心配する親も…子どもにとっての「動画サイト」、有益なもの? 利用時の注意点は?
「動画サイト」にはさまざまな映像が投稿されていますが、最近の小学生は動画サイトで知識を得るのが主流だそうです。親はどのような姿勢で向き合えばよいのでしょうか。

日々、さまざまなジャンルの動画が投稿される「動画サイト」。「知りたいことがあるとき、動画サイトで検索する」という人も多いと思います。そんな中、小学生の子どもを持つ親から、「息子が毎日、理科の実験動画を熱心に見ている」「娘は図書館の本を読んで、気になったことを動画サイトで調べているみたい」などの声が上がっており、動画サイトから情報を得ている子どもは少なくないようです。
ネット上では「子どもの興味と知識が深まるきっかけになると思う」「動画も情報収集ツールの一つとして使えばいい」という肯定的な声が上がる一方で、「子どもが動画ばかり見ていたら少し心配になるかも」「無料の動画サイトの情報がどこまで信用できるのかは疑問」など懸念する声もあります。
子どもが動画サイトを使って調べ物をすることに対して、親はどのような姿勢で向き合えばよいのでしょうか。家族や教育、子どものインターネット問題に詳しい、ジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。
「将来の夢」抱く子も
Q.勉強・趣味問わず、知りたいことや興味を持ったことがあるとき、動画サイトを利用して主体的に情報を得ている子どもは実際に多いのですか。
石川さん「2019年の『小学生白書』(学研ホールディングス)によると、小学生男子が将来なりたい職業の1位は『YouTuberなどのネット配信者』だそうです。動画サイトは子どもにとって、身近な存在になっているといえるでしょう。私が取材するご家庭でも、知りたいことを動画サイトで調べたり、興味のある情報を動画サイトから得ていたりする子どもはたくさんいます。一番多いのは『ゲームの実況動画』ですが、学習や知的好奇心から動画サイトを利用するケースも少なくありません。
ある小学4年の女の子は、そろばんを習ってみたくなったのに、保護者や学校の先生など周囲の大人は誰もそろばんの経験がなく、そろばん教室を探しても、その地域には全くなかったそうです。そこで、動画サイトを検索すると、そろばんの使い方や楽しさを教えてくれるサイトがいくつも見つかったと喜んでいました。同年代の小学生の女の子が、そろばんで億単位の計算を難なくこなす動画もあり、『私も勉強したい』と意欲が高まったというのです。
こんなふうに周囲の大人が教えられない、近くでは学べる場所や機会がないことでも、動画サイトで得られることがたくさんあります。さらに、コロナ禍の外出制限で積極的に動画サイトを利用する家庭も増えています。例えば、緊急事態宣言中は料理やパン作りの動画サイトが人気を集めました。親子で一緒に動画を見ながら料理を作ることには、単なる知識の習得以上の効果があると思います。
親が動画サイトを参考にしたことをきっかけに、子どもの方がより積極的に活用するようになったというケースもありました。あるお母さんはコロナ禍で美容院に行けず、セルフカットの動画を見て、自分や子どもたちの髪を切っていたそうです。すると、小学生の2人の娘さんがヘアセット関連の動画を進んで見るようになりました。子ども同士でいろいろな髪形やセルフカットに挑戦し、『将来は美容師さんになりたい』と夢を語っているそうです。
何かのきっかけで興味を持ったことに対して、動画サイトを通じて意欲や自信を持てることもたくさんあるでしょう。そういう点で、動画サイトを利用することは有効な手段だと思います」
Q.子どもが動画サイトを使って調べ物をすることのメリットとは。
石川さん「まず、メリットとしては『簡単に利用できる』『お金がかからない』、そして、巻き戻しや早送りなどの機能を使うことで『自分のペースで学べる』ことが挙げられます。
今年は一部の学校や塾などでオンライン授業が行われ、学習動画を利用する機会も増えています。実際に利用している子どもたちに話を聞くと『自分のペースで勉強できるから、普通の授業より動画の方がいい』という声が聞かれます。分からないところを再確認したり、何度も見て復習に役立てたりするなど動画ならではのメリットは大きいといえるでしょう」
Q.一方で、デメリットもあるのでしょうか。
石川さん「動画サイトから得られる情報は“一方通行”になりがちです。例えば、料理動画なら、既定の分量や材料、作り方が示され、それ以外の情報を得られにくいというデメリットもあります。要は個人の好みに応じた味付けや分量、ちょっとした創意工夫という点では、動画サイトにばかり頼るのは注意が必要です。
また、動画サイトの自動再生機能や『あなたにおすすめ』などのカスタマイズ機能によって、一定の情報に偏ってしまう可能性もあります。知識を深めようとする気持ちは大切ですが“狭く深く”ばかりでなく、広い視点や多角的な情報収集も大切にしてほしいと思います」
コメント