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子どもの“YouTuberごっこ”は将来にとってプラス…投稿が話題に、識者に聞く

「なりたい職業ランキング」で上位になるなど子どもに人気の「YouTuber」。その真似事「YouTuberごっこ」をして遊ぶ子どもはプレゼン能力が養われる、との意見がありますが、識者の見解やいかに――。

「YouTuberごっこ」は子どもに有益?

 子どもと「YouTuber」の関係について先日、SNS上で話題になりました。「なりたい職業ランキング」で上位の常連になるなど昨今、子どもに人気のYouTuberですが、その実況などを真似して撮影する「YouTuberごっこ」をして遊ぶ子どもたちも増えています。このYouTuberごっこの過程で「番組の構成」「話のテンポ」「自分の状況を人にわかるように伝える」「説明を見直して確認する」などプレゼンテーションに必要な要素を学べる側面もあるため、YouTuberの真似事は子どもの将来にプラスとなる可能性があるのではないか、という意見が見られます。

 SNS上では「大人も勉強になりそう」「ほどほどに取り入れれば成長のチャンスかも」などさまざまな声が上がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。家族や教育、子どもの問題などに詳しい、作家でジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。

子どもが引かれるのは自然なこと

Q.そもそも、なぜYouTuberは子どもから人気が高いのでしょうか。

石川さん「ソニー生命の調査(2017年3月)によると、小学生の『なりたい職業ランキング』の第3位がYouTuberです。子どもに人気の高いYouTuberは『ゲーム実況』『突撃体験』『実験』『ドッキリ企画』『おしゃれ術』などの動画を発信しています。いずれも子どもの興味を引きやすく、驚きや興奮を味わえます。『こんなことができてすごい!』『自分には無理だけど、この人ならやってくれる』といった憧れや期待もあるでしょう。そもそも人気YouTuberは『どうすれば人を楽しませることができるのか』という点を考えています。そのための努力や工夫、オリジナリティーやユニークな発想などがあった上で発信していますから、子どもが引かれるのは自然なことかもしれません」

Q.健全なYouTuberの真似は子どもの将来にプラスになると思われますか。

石川さん「一部の学校では、子ども自身が動画を撮影・編集し、YouTubeに疑似投稿(実際に投稿するのではなく、投稿したと仮定して教室内で閲覧する)といった授業を行っています。どんな準備が必要で、どんな内容で作ればよいのかといった点や、インターネットで発信していくことのメリットとデメリットなどを学びながら、子ども同士でアイデアを出し合います。自分が面白いと思うだけでなく、動画を『見る側』にとって面白いものは何か、わかりやすく伝えるためにどんな工夫が必要か、などの視点から発想することで今まで気づかなかった発見があるのです」

石川さん「ただし、当然ながらここには先生という指導役がいます。子どもがYouTuberの真似をすること自体はよいと思いますが、それを子どもだけでやるのか、大人が関わって指導・監督するのかで大きな違いがあります。プレゼンに必要な要素を学べるといっても、そもそも子どもは知識や判断力が未熟です。子どもにとっての『良いプレゼン』は、もしかしたら『目立ちたいだけ』かもしれません。また、実際に子どもがYouTuberの真似をして動画投稿した場合、それは多くの人の目に触れ、多様な反応にさらされます。好意的な反応だけでなく、悪意のコメントなどが寄せられ、思わぬトラブルになる可能性もあります」

Q.子どもがYouTuberの動画を見ることのメリットとデメリットを教えてください。

石川さん「今の子どもにとって、YouTube視聴は、テレビを見るような日常の自然な行為です。実際に楽しく面白く、勉強になったり、役立ったりする面があることは事実です。一方、子どもがYouTuberの真似をしたり、YouTuberの動画を見たりする上で注意すべきは、動画で行われていることを実際に行った時、危険や想定外の事態が起こりうる点です。子どもに大人気のあるYouTuberが『消しゴムで消えるボールペンで書いたノートをレンジでチンすると、文字が消える』という実験動画を公開しました。これを見た子どもが真似したところ、ノートが黒焦げになり、家中が煙臭くなったケースがあります。その動画は削除され、YouTuberは謝罪しましたが、一つ間違えばやけどや家が火事になっていたかもしれません。『面白い』ことが『危険なこと』になるかもしれないという視点や注意力を養うことが大切でしょう」

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石川結貴(いしかわ・ゆうき)

ジャーナリスト

家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに豊富な取材実績を持つ。ネット、スマホの利便性の背後にある問題に追った著書「スマホ廃人」(文春新書)は、国公立大学入試問題に採用されている。2020年から共同通信社の配信により、全国の地方新聞で「スマホ世代の子どもたち~大人の知らない最新事情」を連載。テレビ出演や全国各地での講演会など幅広く活動する。その他の著書は「子どもとスマホ」(花伝社)「ルポ 居所不明児童」(筑摩書房)など多数。

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