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「虫歯がなければ歯周病にならない」→実は誤り! 実際のところを歯科医師に聞いてみた

「虫歯がない人は歯周病にならない」と考えている人はいませんか。実際は「虫歯がなくても歯周病になる」ことがあるそうです。歯科医師に聞いてみました。

虫歯がなくても要注意?
虫歯がなくても要注意?

「虫歯がないから、しばらく歯科医院に行っていない」という人、意外と多いのではないでしょうか。「虫歯がない=歯周病とも無縁」のイメージがありますが、実際はそうではなく、虫歯がなくても歯周病になるケースが起こり得るようです。

「虫歯がなくても歯周病になる」というのは本当なのでしょうか。つのだデンタルケアクリニック(福岡市博多区)院長で歯科医師の角田智之さんに聞きました。

虫歯になりにくい人は「手遅れ」になりやすい

Q.「虫歯がない人も歯周病になる」というのは事実でしょうか。

角田さん「事実です。まず、『歯周病』とは歯を支えている周囲組織(歯茎、歯を支えている骨)の病気のことです。歯周病の原因は、虫歯と同じプラーク(磨き残し)です。プラークは細菌の塊でもあり、歯磨きなどで落とし切れずにいると、細菌が歯面に停滞します。細菌が酸を出して歯を破壊すると虫歯になり、歯と歯茎の隙間に残って炎症を起こすと歯周病になります。

ただ、虫歯に対しては唾液による防御機能が備わっています。もちろん歯周病に対しても効果がなくはないですが、主に防御能力を発揮するのは虫歯に対してです。この防御機能には強弱があり、強い人はもともと虫歯になりにくい人です。よって、歯磨きをしなくても虫歯になりにくい人が存在するのもまた事実です。

ただ、ここが厄介な問題点です。唾液の力が強く、虫歯になりにくいのは一見よさそうに感じられますが、一生懸命歯磨きをしなくても虫歯にならないので、きちんと磨く習慣がない人が多いようです。一方、虫歯になりやすい人は、小まめに歯科医院を受診されるので、治療とともに虫歯や歯周病の知識、歯磨き方法といった予防に関する指導を受けることができます。

また、歯周病は症状なく進行するので、歯のぐらつきや歯茎の腫れ、出血などの症状が出たときは手遅れであることが多く、虫歯になりにくい人はそんな状況になってから受診するケースも少なくありません」

Q.虫歯のない人が見落としがちな「歯周病のサイン」とは。

角田さん「虫歯と違い、歯周病は体の免疫機能がダイレクトに影響します。歯茎の中では、“歯周病菌軍”(敵)と“体の免疫軍”(味方)が昼夜、戦闘を繰り広げています。仕事が忙しく疲れがたまっているときや、風邪をひいたときに免疫が落ちやすくなるのは想像できると思います。歯茎の中でも歯周病菌が多くて優勢なところ(歯を支えている骨が溶けてしまっている部位)は、免疫が劣勢になると歯茎の腫れ、出血、痛みといった症状が出てくるのです。

寝不足が続いたり、ストレスがたまっていたりするときも同様で、『あれ? 何だか歯茎が少し腫れてるな』という自覚症状が起こることがあります。ただ、疲れや体調不良が改善されると免疫機能が回復し、自然と症状は取れてしまいます。それは治ったのではなく、免疫が復活し、症状を抑え込んだ状態に過ぎません。放置せず、歯科医院で診てもらう必要があります」

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角田智之(つのだ・ともゆき)

歯科医師

つのだデンタルケアクリニック院長。歯科医師臨床研修指導医、日本選択理論心理学会認定選択理論心理士。1992年、明海大学歯学部卒業。日本大学板橋病院、社会保険横浜中央病院、久留米大学病院、医療法人社団高邦会高木病院歯科口腔外科を経て、2008年、福岡市博多区につのだ歯科口腔クリニックを開設。2015年、同じ博多区内で移転開設し、つのだデンタルケアクリニックに名称変更。予防診療と舌痛症のメンタルカウンセリングを行っている。専門分野は口腔外科、歯科心身症。つのだデンタルケアクリニック(https://tsunoda-dentoral.net/)、舌痛症専門サイト(https://zettsu.com/)。

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