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「オンラインインターンシップ」で企業の何を、どう見るか【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「オンラインインターンシップ」をどう生かす?
「オンラインインターンシップ」をどう生かす?

 コロナ禍によって、2020年はオンラインによる就職試験が激増しましたが、学生が専攻や希望進路と関連した仕事を体験する「インターンシップ(就業体験)」についても「オンラインで」という企業が多いようです。企業の現場を見ることができないオンラインインターンシップで、学生はどこを注視し、どのような心構えで臨むべきなのでしょうか。

 企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

インターンシップの効果とは

 本場米国などでもそうですが、もともと、インターンシップは採用上のミスマッチを防ぐ目的で導入された制度でした。入社した後にやる仕事をそのまま、実際に一度やってもらうことで、仕事や企業文化とのフィットの度合いや入社後の業績を推定するのです。

 神戸大学大学院の服部泰宏准教授の著書「採用学」などでも「ワークサンプル」(≒インターンシップ)の入社後の活躍の妥当性の高さが紹介されています。つまり、応募者も企業もお互いの相性を見ることができるのがインターンシップの一番の目的・効果ではないかと思います。

 ところが、コロナ禍によって、インターンシップも採用選考と同様、オンラインが主流になりました。「膝を突き合わせて、チームで何らかのタスクをこなしていく」というリアルに対面して行うインターンシップは「密」を避けるという新型コロナ対策の下では、できれば回避すべきものとなってしまったわけです。

 さまざまな調査をみると、学生はインターンシップについては「雰囲気」のフィット感を見たいために、できるだけ、リアルの場での実施を希望しているようですが、コロナ禍が収まらない中では、ほとんど実現できていないのが現状です。

 リアルの場でのコミュニケーションと違って、オンラインでは、非言語情報(表情、音声、姿勢、身ぶり手ぶり、相づちなど)が減ることが分かっています。その結果、言語化が可能で明確な知的情報についてはオンラインにおいても、普通に伝わるのですが、感情や意欲などの曖昧な情報についてはなかなか伝わりにくいとされています。

「肌が合う」という言葉があるように、相性というものはまさに、言葉にできない非言語の感覚の世界が重要なのですが、それが伝わらないということであれば、単純にオンライン化するだけでは、インターンシップでフィット感を見るのは難しいかもしれません。

情報を得る場として割り切りも

 そう考えると「オンラインでは雰囲気を感じるのは難しい」と諦めて、インターンシップにおいても、具体的な仕事の手順や必要な知識・スキル、仕事環境のような情報をたくさん得る場として割り切るのも一つの案といえるでしょう。

 その方向でオンラインインターンシップを生かすのであれば、必要なのは「質問力」です。リアルの場では、知りたいことを「感じ取る」こともできるでしょうが、オンラインでは基本的に「言葉」にしなければ伝わりません。「自分は、仕事をする上で、何を大事にしていて、それを確認するためには何を質問すればよいのか」を考える必要があります。

 例えば、「若いうちから、仕事をどんどん任せてくれる」かどうか知りたいのであれば、「最年少のマネジャーは何歳ぐらいでしょうか」「このビッグプロジェクトのリーダーはどんな人がやっているのでしょうか」などと聞けば、情報を得ることができます。

 他にも「女性が働きやすい」かどうかを知りたいなら、「女性の管理職比率」「育休からの復帰率」などを聞く。「新しいことにチャレンジする社風か」を知りたいのであれば、「この数年間で新しくできた事業や商品はどんなものがあって、それは売上高のどれくらいを占めているのか」を聞くなど、自分の知りたいことを明確化して、具体的な質問をしましょう。

「雰囲気」を知りたいのであれば…

 しかし、それでもやはり、「会社の雰囲気」を知りたい場合、どうすればよいのでしょうか。基本的に、現在の日本はロックダウン(都市封鎖)されているわけではないので、一つはインターンシップとは別に、リアルの面会をお願いしてみるのがストレートで有効な方法です。

 ただ、会社によって、コロナ対策の度合いが違うので、断られてしまうかもしれません。そうであれば、次の手としては、オンラインでもよいので1対1の面談の機会をもらってはどうでしょうか。オンライン上で「タスクをこなす」だけだと、どうしても、価値観がふと現れる世間話やキャリアなどの長期的な話は聞くことができません。

 1対1の面談でなら、オンラインではあっても、そういう話をすることができ、リアルよりは不足気味でも、何らかの「雰囲気」を感じ取ることもできるかもしれません。ただ、ここでも結局必要となるのは「質問力」であることに変わりはありません。

 特に、先述したような、公の会社の情報ではない私的なキャリア観や仕事観などのセンシティブなことを聞くわけですから、注意が必要です。その注意とは「自分のことも開示する」ということです。人は相手と同じ深さで話をしたいと思う生き物です。もし、相手の深い価値観を知りたければ、自分から自分の奥底の考えをまず話さなければなりません。

「過去にこんな経験があり、だから、こんな価値観になったのですが、○○さんはどうですか」と聞けば、相手も胸襟を開いて、自分の知りたい深い話を聞かせてくれるかもしれません。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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