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ノックは2回? 4回? 就活マナーの「都市伝説」に惑わされるな

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

就活マナーにおける「都市伝説」、実際は?
就活マナーにおける「都市伝説」、実際は?

 企業の採用活動は就職活動をする側の学生からみれば、透明性の低い「ブラックボックス」である意味、「都市伝説」ができやすい状況になっています。採用活動は「人が人を評価する」という非常にセンシティブなことで、それに関する情報は極めて機密性の高いものなので、一定程度、いろいろな説が出回るのは仕方ないともいえます。

 就活における「マナー」についてもさまざまな説がネット上、その他にあふれており、「一体、何を信じたらよいのか」と不安に思う学生の皆さんも多いことでしょう。実際、就活生向けにセミナーを開くとよく、マナーについて質問されるので関心の強さが伺われます。では、そのマナーにおける「都市伝説」は実際のところ、どのようなものでしょうか。

マナーの本質は思いやり

 例えば、面接室に入る際のノックの回数についても、ネットを検索すれば、さまざまな説があります。「2回はトイレの場合だから失礼だ」「3回は親しい相手向けだ」「礼儀が特に必要な場合は4回以上にすべきだ」「いや、4回だとちょっとしつこいのではないか」などです。

 マナーについては「プロトコール」という国家間の儀礼上の決まりごとがあって、外務省のホームページを見ると、「握手で気を付けること」「乾杯のマナー」などもあるようですが、そういうハイソサエティーな国際儀礼でのマナーは別として、われわれ庶民がそこまで厳密になる必要はないと思います。筆者は個人的には、「ノックは何回でもいい」と思っています。筆者の知る多くの人事担当者も「どうでもいい」と言う人がほとんどです。

 そもそも、マナーとは何でしょうか。マナーに似たものに「ルール」というものがありますが、これと比較すると分かりやすいと思います。ルールは「必ず守らなければならないもの」です。コロナ禍での対応を例に取れば、ある建物の入り口で検温をして、37.5度以上熱があれば入館できないというのはルールです。このように、ルールは明確に決まったものです。

 これに対して、飛沫(ひまつ)を飛ばさないために「マスクをしていても、なるべく大きな声で会話をしない」というのは周囲の人を不快にさせないための気遣いであり、これは「マナー」です。この、相手に対する思いやりの気持ちが、マナーの本質ではないでしょうか。

 ノックの場合、「回数」のようなルール的な厳密なものを気にする必要はなく、部屋に入る前にノックをするときの気持ち、つまり、「相手を驚かせたり、準備できていないのに入ったりすることがないようにしよう」という気持ちが伝わればよいのです。

 あくまで、仮にですが、「ノックは3回が正しいマナー」と仮定しましょう。いくら、「3回が正しいから」と正しく3回、ノックをしたとしても、それが相手をせかすような速いスピードや強さのノックで相手を不快にさせるようであれば、マナー的な気遣いの視点でみれば意味はありません。

 2回でも4回でも心を込めて丁寧にノックすればよいのです。そこにぎこちなさがあっても、心ある面接担当者であれば、ほほ笑ましく思いこそすれ、「回数が違う。失礼だ!」とは決して思わないでしょう。(しつこいようですが、「ノックは何回でもいい」というのが筆者や多くの人事担当者の見解です)。

会場到着や電話の時間は?

 ここからは「謎マナー」以外の通常の就活マナーについて幾つか例を挙げましょう。例えば、会社説明会などで開始時間のどれくらい前に到着するのがよいのでしょうか(オンラインの場合なら、いつから接続すればよいのでしょうか)。会社側がルールとして開場時間を示しているなら、それに従えばいいだけですが、そうでない場合はどうでしょうか。

 マナーなので明確な答えはありませんが、1時間前とか30分も前に来るのでは(実際います)相手のことを考えていないことが明白です。会社側がまだ準備中かもしれませんし、別の仕事をしているかもしれません。5分から10分くらい前であれば、ある程度準備は終了しているでしょうから問題ないでしょう。

 では、人事担当者に電話連絡をする場合はどうでしょう。学生さんは「お昼休み(正午~午後1時など)」に電話をした方がよいと考えている人が多いのですが「普通に平日勤務時間にかけてもらう方がよい」という人事担当者が大半です。なぜなら、学生さんとのコミュニケーションは彼らにとって大事な仕事なので、勤務時間で電話を受けても全く問題ないからです。

 逆に、正午過ぎに電話をかけるのは「昼食を取ろう」とか「休もう」とか考えている人のことを考えていない証拠です(会社側から時間帯を示されている場合は別です)。もっとも、最近は電話連絡自体、緊急時に限る方がよく、メールやメッセージで送る方が相手を気遣っているといえます。

あとは「ポリシー」で決めればよい

 このように結局、マナーに沿っているのかそうでないのかは「いかに相手のことを気遣っているか」という点だけです。少しぐらいおかしいことがあっても、その気遣いの心だけ相手に伝われば問題ありません。

 あとのもろもろのことは、自分が大切にしているポリシー(信条)で決めればよいと思います。例えば、「こんな服装はよいのか」というのも「その服装をすることが自分にとって大切なこと」ならば、どんな服装でもよいと思います。その上で、服装も含めて面接担当者が評価をするだけです。ポリシーを伝えた上でダメなら、その会社はミスマッチということで仕方ありません。

 逆にもし、服装に関してそれほど大したポリシーがないのであれば、普通のリクルートスーツを着ておけばよいのです。ポリシーもないのに、普通と違うことや、マナーではないかとまことしやかに言われていることを無理してする必要はないのです。ルールが明確でないときは相手への気遣いとポリシー、これを大事にしてください。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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