昔は「不治の病」のイメージ…現在は? 意外と知らない「結核」の症状や治療法、内科医に聞いた
「不治の病だった」「昔の病気」というイメージを持つ人も多い「結核」。実際はどんな病気なのか、意外に知らないという人もいるのではないでしょうか。症状や治療法について、内科医に聞きました。

「結核」という病気について、「不治の病」のイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。実際に、結核はかつて「不治の病」として恐れられており、正岡子規や高杉晋作など、多くの著名人が命を落としたことでも知られている病気ですが、「どんな病気なのか、ちゃんと知らないかも」「教科書でよく見るから“昔の病気”のイメージが強い」「今でも死に至る可能性がある?」など、その症状や治療法については「あまり知らない」という人も意外と少なくないようです。
意外と知らない「結核」の症状や治療法について、内科医の市原由美江さんに聞きました。
風邪と似た症状、長引くと結核の可能性も
Q.「結核」とはどんな病気ですか。
市原さん「結核は、結核菌による感染症です。感染経路は空気感染で、気道を経由して感染します。肺に結核菌が侵入すると『肺結核』、さらに結核菌が広がり、頸部リンパ節や胸膜に侵入すると『頸部リンパ節結核』や『結核性胸膜炎』を発症します。リンパ節を経由して結核菌が全身に移行することを『粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)』といい、髄膜に移行して『結核性髄膜炎』を発症することがあります。
かつて結核が『不治の病』と言われていたのは、ワクチンや薬がなかった時代、結核は治療のすべがない病気で、命を落とすことが多かったためです」
Q.結核の症状とはどのようなものですか。
市原さん「結核の症状はせきや発熱、倦怠(けんたい)感などで、風邪の症状と似ています。『風邪かも』と思った場合でも、せきや微熱が長引くときには結核の可能性も考慮しなくてはいけません。
今は、新型コロナウイルス感染症の影響で、発熱患者への胸部エックス線を撮影することが少なくなっていますが、特徴的な肺のエックス線像や血たんがきっかけで、結核が判明することがあります」
Q.結核に対して「昔の病気」というイメージを持つ人もいるようですが、近年、結核にかかる人はどれくらいいるのですか。
市原さん「2021年の日本国内の結核患者数は1万1519人、死亡者数は1844人です。決して少ない数字ではありません。
なお、日本人は『肺結核』が多いです。同年の結核罹患(りかん)率は人口10万人当たり9.2人となり、世界保健機関(WHO)の分類で『低まん延国』となりましたが、欧米の先進国よりも患者が多いのです。原因として、高齢化や、医療従事者を含めて結核に対する意識が低下していること、ホームレスなどの社会的弱者の発病が増加していること、外国生まれの若者が日本で発病するケースが増加していること、結核の薬に耐性をもつ結核菌が出現していることなどが挙げられます」
Q.結核にかかりやすい人の特徴はありますか。
市原さん「乳幼児や高齢者は要注意です。中年以降では男性に多く、糖尿病の人、ステロイドや免疫抑制剤を飲んでいる人、HIV感染している人がかかりやすいとされています」
Q.病院ではどのような検査・治療を行うのですか。
市原さん「せきや微熱が2週間以上続いた際は、結核の可能性も考えなくてはいけないので、病院を受診しましょう。行う検査としては、胸のエックス線検査や、たんからの結核菌の検出、血液検査などです。治療としては、抗結核薬を長期間内服することになります。
まずは内科を受診しても構いませんが、結核を診断するための検査を全て行うことはできません。症状が長引き、結核など肺の病気の可能性を心配されるのであれば、最初から呼吸器内科を受診することをお勧めします。
なお、せきや発熱などの症状があり、結核菌を排菌(体外に排出)している状態であれば入院勧告となります。症状がない、あるいは、検査で結核菌を保有しているものの排菌はしていない状態であれば入院の必要はなく、外来での治療になります」
Q.結核の予防は可能でしょうか。また、再発のリスクは。
市原さん「いわゆる“はんこ注射”で知られる『BCGワクチン』を乳児期に接種することによって予防は可能ですが、次第に効果が弱まってくるので、一生涯にわたって有効なわけではありません。再発もしますが、特に免疫力が落ちている高齢者に多いです」
(オトナンサー編集部)
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