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乳がんかも?と不安に…妊娠期や授乳期にできる「しこり」の正体は?

妊娠期や授乳期、乳房に「しこり」を見つけると不安になるものです。しこりの正体や放置することのリスクについて、産婦人科医に聞きました。

妊娠中や授乳期、「しこり」を見つけたら…
妊娠中や授乳期、「しこり」を見つけたら…

「授乳中、乳房にしこりを見つけた」「産後、脇の下にしこりを感じるようになった」。出産後、こうした体験をしたことがある女性は少なからずいるようです。胸の辺りにしこりを感じると、乳がんの可能性を考えて不安になるものですが、ネット上では「妊娠や授乳がきっかけで、しこりが出ることはあるの?」「脇の下のしこりも不安」「もし、放置したらどうなるの?」など、さまざまな声があります。

 妊娠期や授乳期にできることがある「しこり」の正体について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

妊娠中に乳がんが見つかることも

Q.妊娠中や産後(授乳期間中)、それまでになかったしこりが乳房付近にできることがあるのは事実でしょうか。

尾西さん「事実です。多く見られるのは『乳瘤(にゅうりゅう)』といって、乳腺でできた母乳が乳頭から出るまでの通り道である『乳管』が詰まってしまうことによって起こります。通常、乳瘤のみでは痛みを感じませんが、悪化して炎症が起き、乳腺炎の状態になると痛みを感じるようになります。

もともと、小さくて気付かなかった良性の腫瘍(線維腺腫など)が妊娠・授乳期のホルモン変化によって大きくなり、しこりとして気付く場合もあります。また、妊娠中に乳がんがしこりとして見つかることもあり、『妊娠中は乳腺が張っているからだろう』と放置してしまうことも少なくありません。

なお、痩せている人の方がしこりに気付きやすい傾向があります。これは、痩せている人が特にしこりができやすいというわけではなく、体形上、しこりに気付きやすいためです」

Q.乳房付近にできるしこりと、脇の下の辺りにできるしこりはどう違うのですか。

尾西さん「乳房にできるしこりは良性・悪性ともに、乳腺・乳管にできたものになりますが、脇の下にできるしこりはその多くが、腫れて大きくなったリンパ節、または『副乳』です。犬や猫にはたくさんの乳房がありますが、人間は進化の過程で左右1個ずつになりました。しかし、その名残で、乳房以外に乳房のような膨らみやしこりができることがあり、それが副乳です」

Q.「しこり=乳がん」をイメージする人も多くいます。乳瘤などによるしこりと乳がんによるしこりには、どのような違いがあるのでしょうか。

尾西さん「一般的に、良性の腫瘤やリンパ節は『コリコリしていて動く』、がんの場合は『端が分かりにくく、動きにくい』といわれています。全乳がんの0.2〜0.6%と比較的まれな『副乳がん』の場合も同様です。しかし、全てがそうした特徴のものではないので、しこりを感じた場合は注意が必要です」

Q.しこりを見つけた後、そのまま放置するとどうなりますか。

尾西さん「悪性(がん)の場合は進行して大きくなったり、転移したりしてしまう危険性があるのはもちろんのこと、良性の場合も、乳瘤をそのまま放置しておくと乳腺炎になってしまうこともあります。放置は厳禁です」

Q.妊娠中や産後に、それまでなかったしこりを見つけた場合、どうすればよいですか。

尾西さん「妊娠中にしこりを感じたら、早めに医師に相談しましょう。まずはかかりつけの産婦人科でもよいのですが、日本では、乳腺疾患は『乳腺外科』が専門で、かかりつけ医から紹介となる場合もあります。妊娠中の場合、胎児への影響を考え、検査を受けるか悩む人もいるかと思いますが、エコー(超音波)検査であれば胎児を見るときに使用するものと同じで、全く問題ありません。

また、マンモグラフィーも胸部のエックス線検査となり、胎児の放射線被ばく量はごく少ないので基本的に問題ありませんが、まずは妊娠していることを伝えた上で、エコーで判断可能かどうか乳腺外科の医師に相談してみましょう。産後の場合は先述の通り、乳管の詰まりであることも多いので、まずは乳房マッサージをしてみて、消失するか見てみましょう。変わらない場合は早めに医師に相談しましょう」

Q.早い段階で、しこりに気付くための意識や行動とは。

尾西さん「乳がんは数少ない『自分で発見することのできるがん』です。たまに診る医師よりも日常的にチェックできる本人の方が、より早期に見つけることができるといわれています。そのため、毎日の入浴中やお風呂上がりに両方の乳房を触ってみて、『いつもと違う感じ』がないか確認するようにしましょう。

また、妊娠中や授乳中は乳腺が発達しており、検査がしにくいということで検査を受けない人もいるのですが、私自身、妊娠中・授乳中の患者さんを検査したところ、乳がんを発見したことが数回あるので、やはり、妊娠中・授乳中でも違和感があると思った場合は検査をすることをおすすめしています」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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