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注目のがん免疫療法 専門家は「有効なものはわずか」と警鐘、オプジーボも万能でない

ノーベル賞受賞で注目されている「がん免疫療法」ですが、専門家は「有効なものは、ごくわずか」と指摘しています。

オプジーボの仕組みを単純化したイラスト。黄色いヘルメットの「くすり」が、免疫細胞にブレーキがかかるのを防いでいる(「国立がん研究センターがん情報サービス」より)
オプジーボの仕組みを単純化したイラスト。黄色いヘルメットの「くすり」が、免疫細胞にブレーキがかかるのを防いでいる(「国立がん研究センターがん情報サービス」より)

 ノーベル医学生理学賞を本庶佑・京都大学特別教授が受賞する理由となった、「がん免疫療法」が注目されています。インターネットで検索すると、本庶さんが開発に携わった新薬「オプジーボ」とともに、キノコや玄米を食べる“治療法”など、さまざまな療法が出てきますが、それぞれどのように違うのでしょうか。国立がん研究センター(東京都中央区)で話を聞きました。

有効な免疫療法は、ごくわずか

「国民の2人に1人が一生のうちにかかる」とされる「がん」ですが、従来の主な治療法は(1)手術でがんを取り除く外科治療(2)放射線治療(3)抗がん剤治療、の3種類でした。本庶さんらが開発した、新薬を使うがん免疫療法は“第4の治療法”とも呼ばれます。

 国立がん研究センターで情報収集、啓発活動などを担う、がん対策情報センターの若尾文彦センター長に聞きました。

Q.そもそも、がん免疫療法とは何でしょうか。

若尾さん「体の中に異物が入ってきた時、それを排除する仕組みが免疫機能です。がん細胞も異物として認識され、通常なら免疫ががん細胞を排除します。しかし、免疫細胞の活動が弱まっていたり、がん細胞が免疫細胞の働きに“ブレーキ”をかけたりすると、がん細胞が増えて、がんが大きくなってしまいます。

がん免疫療法は、弱った免疫の力を回復させ、元気な状態を保つことで、がん細胞を攻撃し、がんを治療する方法です。本庶先生の研究は、がん細胞が免疫細胞の活動を抑える、つまり“ブレーキ”をかける仕組みを発見し、新薬開発に成功しました。それが受賞の一番の理由です」

Q.免疫療法はがんに効く、ということでしょうか。

若尾さん「免疫療法と一口に言っても、さまざまなものがあり、有効なものはごくわずかです。療法全体を示す『広義の免疫療法』と、その中でも、しっかりした科学的根拠がある『効果のある免疫療法』とは、きちんと区別する必要があります。もちろん、本庶先生の研究成果は後者です」

Q.ネットで調べると、さまざまな「免疫療法」が出てきます。「アガリクス」というキノコや「玄米菜食」「フコイダン」の摂取などです。

若尾さん「残念ながら、それらはまったく効果が期待できないといって問題ありません。今、ちまたで行われている『広義の免疫療法』の中には、臨床試験もされておらず、患者さんの自費(保険外診療)で、医療として提供しているものがあります。しかし、順番が違います。

本来ならば、しっかり研究し、効果があることを確認して国の承認を受ける方向に向かなければいけないのに、そうしていない。効果が期待できないのが分かっているからです」

Q.高い費用を出して、なぜ多くの人がそのような「広義の免疫療法」に頼るのでしょうか。

若尾さん「『高いお金を払えば良い治療が受けられる』と誤解している人が多いのです。レストランも高いお金を払えば良いサービスが得られる。そういう上流意識といいますか、『並の医療じゃなくて、良い医療を受けたい』ということで、有効性が期待できない自由診療(保険外診療)を多くの人が受けてしまう。

国が認めた保険診療であれば、薬は高額でも、高額療養費制度を利用して、収入などに応じて定められた金額に抑えることができるのですが」

Q.患者さんの細胞を取り出して、培養して戻すという治療法の広告もありました。海外で承認された方法もあると聞きましたが。

若尾さん「海外で承認されたのは、遺伝子操作をする高度な治療法です。技術もコストも非常に高いものです。日本でよく宣伝している治療法とは違います」

Q.これらの「広義の免疫療法」の問題点は。

若尾さん「一番の問題は、効果が明らかでないものを、患者さんから高いお金を取り、過度の期待をさせた上で使用していることです。『免疫療法は体に優しく、副作用がない治療法で、抗がん剤のような苦しみもなく、非常に優れています』と大々的に宣伝すると、抗がん剤治療などで非常につらい思いをしている人や、手術ができずに苦しい思いをしている人には、とても魅力的に映ります。それを利用していることが問題です」

Q.しかし、ノーベル賞で免疫療法への注目度がさらに高まっています。

若尾さん「免疫療法に注目していただくのは非常にありがたいのですが、有効なものはごくわずかであり、多くの『広義の免疫療法』、特に自由診療のものは慎重に対応してほしいと思います」

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