「蜂蜜」は1歳未満が食べると危険、1歳過ぎると大丈夫な理由は? 個人差はない?
蜂蜜は「体によい」というイメージがある一方、1歳未満の乳児が食べると危険とされ、死亡例もあります。なぜ、1歳を過ぎれば大丈夫なのでしょうか。

8月3日は「8(はち)」と「3(みつ)」の語呂合わせで「はちみつの日」です。蜂蜜は「体によい」というイメージがある一方、1歳未満の乳児が食べると危険とされ、2017年には、蜂蜜摂取が原因で生後6カ月の男児が死亡したケースもありました。蜂蜜に含まれることがある「ボツリヌス菌」が原因とされますが、1歳を過ぎればボツリヌス菌を含む蜂蜜を食べても大丈夫なのはなぜでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
1歳を超えると腸内環境が整う
Q.蜂蜜を乳児が食べてはいけない理由を教えてください。
市原さん「蜂蜜に含まれるボツリヌス菌は、1歳未満の乳児の腸内で増殖し、その毒素によって『乳児ボツリヌス症』を発症します。1歳を超えると腸内環境が整うので、ボツリヌス菌が他の腸内細菌に負けて増殖しにくいのですが、1歳未満の乳児では腸内環境がまだ十分に整っておらず、ボツリヌス菌が増えて毒素を産生するのです」
Q.「1歳」が基準とされますが、発育の早い遅いで違いはないのでしょうか。
市原さん「1歳くらいになると、離乳食によってさまざまな菌が体に入ってきて、栄養バランスも大人に似てくるので大人の腸内環境に近づき、腸内細菌が整います。もちろん、個人差や発達の問題もあり得ます。離乳食がなかなか進まない子どもであれば、1歳になっても腸内細菌が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内に定着し毒素を産生する可能性もあります。蜂蜜を与えるとしたら、ミルク以外の食事が安定して摂取できるようになってからにしましょう」
Q.乳児ボツリヌス症の症状と、治療法を教えてください。
市原さん「便秘が最初の症状となることが多いです。全身に力が入らない、哺乳力が低下する、泣き声が弱くなるといった症状も出ることがあります。ひどくなると全身のまひや呼吸困難など深刻な症状が出て命に関わることもあります。大人のボツリヌス症の場合は『ボツリヌス抗毒素』を投与しますが、乳児の場合は人工呼吸や点滴などの対症療法を行います」
Q.砂糖代わりに蜂蜜を使ったお菓子を与えるのもダメなのでしょうか。
市原さん「ボツリヌス菌の芽胞は熱に強いため、加熱してあるお菓子でも危険なので避けましょう。蜂蜜自体も、加熱したとしても1歳未満の子には与えてはいけません。
日本で販売されている蜂蜜のほとんどは、糖度を増したり殺菌したりするために加熱されているようです。ただし、ボツリヌス菌を殺菌するには120度で4分以上加熱が必要なので、加熱処理されているからといってボツリヌス菌が死滅しているとは限らず、注意が必要です。蜂蜜の風味や栄養を重視して加熱処理をしていない蜂蜜もあります。もちろん、1歳未満の乳児に食べさせてはいけません」
Q.ボツリヌス菌への耐性を、ワクチンのようなもので獲得することはできないのでしょうか。
市原さん「先ほど述べたように、一般に1歳以降になると腸内細菌が整うため、自然とボツリヌス菌への耐性ができます。ワクチンで予防するものではありません」
Q.大人がボツリヌス菌で食中毒になることもあります。蜂蜜の場合との違いを教えてください。
市原さん「ボツリヌス菌は土壌などに広く分布しているため、野菜や果物、肉や魚などから人が摂取することはあります。ただし、ボツリヌス菌は酸素のない環境でしか増殖できません。そのため、真空パックや缶詰、瓶詰の食品で食中毒の可能性があります。食品の中にボツリヌス菌が含まれていた場合、食品が入っている真空パックや缶、瓶の中でボツリヌス菌が毒素を産生し、その毒素を直接摂取することで食中毒を起こすことがあります。
蜂蜜の中にもボツリヌス菌がいることがありますが、蜂蜜は水分活性が低く(水分が少なく)、pHが低い(弱酸性)ので菌が増殖し難いという特徴があります。保管状態で菌が増殖しにくく、先述したように1歳以上の人が蜂蜜を食べた場合は腸内細菌により菌が死滅するため、毒素による症状が出ることはありません」
(オトナンサー編集部)
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