お医者さんも人間です 医師が診療を受けるときの心境や病院選びは? 現役医師に聞く
病院で診療を受ける際、医師がとても頼もしく見えることがあります。しかし、当の医師本人は病気になった際、どのような気持ちで診療を受けるのでしょうか。
体調が悪くなったとき、病院や診療所に行く人は多いかと思います。診察がしっかりとしていると救われた気持ちになり、医師がとても頼りがいのある人物に見えます。一方、医師も人間なので、時には自身が体調不良に陥ることもあるはずです。医師は、自分が病気になった際にどう対処し、どのような気持ちで他の医師の診療を受けるのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
知識のゆえに不安になることも…
Q.医師の皆さんは自身の体調が悪いとき、どういう基準で病院や診療所を選んでいるのでしょうか。
市原さん「私の知っている限りでは、同じ病院の医師や、他の病院の知り合いの医師に頼んで、検査や必要な薬の処方、点滴などをしてもらうことが多いと思います。特に、総合病院に勤務する医師の場合、医師自身が多忙なため、わざわざ他の病院に出向くことは少ないです」
Q.医師の皆さんは他の病院や診療所で診療を受ける際、どのような気持ちになるのでしょうか。他の医師の診療を見て、仕事のことを考えることはあるのですか。
市原さん「人によって個人差がかなりあるため、受け止め方はそれぞれですが、たとえ自分が医師でも、病院で診察を受けて安心することは普通にあります。
私は子どもの頃から、1型糖尿病を患っているので、他の病院の糖尿病専門医を受診しています。自分と同じ専門ですが、客観的な意見をもらったり、治療をしてもらったりすることで勉強にもなるため、助かっています。もちろん、その病院の体制やスタッフの対応などを自分の病院と比べて考えることはよくあります」
Q.ちなみに、一般の人であれば不安になるような症状でも、知識がある医師は落ち着いて構えていられるのでしょうか。
市原さん「そうですね、大丈夫なことが分かっている症状などは慌てずに落ち着いていると思います。逆に、知識があるために不安になるときがあります。例えば、食べ物でアレルギーが出た場合は、呼吸困難や意識障害などに陥る可能性もあるため、考え過ぎて不安になるときはあります」
Q.医師が病院で診察を受ける際は、医師であることを申し出るのでしょうか。それとも、身分を隠したいと思うのでしょうか。
市原さん「診察する側からすると、医師であることはできるだけ申し出てほしいです。その方が説明が少なく済んで、話が早いという点もありますが、診察が終わった後にその人が医師だと分かった場合、『さっきの説明は分かりやすかったかな?』『変なことを言わなかったかな?』と後から不安になり、自分が恥ずかしくなるためです。
ただ、中には身分を隠したい人もいると思います。医師であることを堂々と申し出ると、『上から目線』という印象や、謙虚さに欠けるという印象を相手に与えかねないからです。私が他の医療機関で診療を受ける際は、医師であることを控えめに伝えています」
Q.医師の皆さんは、健康管理に優れた人が多いのでしょうか。例えば、喫煙や飲酒を控えている人は多いのですか。
市原さん「喫煙率は決して低くないと思います。激務でストレスが多いのが要因かもしれません。飲酒については診療科によって傾向が違いますが、飲み会などで飲酒する機会も多いです。また、当直明け翌日にそのまま勤務をするので、規則正しい生活は難しいです。
自分の健康管理を意識して実行できる医師は、大学病院や総合病院でも上の立場の人、開業している人など仕事内容に比較的ゆとりがある人が多いと思います」
Q.医師が病気にならないように心掛けていることがあれば教えてください。
市原さん「自分が風邪などの病気になってしまうと、例えば外来が休診になったり、病棟の患者さんを他の医師に託したりしなければならなくなるため、かなり影響が出ます。そのため、規則正しい生活を心掛けるよう注意はしています。しかし、先ほども申し上げましたが、医師は激務ゆえ、常に規則正しい生活ができる人は少ないのが現状です」
(オトナンサー編集部)
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