おなかがすくと鳴る「グーッ」音の正体って? 消化器病専門医に聞いてみた
空腹でおなかが「グーッ」と鳴ったことがある人は多いと思います。あの音の“正体”とは何なのでしょうか。専門医に聞いてみました。
会議中や仕事中、空腹でおなかが「グーッ」と鳴って恥ずかしい思いをした経験がある人は多いと思います。一方で、空腹時におなかから音が鳴る理由を正しく説明できる人は、あまりいないのではないでしょうか。
空腹のとき、おなかから「グーッ」と音が鳴るのはなぜなのでしょうか。この音の正体について、ふれあいの丘内科内視鏡健診クリニック(横浜市都筑区)院長で、認定内科医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医の粟田裕治さんに聞きました。
おなかが鳴るのは「胃腸の健康の証」
Q.空腹時におなかから鳴ることがある「グーッ」という音の正体は何ですか。
粟田さん「口に入れた食べ物は食道を通って胃、十二指腸に入り消化され、小腸・大腸で吸収されます。胃から十二指腸へと食べ物が出ていくまで、一般的に3~5時間かかります。
胃の中がほぼ空っぽになると、周期的に胃がねじれるように強く収縮します。このとき、胃の中に空気や液体が入っていると、それらが『幽門(ゆうもん)』と呼ばれる胃と十二指腸の境目など、狭い所を通って押し出されるときに振動して『グーッ』と音が鳴ることがあります」
Q.かなり大きな音が鳴る場合もありますが、おなかの音の「音量」には何が関係しているのですか。
粟田さん「胃の内容物の状態や、胃の形状が、音の鳴り方・音量に影響するといわれています。必ずしも音が鳴るというわけではありません。
狭い所を空気が勢いよく通過するときに音が出るということでいえば、胃の中の空気が食道を通って喉から口の中へと出る『ゲップ』の音や、直腸から肛門を通って空気が出る『おなら』の音に似ているかもしれません。
出る空気量が多く、強い圧がかかれば、大きなゲップやおならが出たり、空気量が少なければ音がしないゲップやおならがあったり、『ブッブッブッ』と連続したおならが出たりもしますよね。これと同様に、胃の中の空気の量や、胃の収縮の力の強さなどで、おなかが鳴るときの音量や音の種類が変わってくるといえます」
Q.「静かな空間で音が鳴って恥ずかしかった」という経験がある人も少なくないようです。空腹時でもおなかの音が鳴らないようにするための方法はあるのでしょうか。
粟田さん「早食いをしたり、しゃべりながら食べたりすると空気を飲み込む量が増えて、おなかが張ったり、音が鳴りやすくなったりします。おなかの音を鳴りにくくするためには、早食いやしゃべりながら食べることを避けるとよいでしょう。
また、一度にたくさん食べると、その後の胃の収縮運動が大きくなっておなかの音が鳴りやすくなるため、過食も避けた方がいいですね。そもそも音が鳴らないようにするには、アメなどの糖分が入ったお菓子やジュースなどを摂取するなどして、胃の中を空っぽにしないことが一番です。
ただし、おなかが鳴る原因である空腹時の胃や小腸の収縮運動は、腸内の細菌繁殖を防ぎ、細菌のもととなる食べ物のカスを押し出す重要な働きを持っています。この収縮運動が十分に行われないと、胃液や腸液が体内に停滞し、細菌が繁殖しやすい状態となり、おなかの張りや胃もたれなどの症状を引き起こしてしまうこともあります。
つまり、おなかの音が鳴ることは、おなかの中をきれいにしているサインであり、胃腸の健康の証なので、恥ずかしがることはありません」
(オトナンサー編集部)
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