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クチャクチャ音を立てて食べる「クチャラー」は治せる? 歯科医師に聞く

「クチャクチャ」と音を立てて食べる「クチャラー」。食事の場で「不快」「気持ち悪い」印象を与えやすい一方で、本人には自覚がないケースも。治すことはできるのか、歯科医師に聞きました。

周囲を不快にするクチャクチャ癖、治せる?
周囲を不快にするクチャクチャ癖、治せる?

 食事中に「クチャクチャ」と音を立てて食べる人のことを指す「クチャラー」という言葉があります。クチャラーの人と食事をした経験のある人は多いようで、ネット上では「そしゃく音がとにかく不快」「正直、一緒に食事したくない」と辛辣(しんらつ)なコメントがよく見られます。一方、クチャラー側からは「指摘されるまで自覚がなかった」「やめるよう言われてもピンとこない」という声がある他、「子どもがクチャラーの食べ方をし始めたので早く治したい」「本人に自覚がないと治すのは難しいのでは」「そもそも治せるの?」など、さまざまな意見や疑問があるようです。

 なぜ「クチャラー」になってしまうのか、また治せるのかどうかについて、吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。

「乳幼児期からの習慣」が原因?

Q.食事中に、不快なそしゃく音が発生しやすくなる原因は何でしょうか。

園田さん「食事の際、私たちは食べ物を何度もかんで細かくし、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい形にして、喉へ送り込んでいます。この流れの中で、食べ物をかみ切る音▽一口大にした食べ物をかみ、さらに小さくするときのそしゃく音▽小さくなった食べ物と混ざる唾液の音▽舌の動く音▽食べ物を飲み込む音など、多くの“音”が口の中で発生します。

通常は口を閉じたままかみ砕き、飲み込むまでに至るので、さほど大きな音にはなりません。しかし、口が開いたままになっていると、食べ物をそしゃくしながら舌が唾液を混ぜる音が『クチャクチャ』に近い音として聞こえます。この音が開いたままの口から漏れ出すため、よく聞こえてしまうのです。

口を閉じていれば、口の中での動きの範囲は狭くなりますが、口が開いたままだと活動範囲が広くなるため、恐らく音の大きさもその分、多少大きくなると考えられます」

Q.クチャラーになりやすい、もしくはクチャラーを助長しかねない日常生活でのNG習慣とは。

園田さん「口の機能の多くは家庭環境や生活習慣の中で教わったり、大人のまねをしたりするなど、乳幼児の頃からの習慣で身に付いていきます。

『口を閉じて食べる』ことは食事中のマナーとして、小さい頃からのしつけの中で教えられるものです。しかし、マナーがうまく身に付かないと、口を開けたままで食べることが日常になってしまいます。クチャクチャと音を立てて食べることは、聞く側としても嫌なものですが、口を開けて食べている姿も、見た目としてあまりよくないですよね。

大人になってから直そうにも、他人から指摘されることが少なくなるので、日常化していると自分では気付くことすらできないかもしれません。やはり、子どもの頃からのしつけは大切だと感じます」

Q.歯並びや、かみ合わせが関係するケースもあるのでしょうか。

園田さん「あります。舌先を上下の歯の間に差し込む癖や、唇を前に突き出す癖、唇を吸う癖、舌で唇をなめる癖、指しゃぶりや指をかむ癖などによって、『上顎前突(じょうがくぜんとつ)』(いわゆる“出っ歯”)や、『反対咬合(はんたいこうごう)』(いわゆる“受け口”)、前歯がかみ合わない『開咬(かいこう)』といった、歯並びやかみ合わせの異常が起こりやすくなり、唇を閉じたくても自然には閉じにくい状況になることがあります。

異常な歯並びやかみ合わせは、乳歯のときから始まることがあります。乳歯時の異常は、永久歯に生え替わったときにも引き継がれることが多いです。普段からの癖でも、乳歯の歯並びやかみ合わせは悪くなってしまうので、幼少期の習慣や癖は注意して見ておく必要があると思います。

また通常、人は鼻で呼吸をしますが、鼻の骨格の形や粘膜に病的な変化が起こると鼻で呼吸しづらくなるため、代わりに口で呼吸をするようになります。口呼吸が日常的になると、口を閉じるための筋肉が使われずに弱くなり、ますます口を閉じにくくなります。

小さな頃からの口呼吸がもとで歯並びやかみ合わせの異常が生じ、より、口唇を閉じにくくなるなどの悪循環も生まれやすいです」

Q.クチャラーの中には、自分が不快なそしゃく音を出していることに自覚がなく、クチャラーだと思っていない人も少なくないようです。

園田さん「どんな習慣であっても、大人になったからといって、それが普通なのかそうでないかを自分一人で判断するのはとても難しいと思います。周りの人からの指摘や客観的な意見を得て初めて、自覚できるのではないでしょうか」

Q.クチャラーは治せますか。

園田さん「自然と口を閉じることができるようになれば、不快な音も漏れにくくなります。大人も子どもも、単純に口の周りの筋肉の衰えが原因であれば、『口輪筋(こうりんきん)』と呼ばれる筋肉のトレーニングを行うことで改善します。

不正常な歯並びやかみ合わせについては、幼少期であれば歯科医院を受診し、矯正装置で歯並びを治せば改善するのか、口周りの筋肉の矯正をすべきなのかなどを診断してもらうことで、改善に向けた策を得られます。

成人であれば、矯正装置で改善する歯並びやかみ合わせなのか、外科的手術の適応があるのかなどで方針が変わりますが、同時に口輪筋のトレーニングも必要でしょう。鼻の疾患がある場合は、ぜひ早めに耳鼻咽喉科の受診をお勧めします」

Q.子どものクチャクチャ癖に悩む親もいるようです。早い時期に矯正するためのポイントとは。

園田さん「まずは、お子さんの鼻の通りや鼻声など、鼻に関する異常がないかを確認しましょう。もしあれば、耳鼻咽喉科を受診しましょう。また、歯並びやかみ合わせに異常があったり、口唇の閉じ方が不自然で無理やり閉じられたように引っ張られていたりする場合は、早めに歯科医院を受診すると治療もスムーズに進む可能性があります。

クチャラーは、半分はしつけや癖に原因がありますが、もう半分は唇を閉じる機能に問題があったり、唇を閉じることを妨げる要因があったりするものなので、ある程度注意をして変化がなければ、歯科医院の受診をお勧めします」

(オトナンサー編集部)

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園田茉莉子(そのだ・まりこ)

歯科医・医療法人社団正美会 吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事

日本大学歯学部卒業。日本大学歯学部歯科病院で研修後、口腔外科を経て2012年4月より現職。クリニックでは、外来診療(一般歯科診療・口腔外科・インプラント・矯正)および訪問歯科診療を行っている。訪問診療は9年の経験あり。吉祥寺まさむねデンタルクリニック(http://kichijoji-masamune.com/)。

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