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乳がん検診「マンモグラフィー」と「超音波検査」はどう違う? どっちを受けたらいい? 産婦人科医が解説

10月は「ピンクリボン月間(乳がん月間)」です。乳がんの検査方法として知られる「マンモグラフィー」と「乳房超音波検査」の違いについて、産婦人科医が解説します。

2つの検査の違いは?
2つの検査の違いは?

 毎年10月は「ピンクリボン月間(乳がん月間)」です。乳がん検診の検査方法には「マンモグラフィー」や「乳房超音波検査(乳腺エコー)」がありますが、「どう違うの?」「メリットとデメリットが知りたい」「どっちを受ければいいのか分からない」など、検査内容の違いに関する疑問の声もあります。

 乳がんの検査方法である「マンモグラフィー」と「乳房超音波検査」には、どんな違いがあるのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

それぞれに得意・不得意な「病変」がある

Q.まず、乳がんについて教えてください。

尾西さん「乳がんは乳房にできる悪性の腫瘍で、女性ホルモン(特にエストロゲン)に反応して大きくなる性質があります。そのため、初潮が早い▽妊娠・授乳経験がない▽高齢出産の経験者など、エストロゲンにさらされる期間が長い人ほど乳がんになりやすいです。また、脂肪の多い食事でリスクが上がるといわれており、近年の高齢出産の増加や食の欧米化により、日本でもなる人が増えています。

年間約9万人の日本人女性が乳がんにかかっており、女性が一生のうちにかかるがんとしては、最も多いがんとなっています。また2020年には、乳がんによって亡くなった人の数が1万4650人に上ります」

Q.「マンモグラフィー」「乳房超音波検査(乳腺エコー)」とは、それぞれどのような検診方法でしょうか。

尾西さん「『マンモグラフィー』は乳房のエックス線検査です。乳房は厚みがあるので、重なっている部分にがんがあると見えにくいです。そのため、乳房を専用のプレートで挟み、2方向から撮影します。

一方、『超音波検査』は、あおむけになり、超音波を発生・探知する『超音波プローブ』を乳房に当て、動かしながら乳房を満遍なく診る検査です。

マンモグラフィーと超音波検査にはそれぞれ、得意・不得意な病変があります。例えば、乳腺・乳管に硬い石のようなものが沈着した『石灰化』という状態は、マンモグラフィーの方が発見しやすいです。石灰化はがんの初期症状として現れることがありますが、がんではない良性のケースもあるため、その分布や形で良性/悪性を判断します。この病変は超音波検査では発見しにくいため、マンモグラフィーの方が適しています。

一方で、乳腺が分厚い人の場合、マンモグラフィーではしこりが写りにくいのに対して、超音波検査では乳腺が分厚くても、しこりを腫瘤(しゅりゅう)として見つけることができます。また、しこりとして触れないほどの小さな腫瘤も、超音波検査では見つけることが可能です」

Q.これらの検診方法に、メリットやデメリットはありますか。

尾西さん「マンモグラフィーはエックス線写真が残るので、後から他の医師が確認したり、過去の検診結果を確認しやすかったりするメリットがあります。また、医師や技師の技量にかかわらず一定の精度が保たれます。デメリットとしては放射線被ばくがありますが、被ばく量は東京~ニューヨーク間を飛行機で移動する際に受ける、宇宙からの自然の放射線量とほぼ同じといわれています。

超音波検査は時間がかかることや、医師や技師の技量によって精度にばらつきが出ること、後から検診結果を見返すのが困難なことがデメリットですが、放射線被ばくがないこと、乳腺の分厚い人でも病変の描出が可能なことはメリットです」

Q.マンモグラフィーと超音波検査のどちらを受ければよいか悩んだ際、判断材料になるポイントはありますか。

尾西さん「基本的には、20代・30代は超音波検査、40代以上はマンモグラフィーが推奨されます。しかし、40代以降でも乳腺が分厚く、マンモグラフィーで『高濃度乳腺』といわれた人などは、超音波検査の方が適している場合もあります。超音波検査については、まだあまり検診として普及していないことや精度が安定しないことなどから、現在のところは検診としての死亡率減少効果が証明されているわけではありません。なお、マンモグラフィーと超音波検査の両方を同じタイミングで受けても問題はありません」

Q.「乳がん検診を受けたことがない」「どんな検査なのか不安」といった女性は少なくないようです。

尾西さん「乳がんの最大の特徴は、胃がんや大腸がんなどと違い、体の表面近くにあることです。そのため、“自分でも発見できる唯一のがん”ともいわれています。早期発見もしやすいので、死亡率が高くないというのも特徴の一つです。

がんで命を落とさないためには、『がんにならない』『早期発見で治療する』という2つの方法があります。乳がんにならないためには、脂肪分の多い洋食を減らし、和食中心の食事を心掛けることなどがありますが、これをすれば予防できるというものは現時点では見つかっていないため、早期発見が一層重要になってくるのです。どの年代でも、月に1度はセルフチェックを行いましょう。初めて検診を受けるときは緊張すると思うので、友人と一緒に行ってみるのもお勧めです」

(オトナンサー編集部)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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