オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

毎日磨いているのに…「虫歯」になりやすい人、なりにくい人は何が違う?

子どもの頃から悩まされてきた人も多い「虫歯」は「できやすい人」「できにくい人」がいるようです。なぜ、違いがあるのでしょうか。

虫歯のできやすさの違いとは?
虫歯のできやすさの違いとは?

 放っておくと痛みも治療も長引いてしまう「虫歯」。どんなに丁寧に歯磨きをしていても虫歯になってしまう人もいれば、歯磨きの回数・時間が少ないにもかかわらず、虫歯になりにくい人もいて、「虫歯のなりやすさには個人差がある」と感じる人は多いようです。ネット上では「毎日、時間をかけて歯を磨いていたのに、虫歯が見つかってショックを受けた」「夫は私よりも歯磨きが適当なのに、なぜかずっと虫歯ゼロ」「虫歯になりにくい人がうらやましい」などさまざまな声が上がっています。

 虫歯ができやすい人/できにくい人には、どのような違いがあるのでしょうか。吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。

口内環境や食習慣が影響

Q.そもそも、「虫歯」とは何ですか。

園田さん「私たちの口の中には、常にさまざまな種類の細菌がすみ着いています。虫歯を作る細菌は、食事に含まれる糖分を餌として酸を作り出します。この酸によって歯の表面が少しずつ溶かされていき、歯を修復する『再石灰化』でも元に戻らなくなるまで穴が開いてしまった状態を『虫歯』といいます。

歯の頭の部分は歯の中心にあって神経や血管を含む『歯髄』という組織、それを覆う象牙質、さらに、その外側にあるエナメル質の3層から成ります。歯科医師は通常、虫歯の程度を5段階(CO、C1、C2、C3、C4)に分けて考えています。C2以降の虫歯は歯髄に近づいていくため、痛みを感じることが多くなります。また、C3以降の虫歯の治療では、歯髄、つまり神経を取り除く必要が出てきます」

・CO(シーオー)→ごく初期の虫歯です。まだ処置の必要がなく、再石灰化が期待できるため経過観察をします。基本的には痛みはありません。
・C1→最も外側のエナメル質の範囲のみで進行している虫歯です。基本的には痛みはありません。
・C2→エナメル質より内側の象牙質まで進行している虫歯です。
・C3→象牙質より、さらに内側の歯髄(神経)まで達している虫歯です。
・C4→C3よりさらに進行し、歯の頭が崩壊していて、原則として抜歯になるものをいいます。

Q.虫歯になりやすい人、なりにくい人がいるのは事実でしょうか。

園田さん「事実です。虫歯は『口内環境』『食べ物』『細菌』『時間』の要因によって、なりやすさに影響が出ます。

まず、口内環境の要因ですが、子どもの時期に歯の結晶の構造が強く作られるかどうかで、虫歯菌が作る酸にどれだけ耐えられるか違いが出ます。また、歯並びや歯の形で、細菌の停滞の仕方が変わります。唾液には虫歯菌の出す酸を薄めるだけでなく、強い酸性を中和する役割である『緩衝能(かんしょうのう)』や抗菌作用などがありますが、これらも唾液の性質によって個人差があり、機能が弱いと虫歯のリスクが上がります。

食べ物の要因としては虫歯菌が餌とする糖の量が多いほど、また、細菌要因では、お口の中に存在する虫歯の細菌の量が多いほど、それぞれ虫歯リスクが高くなります。時間については、食事や間食をする回数やタイミングが虫歯の発生に影響します」

Q.虫歯になりやすい人、なりにくい人のそれぞれにみられやすい特徴とは。

園田さん「先述のような先天的な部分以外では、生活習慣によって虫歯リスクが上がっていることもあります。中でも、大きく影響するのは食習慣と歯磨き習慣です。食事の回数が多い場合やだらだらと食べ続けてしまう場合など、歯が糖にさらされている時間が長いほど、虫歯菌が酸を作る量も多くなり、歯を溶かしやすくなります。糖分を多く含む飲食物を頻繁に摂取している場合も同様です。

また、歯磨きの習慣がしっかり身に付いていない場合や就寝前に歯磨きをしていない場合などは、寝ている間も口内に細菌の作った酸がそのまま残った状態になり、歯を溶かすリスクが上がります。歯磨きをしているつもりでも、必要な場所に歯ブラシをしっかりと当てられていない場合は歯垢(しこう)を落とせていないため、虫歯になりやすくなります」

Q.虫歯になりやすいタイプかどうかは、どのようにして知ることができますか。

園田さん「虫歯菌の量を測定するキットや、唾液の緩衝能の強さなどを測定するキットなどを取り扱っている歯科医院で調べることが可能です。また、自分で歯並びの状態や生活習慣を見直すことでも気付くことがあるかもしれません。しかし、虫歯発生のリスクはその要因の1つが悪いために上がるのではなく、個人の口内環境・食べ物・細菌・時間の4つの要因が互いに影響し合って上がるものなので、これらの要因全てに気を使う必要があります」

Q.虫歯のなりやすさは何らかのきっかけ、原因で変わることもあるのでしょうか。

園田さん「先天的な要因が変化することはありませんが、食習慣や歯磨き習慣を正すことで虫歯リスクを大幅に低くすることは可能です。反対に、これらの習慣がおろそかになることで、虫歯リスクが格段に高くなってしまう恐れもあります」

1 2

園田茉莉子(そのだ・まりこ)

歯科医・医療法人社団正美会 吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事

日本大学歯学部卒業。日本大学歯学部歯科病院で研修後、口腔外科を経て2012年4月より現職。クリニックでは、外来診療(一般歯科診療・口腔外科・インプラント・矯正)および訪問歯科診療を行っている。訪問診療は9年の経験あり。吉祥寺まさむねデンタルクリニック(http://kichijoji-masamune.com/)。

コメント