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初期症状がほとんどない「食道がん」…60代が気を付けるべき理由とは? 発症リスクを上げる習慣を専門医が解説

60代が気を付けるべき「食道がん」を引き起こしやすい飲食物や生活習慣などについて、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院院長で消化器病専門医、総合内科専門医の柏木宏幸さんに聞きました。

60代の人は「食道がん」に注意するべき理由とは?
60代の人は「食道がん」に注意するべき理由とは?

「食道がん」は食道の粘膜に発生し、初期は自覚症状がほとんどないとされています。池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院(東京都豊島区)院長で、消化器病専門医、総合内科専門医の柏木宏幸さんによると、発症数が50代後半から増加し始めるため、特に60代は気を付けた方がよいとのこと。そこで、柏木さんに食道がんを引き起こしやすい飲食物や生活習慣などについて聞きました。

食道がんを引き起こしやすい「飲食物や生活習慣」とは?

Q.60代の人は食道がんに気を付けた方がよいとのことですが、そもそも食道がんとはどのような病気なのでしょうか。

柏木さん「食道がんとは、食道の粘膜から発生する悪性腫瘍です。食道がんは日本では年間約2万5000人が罹患し、男性に多く見られます。また、50代後半から徐々に増加し始めるため、60代の人は必ず気を付ける必要があります。

食道がんには主に『扁平(へんぺい)上皮がん』と『腺がん』があり、日本では『扁平上皮がん』が約90%を占めています。食道がんの主な原因として、飲酒、喫煙、熱い飲食物や塩分の過剰摂取、逆流性食道炎などが挙げられ、日本人に多い扁平上皮がんの主な原因は飲酒、喫煙となっています。

一方、欧米に多い『腺がん』は近年日本でも増加傾向にあり、逆流性食道炎や肥満が主な原因です。逆流性食道炎とは、胃酸が食道に逆流することで起きる炎症です。繰り返し起こすと、食道の粘膜が変化して『バレット食道』という状態となり、特にバレット食道がんのリスクが上昇します。

食道がんは初期段階ではほとんど無症状であり、進行すると次のような症状が現れます」

・食べ物のつかえ感、嚥下(えんげ)困難
・胸(食道)の痛みや違和感
・体重減少
・声のかすれ
・慢性的なせき
・吐血や黒色便

これらの症状が出た時点ですでにがんが進行していることが多いため、気になる症状があれば医療機関の受診をおすすめします。

Q.食道がんを引き起こしやすい飲食物や生活習慣について、教えてください。

柏木さん「扁平上皮がんの原因である『飲酒』に関しては、最も重要な危険因子かつ日本人の遺伝的要因が関係しています。飲酒がリスクとなる理由として、粘膜への直接の刺激以外にもアルコールが代謝される過程で発がん性物質のアセトアルデヒドが生成されることが挙げられます。アルコールが代謝されて産生されるアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い人や、分解できない遺伝子変異(ALDH2の欠損)を持つ人は食道がんのリスクが高くなります。

アセトアルデヒドを分解できない遺伝子を持つ人はお酒を飲めません。ただし、働きが弱いタイプの人は、弱くても飲んでいるうちに強くなることもあり、日常的に飲むようになることもあります。このような人は、飲酒量が多くなるほど食道がんのリスクが上昇します。『喫煙』も食道がんだけでなく、さまざまながんの原因となります。特に、飲酒と喫煙を両方する場合は、食道がんのリスクが相乗的に高まることが明らかとなっています。

また、先述の話と重なる部分もありますが、『65度以上の熱い飲食物を摂取する習慣』や『塩分の取り過ぎ』も食道がんのリスクを高めると報告されています。その他、野菜や果物の摂取不足が食道がんの原因になります」

Q.食道がんをできるだけ防ぐには、どのような対策が求められるのでしょうか。

柏木さん「先述のように症状が出てからでは進行していることが多いため、予防と早期発見が何より重要です。扁平上皮がんは、飲酒と喫煙が主な原因のため、節酒や禁煙が特に予防に有効です。適正な飲酒量としては1日1合程度です。アルコール度数が高いお酒は控えるようにしましょう。飲酒後に顔が赤くなりやすい人、以前はお酒が弱かった人は、飲酒を控えることをお勧めします。飲酒も喫煙もする人は、リスクが高くなるため、特に予防への取り組みと内視鏡検査での早期発見が必要です。禁煙が困難な場合は、禁煙外来を受診するのもよいでしょう。

そのほか、日常的な食生活の注意点として、『熱い飲食物は少し冷ましてから摂取する』『野菜や果物を積極的に摂取する』とともに、塩辛い食品や漬物などの塩分が多く含まれている食品の過剰摂取を控えましょう。野菜としては、キャベツやダイコン、小松菜といったアブラナ科の野菜が食道がんのリスクを低減する効果が高いとされています。野菜と果物をバランスよく取ることが大切です。

腺がんの原因となる逆流性食道炎は、胃酸が増える習慣や、腹圧や胃内圧の上昇が原因となります。具体的には、食べ過ぎや早食い、高脂肪食、飲酒、喫煙、食べてすぐに横になる習慣、肥満体形、おなかを締め付けることが多い、長時間前かがみの姿勢を取る、前かがみの体形が挙げられます。がん全般の予防、肥満改善のためにも運動は効果的です。胸焼けや胃酸逆流症状などが強い場合には逆流性食道炎を起こしている可能性もあるため、治療や検査のために消化器内科、胃腸内科を受診しましょう。

先述の予防策も大切ですが、食道がんは早期発見がとても大切で、早期に発見できれば内視鏡治療で完治できる可能性が高くなります。バリウム検査では初期の食道がんの評価や診断は困難とされています。喫煙者や飲酒習慣がある男性は特に高リスクであるため、40歳からは年に1回、上部消化管内視鏡検査を受けるのをおすすめします」

(オトナンサー編集部)

【画像】「えっ…!」 これが「食道がん」のリスクを上げる食べ物です!

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柏木宏幸(かしわぎ・ひろゆき)

総合内科専門医、消化器病専門医、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長

埼玉医科大学医学部卒業後、沖縄県で初期臨床研修を修了。東京女子医科大学消化器病センター内科へ入局し、内科・消化器内科・内視鏡診療および治療に従事。炎症性腸疾患グループに所属し、臨床および教育活動の両面で活躍。後に同センターにて助教を務める。

その後、複数の民間病院にて臨床経験を積み、2023年4月に「池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院」(東京都豊島区)を開院。胃がん・大腸がんの早期発見啓発と内視鏡検査の普及を目的とした診療体制を構築。開院から1年2ヵ月で月間内視鏡件数600件を超え、池袋周辺の企業勤務者および地域住民の健康診断、生活習慣病治療(高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症)や一般内科診療にも力を入れている。

アクセスの良い立地を生かし、首都圏のみならず全国各地、さらには海外からも受診者が来院。現在は外来診療に加え、YouTubeチャンネルを通じて医療知識の普及や内視鏡検査の重要性について積極的に情報発信を行っている。

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院(https://www.ikebukuro-cl.com)。公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@HKa-wb4jw)。

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