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気になる”口臭”の原因? 「におい玉」の正体とは? 専門医に聞く

喉の奥にできる、小さな塊のような「におい玉」と呼ばれるものがあります。悪臭を放つことでも知られていますが、その正体とは何なのでしょうか。耳鼻咽喉科の専門医に聞きました。

「におい玉」の正体とは?
「におい玉」の正体とは?

「口臭」はさまざまな原因から発生しますが、その一つに、「におい玉」と呼ばれるものがあります。におい玉は、喉の奥にできる小さな塊のようなもので、「悪臭がする」ことが知られています。しかし、実際にどのようなもので、なぜできるのかを知らないという人も多いようで、「どうして喉にできるの?」「なぜ臭い?」「におい玉って病気なの?」などの疑問を持つ人もいます。

 喉の奥にでき、悪臭を放つ「におい玉」の正体について、東京みみ・はな・のど サージクリニック(東京都多摩市)名誉院長の市村恵一さん(耳鼻咽喉科)に聞きました。

成分はいわば“放置したゴミ”

Q.「におい玉」とは何ですか。

市村さん「口を開けると、喉の突き当りの左右の脇に、俗に『へんとう腺』と呼ばれる口蓋へんとう(こうがいへんとう、以下『へんとう』)が見えます。へんとうは、外からの異物や病原体(細菌やウイルス)の侵入を防ぐ役割をしており、そのために陰窩(いんか)というくぼみを持っています。これは、内部に向かって迷路のように入り組んでおり、その表面積は喉全体の表面積の7倍もあるそうです。健康な人のへんとうの表面を見ても陰窩は目立ちませんが、実は誰にでもあります。

陰窩の内部では病原体などに対する免疫反応が起こっており、その結果として、細菌や白血球の死骸ができます。これは外に向かって押し出されるのですが、陰窩の入り口では、そこに食べ物のカスや剥げ落ちた粘膜上皮などがくっついて、塊になります。この塊が異臭を発するので、俗に『におい玉』と呼ばれていますが、医学的には『膿栓(のうせん)』といいます。におい玉は、大きなものでは直径3〜5ミリ程度、色は薄黄色や黄緑色、または乳白色をしています」

Q.異臭とのことですが、例えるとどのようなにおいですか。

市村さん「におい玉を構成する成分は、白血球▽細菌塊▽炎症で剥がれ落ちた粘膜上皮▽脂肪酸▽コレステロール▽リン酸石灰▽食物カス―などです。これらはいわば“放置したゴミ”と同じなので当然、臭います。特に強いにおいを感じるのは塊をつぶしたときで、下水道が逆流したときのような、あるいは肥だめのような強い臭気を放ちます」

Q.におい玉は、誰にでもできる可能性があるのですか。できやすい人もいるのでしょうか。

市村さん「へんとうは、体の中の免疫を担当する防御器官であり、細菌などと戦った残骸ができるメカニズムは誰にも共通しているので、当然のこととして、におい玉は誰にでもできます。多くの場合は、たくさんたまる前に、そしゃくや飲み込みの動作に伴って自然に押し出されます。

見える程度の大きさになるにおい玉は、口呼吸の人▽口の中が乾燥しやすい人▽ストレスのために唾液が出にくくなっている人―などに多い傾向がある他、乾燥する冬にも多くなる傾向があります。なお、特に遺伝が関係するというデータはありません」

Q.におい玉ができているかどうか、自分で気付いたり、確認したりすることは可能ですか。

市村さん「鏡で喉をのぞき、喉の奥の外側のへんとうを見つけましょう。よく見ると、いわゆる『のどちんこ(口蓋垂)』から下方に向かって、2つのひだ(口蓋弓)が伸びています。へんとうは、これらのひだの間のくぼみから少し飛び出しています。へんとうの表面に白っぽい塊がみられれば、それがにおい玉です。ただし、へんとうの大きさは個人差が大きく、へんとうがほとんど見えない人もいて、その場合は確認が難しいでしょう」

Q.におい玉は「病気」なのでしょうか。できてしまったら、病院で取り除いてもらうことはできますか。

市村さん「におい玉は誰にでもできます。それがあるというだけでは病気とはいえません。ある程度大きくなって、目視で確認できるくらいになっても、喉の違和感や口臭が気にならなければ放っておいて構いません。

なお、耳鼻咽喉科で洗浄・吸引して取ることは可能です。洗浄や吸引をすれば一時的に、におい玉やその奥にある膿汁(うみ)が取り除かれるため、不快感は改善しますが、1回の処置で全てをきれいにできるわけではないので、何度も洗浄・除去を繰り返します」

Q.病院でのにおい玉の除去について、さらに詳しく教えてください。

市村さん「全ての耳鼻咽喉科医院に用意されているわけではありませんが、におい玉を取る専用の『レーダー吸引管』というものがあり、へんとう表面にかぶせて吸引します。また、へんとうのにおい玉がはまっている陰窩の周りを圧迫して押し出す方法もあります。組織を傷つける可能性があるため、自分で行うのはお勧めできません。

ちなみに、うがいやせき、くしゃみをしたときなど、日常生活上でポロッと取れる可能性もゼロではありませんが、うがいをすれば必ず取れるというものでもありません。へんとうがある限り、そこに陰窩があるわけですから、におい玉を完全になくすためには、へんとうを全て取り除いてしまう手術をするしかありません。しかし、実際の臨床の場において、『におい玉がある』というだけでは手術の対象とはなりません」

Q.におい玉ができないよう、予防する方法はあるのでしょうか。

市村さん「繰り返しになりますが、へんとうがある限り、におい玉はできるのが当たり前なので、それが小さく目立たない状態であればよいわけです。そうした意味で、大きな塊に成長しないようにすることを『予防』と考えると、次のような方法があります」

・緑茶や紅茶などのお茶でうがいをする(口の中の汚れを除くと同時に、お茶に含まれるカテキンが細菌の増殖を抑える)
・食後に歯間ブラシ、フロスなどを用いた丁寧な歯磨きを行い、食べカスなどを取り除く
・喉の乾燥を避けるために室内を加湿したり、マスクを着用したりする
・口呼吸をしている人は、鼻呼吸に変えるようにする
・起床直後には、口ゆすぎとうがいをする
・ビタミンCの摂取を心掛け、喫煙をやめる

市村さん「口臭の原因としては、におい玉より『舌苔(ぜったい)』や歯周病に起因することの方が多く、まずはそちらの方をケアして、どうしても気になるという人は耳鼻咽喉科を受診するとよいでしょう」

(オトナンサー編集部)

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市村恵一(いちむら・けいいち)

「東京みみ・はな・のど サージクリニック」名誉院長(耳鼻咽喉科)

東京大学医学部医学科卒業。医学博士、自治医科大学名誉教授、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、補聴器適合判定医(厚生労働省)、日本気管食道科学会認定専門医。鼻血を繰り返す全身性の難病「オスラー病」の数少ない権威でもあり、全国から患者が訪れる。耳と鼻、気道といった耳鼻科全般の豊富な経験を持ち、現在は耳鼻咽喉科領域の短期滞在手術を行っている、東京みみ・はな・のどサージクリニック(東京都多摩市)の名誉院長を務め、手術の他に補聴専門外来を担当。東京みみ・はな・のどサージクリニック(https://tokyo-ent-surgi.com/)。

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