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健保連「花粉症薬を保険適用除外に」提言の背景とは 処方薬に“安さ”求める人が多い?

国民皆保険制度の維持に危機感

Q.健保連が提言を出したのはなぜでしょうか。

森さん「日本は少子高齢化が急速に進み、国民全員が公的な医療保険制度で保障される『国民皆保険制度』の財政にも影響が出ています。保険診療の対象となる病気やけがの治療に1年間でどのくらいかかったか推計する『国民医療費』を見ると、2016年度は約42兆円、2006年度は約33兆円、さらに10年さかのぼると、約28兆円。高齢化とともに、国民の医療にかかるお金も同じ勢いで増えていることが分かります。

医療費増加の一方で、保険料を支払う現役世代の割合は低くなり、1人当たりの保険料の負担は年々大きくなっています。2022年には『団塊の世代』と呼ばれる人口の多い世代が後期高齢者(75歳以上)となるため医療費の伸びがさらに加速、サラリーマンの給与のうち3割が社会保障費として天引きされるようになるとも試算されています。国民皆保険制度を維持するため、公的医療保険の在り方を見直さなければならないという大きな課題に直面していることが、提言の背景にあります。

今回、健保連は『OTC類似薬全般について、保険適用からの除外や自己負担率の引き上げを進めるべきだ』と提言しています。特に、花粉症の一部の治療薬はスイッチOTCでも種類が多く、広く流通しているので、医療機関で処方する同じ有効成分の薬については保険適用から外して自費にするか、自己負担の割合を引き上げて、薬局で購入している人との整合性を取ってもいいのではないかという意見です。これで年間最大約600億円の医療費削減を見込んでいます。

健保連の幸野庄司理事は『治療が難しいとされていた病気が新薬で治るようになってきた。しかし、新薬は非常に高額化しており、それを保険で治療できるよう全体の意識を変えていくことが求められる』として、『花粉症に限らず軽度の症状について、OTCを使うセルフメディケーションで対処することで、高額な新薬を使用することで救命される人たちが保険制度によって救われる仕組みを目指すべきだ』と国民全体の理解を求めています」

Q.医師の中には、花粉症薬や湿布薬を保険対象から外すことに批判的な声もあると聞きます。

森さん「経済優先の政策で安全性が軽んじられることを懸念している医師も多くいます。『かかりつけ医が必要な疾病管理をして患者さんの健康を守ることが、ひいては無駄な医療費の削減にもつながる』との考えを示す日本医師会は、今回の提言に異論を唱えています。医療機関を受診せず自分の判断で薬を使い続けることによって、症状が悪化したり、病気を見逃したりすることにつながるリスクもある、という声もあります」

Q.医療用医薬品と市販薬の望ましい使い分け方は。

森さん「患者が自分である程度判断できる症状で、処方された薬が市販薬(OTC)として普及しているのであれば、薬局で購入して様子を見ることが今後、求められそうです。特に、医療機関を受診しても治療(投薬)が変わらない病気については、まずは、OTCを使って自分で手当てをするセルフメディケーションという選択を念頭に入れましょう。分からないことは薬局の薬剤師に質問してください。

具体的には、季節性のアレルギーや風邪症状、筋肉痛、季節性の肌の乾燥などから、OTCを上手に活用することをおすすめします。もちろん、なかなか症状が治まらない場合や薬の影響で他の症状が出た場合は、迷わず医療機関を受診してください」

(オトナンサー編集部)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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