主治医と関係悪化懸念も…「セカンドオピニオン」は利用すべき? メリットや課題は?
主治医とは別の医師の診察を受ける「セカンドオピニオン」や、診療科に応じて病院を使い分けることの是非について、医療ジャーナリストに聞きました。

主治医とは別の医師の診察を受ける「セカンドオピニオン」は、主治医の診察に不安を覚えたことをきっかけに利用するケースが多いようです。複数の医師の診察を受けることで、患者が納得のいく治療法を見つけることができるといった利点もありますが、主治医との関係悪化を懸念する声もあります。また、診療科に応じて病院を使い分けた場合、各病院で治療方法が異なるため、複数の病気を併発した際は治療に混乱をきたすリスクもあります。
セカンドオピニオンを活用したり、診療内容によって病院を使い分けたりすることに問題はないのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
民間保険会社でも実施
Q.セカンドオピニオンの認知度や需要は高まっているのでしょうか。
森さん「セカンドオピニオンが求められるのは、主にがんの治療の選択。心臓の手術、未破裂の脳動脈瘤(りゅう)の手術などでもあると思います。がん患者が増えたことや、民間の保険会社が『がん保険』の契約者へのサービスとしてセカンドオピニオンを実施していることで、認知度、需要は上がっているといえます」
Q.セカンドオピニオンの利点は。
森さん「どんな病気にも『標準的な治療』というものがあり、医師はそれにのっとって患者さんを治療します。しかし、治療する医師にも得意不得意があり、病院の環境によってできる治療、できない治療があるのも実情です。
セカンドオピニオンでは、そうした事情に左右されることなく、患者さん本人が選び得る治療法それぞれのメリット、デメリットを明確に知り、納得した上で治療の選択をすることができます。これは病気と向き合う上でとても大切なことです。受け身ではなく、自ら治療方針の決定に参加することで、今後の治療に前向きに取り組めます。
特に、がんのように治療後の人生の質を左右するかもしれない大きな決断となる場合などに、主治医から提案された治療以外に選択肢がないかどうかを探る目的でセカンドオピニオンを受けるケースが多いです。最も大切なのは、患者さん本人が納得して治療を受けることなので活用するのは問題ありません」
Q.では、診療科によって病院を使い分けることは問題ないのでしょうか。
森さん「セカンドオピニオンとはまた違う視点が必要です。近年は特に都市部を中心に、近隣にある複数のクリニックで専門が細分化されていて、症状によっていくつもの医療機関を使い分けている人が多いようです。
しかし、基本的には、心身の不調のことを何でも相談でき、過去の病気も含む健康状態を把握してくれる『かかりつけ医』を1つ持ち、必要があれば専門の診療科へつないでもらって治療を受け、治療が終了したらまた『かかりつけ医』へ戻るという流れで治療を受けるのが望ましいとされています。
自分の判断で複数の医師にかかると、自身の医療情報を分散させてしまい、検査や薬の重複につながったり、結果的に他の病気の影響や発見を見落としたりしてしまう可能性があるからです」
Q.全てのかかりつけ医が、快く専門医を紹介してくれるものでしょうか。
森さん「信頼できるかかりつけ医であれば、自分の専門の範囲を超えたら適切な診療科(専門医)を紹介してくれるはずです。漫然と同じ説明を行い、同じ治療や薬を続けるだけの医師は『信頼できる医師』とはいえません」
Q.現場の医師は、セカンドオピニオンや、診察科によって病院を使い分けることについて、どう思っているのでしょうか。
森さん「都市部の病院を中心にセカンドオピニオンが一般的となり、多くの医師は患者の当然の権利だと思っています。しかし、すべての病院で快く対応してもらえるわけではないのが現状です。また、診療科を使い分けることは、専門が細分化している現在では当然のことではあるものの、いきなり専門の治療を求める必要がないケースも多く、適切な医療機関に振り分けがなされることが求められます。現場の医師もそう感じていると思います。
日本の医療システムではどの医療機関を受診しようと自由ですが、本来的には、かかりつけ医として全身の状態を総合的に診察し異常を見つけ、一次的な治療を行う医師(医療機関)と診療科ごとの専門治療を担う医師(医療機関)に役割が分けられていますし、そうなる方向で進んでいます。ただ、総合的に診ることを専門に学んだ医師はまだ日本に少ないため、かかりつけ医であっても専門によって得意不得意があるのは否定できません」
Q.かかりつけ医とはどのように付き合うべきでしょうか。
森さん「日頃からコミュニケーションを取って情報を共有し、病歴や健康状態などをトータルに把握してもらうことです。そうすれば、いざというときにスムーズに的確な専門治療へとつなげてもらうことができます。心配なことは『心配だ』、分からないことは『分からない』としっかり伝えられる人間関係が、よりよい医療を選択できるコツだと思います」
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