妊娠が怖い…悩む女性も 流産を繰り返す「不育症」の原因・検査・治療法
妊娠はするものの、流産や死産を繰り返してしまう「不育症」に悩む女性がいます。不育症の実態と、必要とされる周囲のサポートについて、医師に聞きました。

妊娠はするものの、流産や死産を繰り返してしまう「不育症」について、ネット上で相談を寄せる女性が多くいます。授かった赤ちゃんを死産という形で失う耐え難い悲しみを経験した女性の中には、「子どもが諦め切れないけど、妊娠が怖いです」「次も流産したらどうしよう…とばかり考えてしまう」といった声や、「不妊症の友達から『妊娠できるだけうらやましい』と言われてつらかった」「まだまだ知られていないと感じる」など、不育症の認知度の低さを嘆く声もあります。
赤ちゃんを望む女性の心身を苦しめる不育症の実態と、必要とされる周囲のサポートについて、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。
甲状腺機能異常などが原因
Q.そもそも、不育症とは何でしょうか。
尾西さん「不育症とは、妊娠はするものの流産や死産を繰り返し、元気な赤ちゃんを産むことができないことをいいます。2回流産を繰り返すことを『反復流産』、3回以上繰り返すことを『習慣流産』といいます。また、妊娠検査薬で陽性になったものの、超音波で子宮内に胎嚢(たいのう)が見えてこず、そのまま流産になったものは『化学流産』といい、不育症の診断の際の回数には加えません。
原因としては、子宮の形の異常▽甲状腺機能異常▽母親が『抗リン脂質抗体』という自己抗体を持っている場合(抗リン脂質抗体症候群)▽両親のどちらかの染色体異常などが挙げられますが、検査をしても原因が分からないケースが60~70%と多いのが現状です」
Q.不育症と診断されている女性の割合を教えてください。
尾西さん「流産は母親の年齢とともに増加するため、不育症の頻度も年齢が高くなると増加します。習慣流産の頻度は、日本では0.9%、不育症は4.2%、海外でも習慣流産が約1%、反復流産が約5%とほぼ同じ確率と報告されています」
Q.不育症の検査とは、どのようなもので、どんな人に必要とされているのでしょうか。
尾西さん「年齢にもよりますが、1回流産する確率は10~15%です。原因のほとんどは赤ちゃんの染色体異常なので、予防することはできません。また、確率が高いので、2回連続で流産することもまれではありません。ただ、2回繰り返すと赤ちゃんの問題ではなく、母親・父親のどちらかに何らかの問題がある可能性も出てきます。
そのため、不育症の検査は2回以上続けて流産した場合に行ってみるとよいでしょう。また、1回であっても、妊娠10週以降に子宮内で赤ちゃんが亡くなってしまい、原因不明の場合や、抗リン脂質抗体症候群の可能性が高い場合も検査を行いましょう。
いろいろな原因が考えられるため、検査の種類も多く、クラミジアなどの感染症がないかの検査▽甲状腺ホルモンや女性ホルモンといったホルモンの検査▽子宮の形に異常がないかを見るための超音波検査・子宮卵管造影検査・内視鏡検査▽抗リン脂質抗体を持っていないか、血液が固まりやすくなる凝固因子異常がないかといった血液の検査などがあります。また、夫婦ともに染色体の検査を行う場合もあります」
Q.不育症と不妊症の違いとは。
尾西さん「不育症は『妊娠は成立する』ものの、流産や死産によって元気な赤ちゃんを産めないことをいい、不妊症は『妊娠自体が成立しない』ことをいいます。そのため、『不妊症の人が不育症でもある』ということはあり得ません」
Q.不育症は、どんな治療を行うのですか。
尾西さん「まずは肥満や喫煙、飲酒習慣といった初期流産を増加させるリスクを改め、その上で、原因に応じた治療を行っていきます。原因がさまざまなので、治療法もそれぞれ異なります。例えば、血液が固まりやすくなり、血栓ができる抗リン脂質抗体症候群の人は低用量アスピリンの内服を行います。子宮の形に異常がある人は、場合によっては子宮鏡による手術を行うこともあります。ホルモン異常の場合は、その異常に応じた薬によってホルモンを正常値に近づける治療を行います。
一方、原因が特定できないケースでも特に高齢でなければ、今までの流産が3~4回の場合、治療をしなくても次の妊娠で出産できる可能性は60~70%といわれています」
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