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森保一監督はなぜ“奇跡”を2度起こせたのか? サッカーW杯をマネジメントの観点で考える

「自分で決めたこと」への責任感

 人を率いるマネジャーは、組織全体の結果に責任を負います。人は責任を負うことについては「コントロールしたい」と思うのが普通です。コントロールできないことについて責任を負うことは、できるだけしたくないことでしょう。それなのに、失敗するかもしれないのに、メンバーに権限委譲をしてその責任を負うというのは、大変な覚悟です。それを森保監督は実行しているように見えます。

 本来、監督が決める戦術などの決定に選手を関わらせることで、選手たちに「自分で決めた感」を持ってもらい、その結果、「自分で決めたことなのだから、やりきろう」「自分で決めたことなのだから、責任は自分にある」と最終的に決まった方針に対して最大限のコミットを引き出しているのです。

 それなら「なんでも選手に決めさせればよいか」と言えばそうではありません。立場が違うので、マネジャーは全体最適、メンバーは自分の役割をベースに個人最適で考えるものであり、本当にすべてを任せてしまえば最適解が出ないかもしれません。ですから、監督は基本、自分の腹案を持っていなければなりません。そして、誤解を生む表現かもしれませんが、「その腹案をまるで選手自らの案であるかのようにコミットさせる」ということが実は重要ではないかと思います。

 ここからは想像ですが、森保監督は「よく分からないから選手たちに自分で考えてもらいたい」などとは思っていないはずです。本当は「これでやれ」と言いたいところを、ワンクッションおいて選手に考えさせて、監督がやりたかったことを自分たちで選ばせることをしているのではないかと想像します。

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曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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