ウイルス検査で鼻を“ぐりぐり”の理由は? コロナは新検査、インフルはそのまま?
新型コロナウイルスについては、唾液や鼻の入り口の粘膜による検査が登場しています。一方で、インフルエンザは、鼻の奥に綿棒を差し込んで採取する検査が続くのでしょうか。

新型コロナウイルスについて、唾液や鼻の入り口の粘膜による検査が登場しています。鼻の奥に綿棒を差し込んで採取する検査は、受診者のせきやくしゃみで検査者が感染する恐れがあるため、さまざまな方法が開発されているようですが、そもそもなぜ、受診者は苦しい思い、検査者は危険な思いをしてまで、鼻の奥を“ぐりぐり”して検査をするのでしょうか。また、鼻の奥の検査はインフルエンザでもおなじみですが、こちらはそのままなのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
ウイルスは鼻腔の奥に多い
Q.新型コロナウイルスの検査について、概要を教えてください。
市原さん「新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗原検査、抗体検査があります。先に『抗原』『抗体』について簡単に説明すると、抗原はウイルス特有のタンパク質、抗体は感染した後に体内にできるタンパク質のことで、ウイルスを排除する働きをします。PCR検査は、ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する方法で、今現在感染しているかどうかを確認する検査です。
抗原検査は、新型コロナウイルスに対する抗体を使って抗原を検出するもので、抗体が抗原と結びつきやすい性質(それがウイルスを排除する働きとなる)を利用した検出方法です。PCR検査同様、今現在感染しているかどうかを確認できる検査ですが、検出するには多くのウイルスが必要なので、PCR検査に比べると感度が落ちます。
抗体検査は、新型コロナウイルスに感染した後に体内にできる抗体の有無を調べる検査で、今現在の感染を反映するものではありません。しかも、検査の時期によっては、感染によって抗体ができていたとしても抗体が消失している可能性があるので、陰性だからといって『過去に感染がなかった』と証明できるわけではありません」
Q.検査で、鼻の奥まで綿棒を入れる方法が主流なのはなぜですか。
市原さん「ウイルスに感染すると、鼻汁やせき、くしゃみなどの風邪症状が起こります。ウイルスは鼻腔(びくう)、つまり鼻の穴に多く存在するので、鼻腔拭(ぬぐ)い液を検査に利用する方法が主流です。鼻腔の中でも奥の方にウイルスが多いため、検査では奥まで綿棒を入れます」
Q.唾液による検査など、ほかの方法のメリット/デメリットを教えてください。
市原さん「新型コロナウイルスについては、鼻腔拭い液だけでなく、唾液でのPCR検査も健康保険が適用されるようになりました。唾液の採取は患者自身で行えるため、医療従事者への飛沫(ひまつ)の拡散などの心配がなく、患者の痛みもないことにより、安心して検査できるのがメリットです。デメリットとして、鼻腔拭い液に比べると、唾液は感度が落ちることが挙げられます。ただし、発症から9日以内であれば検査結果に差はないとの報告もあります」
Q.インフルエンザは鼻の奥をぐりぐりする検査が続くのでしょうか。
市原さん「現時点では、インフルエンザの検査は鼻の奥での検査が続くと思います。飛沫が飛ぶ可能性はありますが新型コロナと違い、インフルエンザの場合は、医療従事者がワクチン接種をしています。それに、たとえ感染したとしても症状は数日間で治まり、新型コロナウイルスのように重篤になることはまずまれだからです。
なお、インフルエンザについても唾液での検査が開発されていたり、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時検査を唾液で行う装置が開発途中だったりしますので、今後には期待できると思います」
Q.ウイルス検査で「鼻の奥」「唾液」の選択肢から選べるとしたら、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
市原さん「新型コロナウイルスのPCR検査では、発症して早期であれば、鼻の奥と唾液に差はないと分かっているので、痛みもなく簡単に行える唾液でのPCR検査がいいでしょう。発症から10日以上経過している場合は、感度の高い鼻の奥でのPCR検査をすべきです」
(オトナンサー編集部)
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