客への配慮で…感染症予防の「マスク」を禁止される接客の店員、感染リスクは?
小売店で接客を担当する店員について、予防目的でのマスク着用を原則禁止したり、上司の許可を必要としたりする店があります。医学的にどうなのでしょうか。
インフルエンザの流行が続いていますが、小売店で接客を担当する店員について、予防目的でのマスク着用を原則禁止したり、上司の許可を必要としたりする店があり、ネット上で話題になっています。「店員がマスクをしていると声が聞こえづらい」という声への配慮が理由のようですが、風邪やインフルエンザが流行する冬の時季、不特定多数の人が集まる場所は病気の感染リスクが高まっていると思われます。
店側が接客担当の店員にマスクをさせないことは、医学的に見てどうなのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
客のせきやくしゃみで…
Q.接客業では、店員がマスクをして接客することを好まない風潮があります。冬の時季に、接客業の店員がマスクをせずに不特定多数の人と接して働く場合、病気になるリスクはないのでしょうか。
市原さん「病気に感染するリスクは高まります。風邪やインフルエンザは飛沫(ひまつ)感染や接触感染なので、ウイルスに感染している客が、せきやくしゃみをしたとき、飛沫が店員の鼻や口に付着すると病気になる可能性が高まります。また、商品などにウイルスが付着していた場合、それに触った手で自分の鼻や口を触ると感染のリスクが高まるので、マスクで物理的に遮ることは有効で予防効果があります」
Q.接客業の店員について、本人が希望する場合は、病気予防のためにマスクをすることを企業は許すべきでしょうか。
市原さん「本人が希望する場合、自主的にマスクをすることを許容していいのではないかと思います。企業側がマスクを禁止するのは、マスクによるイメージ悪化などの配慮かもしれませんが、予防のためにマスクをする傾向は近年、世の中で広まっていますし、眼鏡などと同様に他人がコントロールするものではないと思います。現に病院では、ほぼ全ての医療関係者がマスクをしています」
Q.ただ、病院でも医療事務に携わる職員の中には、マスクをせずに働いている人がいます。
市原さん「病院でマスクをしていない事務の人は、患者さんと直接接することがないのでマスクをしていないだけだと思います。患者さんと直接の接点がある医療従事者は、マスクを必ずしているはずです」
Q.接客業の店員のマスク問題では、店員に焦点が当たりがちです。しかし、実際に店員に病気をうつす可能性があるのは客です。客側も店員に病気をうつさないような配慮をした方がよいのでしょうか。
市原さん「病気を周囲にうつさないよう配慮をするのは当然のことです。お店に限らず、外出時、風邪をひいてせきが出ている場合、マスクをすることはマナーです。家族や友人など近い存在の人に会う場合だけマスクをするのではなく、赤の他人にしか会わない場合であってもマスクをして外出しましょう」
Q.見た目の雰囲気などが重視される接客業では、病気の予防のためにマスク着用の動きがすぐに広がるのは、難しいと思えます。接客業も含め、職場でマスクによる病気の予防ができない場合、どのような対策をすべきでしょうか。
市原さん「接客業の店員が、職場で病気予防のためのマスク着用が許されないケースも考えられるでしょう。そうした場合は、規則正しい生活をして免疫力が落ちないようにする▽加湿器などで潤すことでウイルスの感染リスクを下げる▽こまめに手洗いやうがいをする、など基本的な対策を徹底するしかないでしょう。ただし、せきやくしゃみで直接ウイルスが顔にかかった場合、感染を確実に逃れるのは難しいと思います」
(オトナンサー編集部)
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