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「鼻毛」は切ったり抜いたりしてもいい? ボーボーのまま放置したらダメ? 耳鼻科医に聞く

鼻毛を処理し過ぎてしまったら、どうなる?

Q.鼻毛の切り過ぎや、抜くことによる弊害はあるのでしょうか。「鼻毛を処理し過ぎると、風邪をひきやすくなる?」と疑問を持つ人もいるようですが、実際はどうですか。

市村さん「異物の侵入を防ぐ働きがなくなると感染が起こったり、アレルギー反応が起こったり、物理的刺激によるくしゃみやせきが増えるといった可能性は高まりますが、先述の『ぜんそくが増える』という報告以外、例えば『風邪をひきやすくなる』といったような明確な証拠は報告されていません。

衛生学的観点からみると、鼻毛を“抜く”ことは推奨できません。鼻の穴は、外部からのほこりや粘膜からの分泌物がいつもたまりますし、湿気や体温によって細菌が繁殖しやすい場所でもあります。そのため、むやみに鼻毛を抜くと出血するだけでなく、毛穴の奥にある『毛包(毛を包んでいる部分)』に細菌が入り込み、感染を起こします。多くは合併症もなく自然に治りますが、顔の中心部分に起こる感染は『面疔(めんちょう)』といい、静脈炎や髄膜炎を起こしやすいとして恐れられており、最悪の場合、脳に及んで死亡するケースすらあります。しかし、適切に抗菌薬を使えば重症化しないで済みます」

Q.鼻毛処理を行う際のポイントや注意点を教えてください。

市村さん「鼻毛処理のポイントは、『完全になくさないようにしつつ、見た目を整える』ことです。方法としては(1)切る(2)抜く(3)脱毛する―の3つが考えられますが、行う際は(1)がお勧めです。鼻毛が減ると、呼吸器のフィルターとしての機能低下にもつながるので、鼻毛は“抜く”のではなく、“短く切る”のがよいです。

鼻毛を切るには、はさみを使う方法と、電動式のカッターを使う方法があります。最も多いのは、はさみで切る方法でしょう。その際、皮膚を傷つけることがよくあるので細心の注意が必要です。鼻毛カッターを使用する場合、はさみに比べて少々費用がかかりますが、刃が直接皮膚に当たらないので安全に、かつ自動で素早く鼻毛を処理できます。

毛抜きやピンセット、さらには指で鼻毛を抜く方法は、根元から毛を抜くことで、次の処理までの期間が長く取れるのはよいのかもしれませんが、毛を引き抜く際に痛みがある上、毛穴に雑菌が入り込んで化膿(かのう)する危険があるので、医学的には勧められません。ワックス脱毛の場合、広範囲を一気に抜くことができますが、費用も高く、やり過ぎると鼻毛の役割を損なってしまいます。レーザー脱毛も、費用対効果の点で推奨できません」

Q.もし、鼻毛を切り過ぎたり、抜き過ぎたりしてしまったら、どうすればよいですか。

市村さん「鼻毛は、時間がたてばまた伸びてくるので心配いりません。伸びるまでの間、異物侵入を防ぐ機能を補う方法としては、ワセリンを鼻の入り口に塗るのがお勧めです」

(オトナンサー編集部)

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市村恵一(いちむら・けいいち)

医師(耳鼻咽喉科、「東京みみ・はな・のど サージクリニック」名誉院長)

東京大学医学部医学科卒業。医学博士、自治医科大学名誉教授、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)、日本気管食道科学会認定専門医。鼻血を繰り返す全身性の難病「オスラー病」の数少ない権威でもあり、全国から患者が訪れる。耳と鼻、気道といった耳鼻科全般の豊富な経験を持つ。現在は短期滞在手術施設「東京みみ・はな・のどサージクリニック」(東京都多摩市)の名誉院長を務め、一般外来、補聴専門外来を担当。(https://tokyo-ent-surgi.com/)。

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