口の中に“謎のコブ”が! 骨が出っ張る「骨隆起」はなぜ起こる? 歯科医師に聞いた
口の中で「コブ」のように骨が盛り上がる「骨隆起」。なぜ口の中で骨が出っ張ってくるのか、放置してもいいのか……いろんな疑問を歯科医師に聞いてみました。

口を開けて鏡を見たとき、口の中に「コブ」のようなデコボコしたものを見つけたことはありませんか。それは「骨隆起(こつりゅうき)」と呼ばれる、大きく盛り上がった骨かもしれません。歯茎が腫れたように見えることもあるため、不安になる人も多いようですが、なぜ口の中で骨が出っ張ってくるのでしょうか。
「骨隆起」の疑問について、つのだデンタルケアクリニック(福岡市博多区)院長で歯科医師の角田智之さんに聞きました。
骨の白い色が透けて見えることも
Q.「骨隆起」とは何ですか。
角田さん「骨隆起とは、骨の隆起(出っ張り)のことです。医学的には『外骨症(がいこつしょう)』といい、ちょっと難しいですが、『反応性または発育異常と考えられる骨の限局性過剰発育によって外方に増生する骨隆起である』とされています。
見た目は、いわゆる“出っ張り”です。お口の中を見たときに『何かできものがある』と思い、心配して受診される患者さんも多いです。痛みはない場合が多いですが、骨の出っ張りなので、出っ張っている分、食事中に傷つけて痛みを伴う場合もあります。そのため、痛みがなく普段は気にしてなくても、傷つけたことにより痛みを感じ、口の中を自分で見たら、『あっ、できものがある!』と受診されるケースもあります。
見た目は粘膜とほぼ同じ色ですが、粘膜が薄くなっているため、骨の白い色が透けて白く見えることもあります。硬さは、骨なので硬いです。腫瘍や炎症による膿瘍(うみ)の場合、触ればやわらかいので、比較的簡単に自己診断もできると思います」
Q.骨隆起はなぜ起こるのですか。また、口の中のどこが盛り上がってくるのでしょうか。
角田さん「骨隆起の原因は明らかになっていません。『細菌などの感染による炎症刺激から二次的に起こる』『歯ぎしりや食いしばりで顎の骨に伝わった応力によるもの』『鼻腔疾患』などという原因はいわれていますが、これらが該当せず骨隆起がある場合もあり、原因は不明です。
口の中では、『下顎の舌側(内側)の骨(歯茎の下あたり)』『口蓋正中部(上顎の裏側の骨の真ん中)』『上下歯茎の外側』あたりにできやすいといわれています。普段、お口の中はご自分でもあまり見ないので、たまに見て出っ張りに気付くと心配になってしまうようです。
これは実際にあったケースですが、内科での胃の内視鏡検査で、上顎の裏の出っ張りが見つかり、このときの骨隆起は比較的大きかったので、内科の先生も心配になり、紹介していただいたことがありました」
Q.骨隆起を起こしやすい人の特徴はありますか。
角田さん「文献的には、日本人に比較的多いようです。また、年齢・性差では、18歳以上の女性にやや多いとの報告がみられています。生活習慣や食習慣、虫歯、歯周病が明らかに影響している因子とはいえないようです。また、遺伝が関与するといった報告もあるようですが、いまだはっきりしていません。要するに、先述した通り、発生原因は不明といえるでしょう」
Q.骨隆起を見つけた場合、どうすればいいですか。放置しても問題ないのでしょうか。
角田さん「病気ではないので、放置して問題ありません。ただ、食事のたびに傷つけてしまうとか、大きな骨隆起であれば、発音や摂食に影響することもあるので、その場合は治療することもあります。また、歯があるときはいいですが、歯周病や虫歯で歯を抜いてしまい、入れ歯をするときに、骨隆起が邪魔になることもあり、この場合も治療が必要になることがあります。
骨隆起との鑑別(見分け)が必要なものとしては、『骨種(こつしゅ)』があります。これはただの出っ張りではなく、良性腫瘍になりますが、好発部位が若干異なります。また、骨種の場合、他の病気の一症状として現れることもあります。骨隆起と骨種を見た目だけで見分けることは困難ですが、骨種は腫瘍なので少しずつ大きくなります。診断を確定するには、病理検査(顕微鏡検査)が必要です」
Q.骨隆起の治療法や、予防法はあるのですか。
角田さん「治療法としては、骨を削って除去する手術です。小さいものであれば局所麻酔で手術可能ですが、大きいものになると全身麻酔での手術になることもあります。骨隆起は、ほぼ両側にできるので、両側の手術が必要となります。お薬での治療などはありません。
予防法としては、原因が明らかではないので、『ない』といってよいと思います。治療が必要なケースとしては、先述したような事情で、出っ張りが邪魔になってしまう場合です。
骨隆起は“骨の出っ張り”であり、特段心配はいらないですが、他の腫瘍との鑑別が必要なので、気になれば医師に診てもらってください。受診する診療科としては、歯科、口腔(こうくう)外科、耳鼻咽喉科がよいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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