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サイトで知り合った男の子どもを妊娠した36歳女性、男が妻子持ちで慰謝料の恐怖(下)

男性は、自分の慰謝料で頭がいっぱい

「それはそうなんだけど、そんなに余裕はないし、君の分(の慰謝料)は厳しいよ」

 彼は、渋い表情でそう言い返したそうです。彼は、自分の慰謝料を用意することで頭がいっぱい。里佳子さんの慰謝料を立て替えてあげたくても、「ない袖は振れない」と言い出したのですが、重要なのは夫の財産も妻の財産も法律上は「共有」だということです。例えば、里佳子さんが妻へ200万円の慰謝料を支払ったとします。そうすると妻の財産は200万円増えますが、慰謝料肩代わりの約束通り、彼が里佳子さんへ200万円を支払うと、今度は夫(彼)の財産が200万円減ります。

 200万円は「不倫相手→妻(夫)→不倫相手」と転々としたのですが、夫婦の財産はプラス200万円、マイナス200万円なので差し引きは0万円です。これでは、何のために慰謝料を請求するのか分からないので、慰謝料肩代わりの契約書を上記説明を添えた上で提示すれば、妻が慰謝料請求を断念するというカラクリです。

「慰謝料肩代わりは、妻に請求をやめさせるためのテクニックなので、彼の収入や財産で2人分の慰謝料を捻出できるかどうかを考える必要はありませんよ」

 私は里佳子さんに説明したのですが、実際のところ、男性の支払い能力はどうでもよく、仮に支払い超過であっても肩代わりを引き受けて大丈夫なのです。里佳子さんは、私の言葉を彼に代弁したのですが、それでも彼は腑に落ちずに首をかしげたそうです。最終的には、里佳子さんが「ちゃんと安心できないと(交際を)続けられない」と強めに言い、彼も了承したので何とか押し切ることができたのです。

 里佳子さんからの依頼を受け、私は慰謝料肩代わりの契約書を作成することにしたのですが、里佳子さんいわく、妊娠につながった1回だけでなく、彼と会うたびに肉体関係を持っていたようなので、「何」を肩代わりの対象にするのか悩ましいところです。

「『妊娠につながった性交渉のみ』に限定することも、『すべての性交渉』を網羅することも可能です」

 私は、里佳子さんに提案したのですが、前者の場合、肩代わりの対象は第1条、後者の場合は第2条です(里佳子さんが前者を選んだ場合、第2条は削除します)。里佳子さんは今後も男性との関係を続け、何度となく肉体関係を持つでしょう。それなら、過去だけでなく、将来の性交渉もすべてフォローする後者の方が安心です。

「署名済みの契約書は、今後もずっと残るものです。『不貞行為に及んだ』(第2条)という一文が入っていると、契約書を見返した時に気分を害するかもしれませんね」

 私は苦言を呈したのですが、そのことを踏まえた上で、里佳子さんは後者を選んだので、私は以下の通り契約書を作成し、里佳子さん、そして彼が署名しましたが、里佳子さんが抱えているトラブルは、子の認知や養育費、相手の夫婦の離婚など多岐にわたります。解決しなければならない問題はまだまだ山積みですが、今後の展開については、また別の機会に触れたいと思います。

【参考】彼と里佳子さんが署名した、慰謝料肩代わりの契約書の文面

債務引受等に関する契約書

山田克之(以下、甲という)と須藤里佳子(以下、乙という)は債務引受について以下のとおり、合意した。

第1条 甲乙間の未成年の子(本書作成時点では胎児)が自分の子だと甲はすでに認めている。

第2条 甲と乙は互いに不貞行為に及んだことを認めた。

第3条 乙が甲の妻・山田真由美より、上記1条を原因とする慰謝料を請求された場合は、その請求時期を問わず、甲はその債務を引き受けることを承諾し、引き受けた債務を乙に求償しない(履行引受)。

甲と乙は面識があるので、人違いでないことを確認した上で署名捺印した。

平成30年5月19日
甲 東京都練馬区古橋3-4-10-302 山田克之
乙 東京都世田谷区二軒茶屋5-3-9-801 須藤里佳子

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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