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森保一監督はなぜ“奇跡”を2度起こせたのか? サッカーW杯をマネジメントの観点で考える

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スペイン戦で同点ゴールを決め喜ぶ堂安律選手(右)(2022年12月、時事)
スペイン戦で同点ゴールを決め喜ぶ堂安律選手(右)(2022年12月、時事)

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、森保一監督率いる日本代表が、W杯優勝経験のあるドイツとスペインに勝ちました。「奇跡」とも言われていますが、2度起こせば奇跡とはいえないかもしれません。その後、クロアチアに惜しくもPK戦で敗北し、念願のベスト8は果たせませんでしたが、十二分に立派な成果ではないかと思います。

 森保監督に対しては、アジア最終予選で苦戦したことや、W杯前哨戦であまり成績がよくなかったことから、その采配が不安視されていました。しかし、ドイツに勝った頃から、「森保監督、ごめんなさい」とネット上で話題になるなど、見方が変わっています。今回は、森保監督の采配をマネジメントの観点から考えてみます。

選手に高い当事者意識持たせる

 森保監督は自らを、全てを自ら意思決定する「トップダウン型」ではなく、メンバーの声を聞きながら決断する「マネジメント型」(一般的には「ボトムアップ型」でしょうか)と語っているそうです。

 実際、クロアチア戦のPKの順番は監督が最初から決めたものではなく、なんと立候補制だったようです。他にもスペイン戦でどのような体制(システム)で戦うのかということに関しても、複数のシステムを選択肢として提示しながらも、選手からも意見を出してもらい、最終的にあの型になって、それが功を奏したとのことでした。

 スペイン戦のシステムについては、サッカーど素人な私はよく分かっていませんが、マネジメントの観点で考えると、この話を聞いて「さすが森保監督は上手なマネジメントをされているな」と思いました。結果として、選手たちに当事者意識や自責性、自発性の意識を持たせることに成功しているからです。

 象徴的だったのが、帰国後の記者会見で主将の吉田麻也選手がクロアチア戦のPKの立候補制について聞かれた際に話した言葉です。少し長いですが引用します。

「全く同じやり方でニュージーランドに(東京)オリンピックで勝っている。だから僕はこのやり方が間違っていたとは特に思わない。メディアを見ると『事前に言っておくべきだった』とか『決めておくべきだった』というが、全部結果論じゃないかなと思う。逆にニュージーランドの時はそんなことは一言も出なかった。負けたからこのやり方がフォーカスされているが、僕はそこに間違いがあったとは思わない。選手側としては思わない」

 この発言からは、誰のせいにもせず、「自分たちも納得してこの道を選んだ」という高い当事者意識がうかがえます。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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