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1年間コールセンター? 「配属リスク」を恐れる内定者の皆さんへ【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

内定者は「配属リスク」を恐れている?
内定者は「配属リスク」を恐れている?

「野村証券が2021年度入社の新入社員の多くを1年間程度、コールセンターに配属する」というニュースを10月5日、日本経済新聞が報じました。コロナ禍で対面営業が難しくなる中、顧客との接点がとりやすいコールセンターに配属して営業をする方が効率的と判断したようです。現在の景況感や新型コロナの状況を考えれば、合理性のある判断だと思いますが、野村証券内定者の中にはニュースを知って、「希望していた職種につけない」と不安に思った人もいるでしょう。

 もともと、日本企業は職種を決めずに採用する企業が多く、そのため、毎年のように「希望の会社には入れたが、どこに配属されるか不安」という、いわゆる「配属リスク」を気にする人が増えています。今年はコロナ禍という特殊要因ゆえに、例年よりも配属が特殊になりそうなので、野村証券に限らず、「配属リスク」も高くなりそうです。内定式を終えた今、配属リスクを恐れている皆さんへ、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者からのアドバイスです。

ハイパフォーマーは「仕事を楽しめる人」

 まず、筆者が思うのは「行きたいところに行けない」ことがどこまでリスクなのかということです。「小さい頃からやりたいことが決まっていて、その仕事をやるため、その会社に入った」ということであれば、確かにリスクです。一部の専門的な仕事ではそういうこともあるでしょう。

 ただ、筆者が実際に学生と接していて一番多く聞く悩みは「やりたいことが分からない」であり、それを就職活動では、面接で何度となく「何をやりたいですか?」と聞かれるので、何となく「やりたいこと」を決めたという人も多いのではないでしょうか。そうであれば、配属を「リスク」と嘆くのではなく、「これも縁だ」と思って、配属されたところで頑張るのもよいと思います。

 というのも、さまざまな会社で人事コンサルティングをする中、優秀な人材、ハイパフォーマーの特性を調べていくと、共通する要素の一つに「どんな仕事でも自分なりに工夫して楽しみを見つけて頑張ることができる」ということがあると分かったからです。

 もし、自分の意と違う仕事に配属されてしまったら、「やりたい仕事じゃないからモチベーションが湧かない」ではなく、できる限り「その場」で楽しみを見つけてみてください。どんな仕事でも共通する部分はあり、表面的には違う仕事であっても、本質的なところは似ていることもあります。

 冒頭のコールセンターの話でも、例えば、法人営業をやりたかった人であれば、自社の商品についての知識を身に付けるチャンスですし、トーク力を磨くチャンスです。「嫌だな」などと思っている暇はありません。来る日に「じゃあ、法人営業をやってみろ」と辞令が下ったとき、存分に力を発揮するための準備期間だと捉えてはどうでしょう。

「花形職種」に入らなければダメなのか

 また、「やりたい仕事」というのは多くの人が希望する「花形職種」であることも多いものです。そこへ最初に行かなければ「不幸」なのでしょうか。例えば、筆者が最初に入ったリクルートの花形職種は「営業」でしたが、大勢の同期が営業に配属される中、筆者の配属先は、関西支社では1人だけのスタッフしかいない「関西総務部」というところでした。

 いわゆる裏方の仕事ということなのですが、振り返ってみれば、筆者のように競争嫌いの人間にとっては、大勢の優秀なライバルと競争して仕事を取り合うような部署でなく、コツコツ真面目にやっていれば、必ず自分の仕事がある部署に入ったことはラッキーでした。横を見ながらの競争など意識せずに、まっすぐ仕事に向き合ってひたすら頑張ればよいので仕事に集中できる、よい環境です。

 そして、その後、採用マネジャーをやらせてもらえたのも筆者しか適任者がいなかったからです。「みんなが行きたいところ」ではないところに配属されることは、こんなふうにいいこともたくさんあるのです。

希望職種へ配属されるためには?

 そんなわけで、筆者は過度に「配属リスク」を言い立てることはおすすめしません。それでも、キャリア意識の高い若い世代にとっては「それでも、やりたいことをやりたい」という人もいるでしょう。そのことは何も悪いことではありません。さて、そんな場合、配属面談でどんな訴えをすればよいのでしょうか。一つは普通に、明確に希望を述べることです。しかし、ただ希望部署を伝えるだけでなく、希望する「本質的な理由」を同時に話しましょう。

 会社が皆さんを第1希望に配属できなかった場合に何を主張すべきか、事前にしっかり考えておくのです。ポイントはその仕事をやりたい理由を「なぜ、なぜ」と自問自答してみることです。例えば、「マーケティングをやりたいのは世の中の流行を知ることができるから」では、単にマーケティングの仕事を説明しているだけで「あなたが」「なぜ」「マーケティングをしたいのか」が分かりません。

 ですから、「なぜ流行を知りたいのか」「流行を知ることで何を得られるのか」「それが得られると、どうしてあなたはうれしいのか」など可能な限り、「なぜ、なぜ」を繰り返してみましょう。そうすれば、人事側も「そこまで根強く、根の深い希望であれば(最初の配属でなくともいつかは)かなえてあげたい」と思うはずです。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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