高齢者12人が施設で死亡 医療崩壊「札幌の教訓」はなぜ生かされなかったのか
批判恐れず「先手」で対策を
アカシアハイツの事態から、私たちは何を学ぶべきなのでしょうか。水際対策と感染拡大時を想定した対応について考えてみましょう。
まず、そもそも、中国・武漢で新型コロナウイルスによる肺炎が発生したと報じられたのは2019年12月のことです。中国からの入国制限開始は習近平国家主席の来日延期を発表した2020年3月6日。これは政府レベルの問題ですが、先述した北海道の事情を考えれば、より早く何らかの制限をし、水際対策ができなかったのかという悔いが残ります。その教訓を生かすべきなのに政府は昨年11月末、中国とのビジネス往来を再開しました(現在は停止)。
また、一時、感染拡大が収束した際、再び感染拡大するときに備えて、病床の十分な確保をしておけなかったのかという疑問もあります。札幌市の病床が4月に逼迫したのは先述した通りですが、当時の状況が現在の首都圏や関西圏の状況です。東京都は1月中旬、都立広尾病院など3病院を実質的なコロナ専門病院にすることを決めましたが、第1波から既に半年以上たっています。この間できることがあったはずです。
危機管理のポイントは何より「迅速に」です。後で「騒ぎ過ぎだった」「不要な対策だった」と批判されるのも覚悟して、先手先手で対策を打っていくことです。最悪なのは「小出し」にすることで、「状況を見ながら」と言って、後追いで対策を打ち出していくと市民の側の危機感も高まりませんし、次々と発せられる指示の変化に疲れ、指示する側(国や地方自治体)への信頼も失っていきます。
既に感染再拡大は深刻化していますが、現在の医療体制を支えるとともに、将来を見据えて、これまでの取り組みとその総括を政府や地方自治体には求めたいと思います。
(防災・危機管理アドバイザー 古本尚樹)
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