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歯ブラシは「電動」と「手用」、どっちがいい? 歯科医師に聞く

歯ブラシには「電動歯ブラシ」と、従来の「手用歯ブラシ」の2種類があります。日々の歯磨きにはどちらを使うのがよいのか、歯科医師に聞きました。

電動と手用、どちらを使うべきか?
電動と手用、どちらを使うべきか?

 いつまでも、自分の歯でおいしく楽しく食べるために、日々の歯磨きは大切です。歯ブラシには近年、さまざまな種類の製品が販売されている「電動歯ブラシ」と、従来の「手用歯ブラシ」の2種類があり、「やっぱり電動の方が優れているのかな」「手用歯ブラシの方が隅々まで磨けるイメージ」など、どちらを使うべきか迷う人も少なくないようです。

 電動歯ブラシと手用歯ブラシ、どちらを使うのがよいのでしょうか。吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事で歯科医師の園田茉莉子さんに聞きました。

電動も手用も「手の動かし方」が最重要

Q.まず、電動歯ブラシのメリット/デメリットを教えてください。

園田さん「メリットはヘッドが自動で動いてくれるため、歯ブラシの種類によっては手を動かすことやテクニックをあまり必要とせず、使用が簡単であること、それに伴い、短時間でのブラッシングが可能であることが挙げられます。デメリットとしては価格が高いこと、電力が必要であること、持ったときに重いこと、毛先の形や種類が少ないこと、種類によって動きや性質が変わるため、効果が異なることなどです」

Q.一方で、手用歯ブラシのメリット/デメリットとは。

園田さん「歯ブラシの一本一本が安く、持ち手や毛先の形にさまざまな種類があるため、自分に合ったものを選びやすいのはメリットです。ただ、歯ブラシの動かし方などのテクニックが必要で、磨き方によって効果に差が出やすいこと、しっかり磨こうと思うと時間がかかりやすいことがデメリットとして挙げられます」

Q.歯科医師からみて、電動歯ブラシと手用歯ブラシのどちらを推奨しますか。

園田さん「そもそも、歯磨きの目的は『口の中に残る汚れを落とすこと』で、特に歯垢(しこう)を落とすことです。歯垢は、歯ブラシを細かく振動させて動かすことで効率よく落とせますが、この細かい振動を歯ブラシに与えるには、手よりも機械の方が一定でより細かい運動が可能となります。

しかし、電動歯ブラシを使いこなすには、そもそも手用での手の動かし方を身に付けている必要があり、歯ブラシを当てる向きなども手用でのテクニックが前提となります。つまり、手用歯ブラシでうまくブラッシングができないまま電動歯ブラシを使用しても、その効果を最大限に発揮できない可能性が高いということです。

そこで、まず考えなくてはならないのは『ブラッシングの方法』であり、それが身に付いていれば、歯磨きの効率化や時短を考えると電動歯ブラシが推奨できると思います」

Q.電動と手用の向き/不向きをセルフチェックする方法はありますか。

園田さん「電動、手用ともに、歯磨き後に歯を舌で触ってツルツルになっているか確認してください。ヌメヌメと感じるようであれば、うまく磨けていないと考えられます。歯並びが気になる人の場合は、歯が重なっている部分は歯ブラシの当て方を工夫しなくてはならないため、手用の方が使いやすい場合があります。体の不自由な人などで、手を細かく動かすことが難しい場合は、電動歯ブラシの振動が効果を発揮し、手用歯ブラシよりも歯垢を除去できる可能性が高いと考えます」

Q.両方を併用している人もいるようですが、電動と手用の上手な使い分け方はありますか。

園田さん「ブラッシング方法が身に付いている場合、ブラッシングに時間が取れるかどうかや、外出先への持ち運びや電源の有無などで使い分けるとよいでしょう」

Q.手用/電動それぞれの歯ブラシを買うときに、チェックすべきポイントとは。

園田さん「次のポイントを参考に、手用と電動のそれぞれを選んでみてください」

【手用歯ブラシ】

毛先や持ち手の形が多岐にわたるため、自分が磨きやすいものを選ぶ必要があります。歯の表面に付く歯垢を落とすことで虫歯予防に、また、歯と歯肉の境目に残る歯垢を落とすことで歯周病予防になります。

歯と歯肉の境目に対して、毛先が太く硬い歯ブラシを使ってしまうと、境目に入りにくい上に歯肉を傷つけやすくなってしまうため、毛先が細くて軟らかいものを選ぶことが大切です。

【電動歯ブラシ】

電動歯ブラシのヘッドの動き方や性質が異なるため、自分のブラッシング方法に合ったものを見極めて選ぶ必要があります。

・高速運動電動歯ブラシ…振動や回転によって歯垢を除去しますが、手磨きをサポートする程度の少ない振動数のため、手用歯ブラシと同様に手を動かして磨く必要があります。振動数は毎分3000~7000回です。

・超音波電動歯ブラシ…超音波を発生させ、歯垢や細菌を歯からはがすことで除去します。振動数が多いものの、微細な振動でほとんど振幅がないため、やはり手を動かして磨く必要があります。振動数は毎分120万回以上です。

・音波電動歯ブラシ…高速運動電動歯ブラシと同様、振動や回転で動きますが、音波領域の高速振動から水流と泡が生み出され、この泡がはじけて歯垢を落とします。振動数は毎分2万~4万回です。(※ペースメーカーを使用している人は誤作動を起こす可能性があるため、超音波電動歯ブラシの使用について事前に確認する必要があります)

Q.ちなみに、園田先生は普段の歯磨きに、電動と手用のどちらを使っておられますか。

園田さん「普段から手用歯ブラシを使用しています。電動歯ブラシも、歯磨きの効率化という点からとてもよいと感じるものもありますが、手用は新しい形のものが発売される頻度が高く、歯ブラシを交換する際に新しいものを試して自分に合っているかをみることも楽しみの一つです。また、歯と歯肉の境目を磨く際、手用では慣れてくると毛先が境目に入っている感覚を感じやすく、これによって隅々まで磨けているのを確認できることも理由の一つです。

周りの歯科医師、歯科衛生士の使用する歯ブラシは、手用と電動が半々だと思います。歯磨きのプロとして言えるのは、ブラッシング方法が身に付いていればこそ、手用/電動どちらを使用しても隅々までしっかりと汚れを除去できる、ということです」

(オトナンサー編集部)

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園田茉莉子(そのだ・まりこ)

歯科医・医療法人社団正美会 吉祥寺まさむねデンタルクリニック理事

日本大学歯学部卒業。日本大学歯学部歯科病院で研修後、口腔外科を経て2012年4月より現職。クリニックでは、外来診療(一般歯科診療・口腔外科・インプラント・矯正)および訪問歯科診療を行っている。訪問診療は9年の経験あり。吉祥寺まさむねデンタルクリニック(http://kichijoji-masamune.com/)。

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