存在するのです。

 結局のところ、麻衣さんは妊娠しにくい体質をいいことに、体の結びつきで彼をつなぎとめただけ。どんな事情があっても、結婚相手として家族として、そして子どもの父親としてふさわしいと思えるまで、安易に男性を受け入れない方が後々のことを考えると賢明でしょう。

(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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