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面接で「学生時代に力を入れてきたこと」=「ガクチカ」がなくても大丈夫?【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「ガクチカ」なしでも内定を獲得できる?
「ガクチカ」なしでも内定を獲得できる?

 毎年、日本全国、津々浦々の新卒採用面接において質問されているのが「ガクチカ」、つまり、「学(ガク)生時代に力(チカラ)を入れてきたことを教えてください」です。学生の皆さんはゼミやサークル、アルバイトなどさまざまな場面でのエピソードを思い出して、この質問に答えるわけですが、最近よく聞くのが「今年はコロナで『ガクチカ』で言えるようなことが何もできなかった」という悩みです。

 緊急事態宣言などで、アルバイト先が休業したり、在宅を余儀なくされたりしたわけですから、活動量が減るのもやむを得なかったでしょうし、エピソードとして特筆すべきことがないというのもさもありなんというところです。そうした悩みを持つ皆さんへ、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者からのアドバイスです。

面接で最も多い質問「ガクチカ」だが…

 まず、お伝えしたいことは「心配しなくてよい」ということです。筆者はそもそも、この「ガクチカ」はそれほどよい質問ではないと考えています。結論を先取りして言うと、「ガクチカが話せない=採用面接で問題ではない」ということです。

 理由はいろいろあるのですが、まずはふわっとした質問過ぎて、何を答えればよいのか分からないということがあります。そのため、企業側が求めているようなエピソード、つまり、「企業側が採用基準としている要素をその学生が持っていることを証明する」ようなエピソードを学生が話してくれるか分かりません。企業側は自分たちの求める要素を持っているかを特定する、もっと明確な質問をすべきです。

「ガクチカ」は極めてライトな質問で、どんな回答でもできるフリーな質問です。一方、明確な質問というのは例えば、次のようなものです。

「あなたがこれまでにしてきたことで、事前に想定してきたこととは異なる状況が起こってトラブルになったことはありますか。そのトラブルがどれほど大変なものであったかが分かるよう具体的に、できれば、数字で示せるものは数字にして、それに対してどのように考え、最終的にどんな行動をしたか教えてください」

 こうした質問なら、何を答えたらよいか明確です。明確な分、「そんなエピソードはない」という人がいるかもしれませんが、面接官は決して一つの質問だけで人を判断しようとはしませんし、ないものはないわけですので、その際ははっきりそう言えば、別の質問をしてくれると思います。その別の質問に答えればよいだけです。ただ、こうしたスキルがない面接官が多いので「ガクチカ」をつい聞いてしまうというわけです。

「すごい成果」など求めていない

 また、「ガクチカ」について、多くの学生が誤解しているのは「何か他者と比べて際立った『成果』を上げていないとダメだ」ということです。面接、あるいは「ガクチカ」は「成果自慢大会」ではないのです。

 面接担当者はいろいろな質問をしますが、どんな質問であっても「あなたはどんな人ですか?」ということを聞きたいだけです。採用面接でのあらゆる質問は「あなたはどんな人ですか」という質問の変形だと思ってください。「ガクチカ」もそうです。すごい成果を上げていれば、それはそれで別途評価されるでしょうが、もともとの興味関心は応募者がどんな能力を持っていて、どんな性格をしていて、どんな価値観の人なのか、それだけです。

 それを知るために、便宜的に何らかの場面でのエピソードを聞いて、能力・性格・価値観を推測するのです。成果自体はおまけのようなもので、なくても構いません。ですから、平凡で、日常的で、よくあるような話をしても、何も問題はありません。例えば、学生であれば当然ですが、必ず全員学業をやっています。勉強をしています。それについての話でも構いません。

 最近では「履修履歴面接」といって、大学で履修したことについて、「どんな背景があって、その科目を選び、どんな取り組み方をして、その結果、何を得たのか」を聞く面接が大企業を中心にはやってきているのですが、これは成績がよいかどうかを聞くためのものではありません。「学業」という、学生にとってやらなくてはならない「義務」に対して、その人がどんなふうに対処したかを通じて、能力・性格・価値観を推測したいだけなのです。成績はよいにこしたことはないかもしれませんが、正直あまり見ていません。

「義務」にどう取り組んだかの話は刺さる

「ガクチカ」よりも「履修履歴面接」がよいところは、それが「義務」の話だということです。実際の仕事の大半は「やりたいこと」ではなく、「やらねばならないこと=義務」です。その「義務」に対してどんな行動を取るのかは、その人が仕事に対してどんな行動を取るのかにつながります。

 ところが、「ガクチカ」だと多くの場合、自発的にやったことですし、自発的にするぐらいですから、「好きでやっている」のでしょう。しかし、「好きなことを頑張る」のはある意味、当たり前です。むしろ、「義務」への対処の方が仕事での活躍を推し量れるのではないかと考える面接官は多いと思います。

 これまで述べたように、「ガクチカ」を聞かれても「自発的にやった、目立った『成果』を出したこと」など答えなくてもよいのです。「日常的に取り組んできた、自分の『らしさ』=能力・性格・価値観などが分かるエピソード」を回答すれば十分です。そう考えれば、コロナ禍で、あまり派手な活動ができなかった皆さんも少しは安心できるのではないでしょうか。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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