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画像流出も…中学校「スマホ持ち込み」がはらむリスクとは? 金銭面不安な親も

文部科学省が、中学校へのスマホ持ち込みを容認することになりました。トラブルやリスクの懸念を含め、専門家が解説します。

中学校へのスマホ持ち込み、リスクはない?
中学校へのスマホ持ち込み、リスクはない?

 7月13日、これまで原則禁止とされてきたスマートフォンを含む携帯電話の学校内への持ち込みについて、文部科学省が「中学校での持ち込み」を容認し、月内にも全国の教育委員会に通知することになりました。容認の理由として「保護者の要望」「登下校時に災害や犯罪に遭った際の連絡手段としての有効性」が挙げられていますが、一方で、紛失や盗難、授業の妨げ、成績低下、ネットいじめの助長、登下校時の歩きスマホなど、トラブルやリスクも懸念されています。

 ネット上でも「いざというときに、子どもと連絡が取りやすくなるから安心」「SNSいじめなどのトラブルが心配」「親は通信料の負担が増えそう」など賛否の声があります。中学校へのスマホ持ち込み容認を巡る問題点や教育現場の声について、家族や教育、子どものインターネット問題に詳しい、ジャーナリストの石川結貴さんが解説します。

大阪が先行、全国でもという流れ

 文部科学省が、中学校へのスマホ持ち込みを容認することになりました。2019年11月から、省内で「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」が開催されていましたが、根強い慎重論を押し切って容認されたのには、次のような理由があります。

 一つは、災害や事故など緊急時の連絡手段としてスマホが必要だということ。2018年に「大阪北部地震」が発生した大阪府では保護者の要望を受け、府内の小中学校へのスマホ持ち込みを認めています。大阪がやっているのだから全国でもという流れで、容認論が加速しました。

 もう一つは、スマホが子どもの「インフラ」になっているという指摘です。情報収集やコミュニケーション、友達関係など多くの場面で使われる以上、より現実的な指導をするためには、学校でも容認した方がいいというわけです。とはいえ、現場の教職員からは困惑や不安の声が多く聞かれます。

 中学校に先駆け、高校では既にスマホの持ち込みが一部で容認されています。実際に「持ち込み可」の高校の先生を取材すると、「生徒がロッカーに保管したスマホが盗まれた」「授業が自習になると、ほとんどの生徒が動画視聴やゲームで遊んでしまう」「校内で盗撮された動画がネット上に流出した」などさまざまなトラブル事例が挙がります。

 特に深刻なリスクが「校内画像の流出」です。ある高校では、文化祭の様子を撮影した動画がSNSに投稿されました。イベントで盛り上がる生徒が大騒ぎをしたり、男子生徒と女子生徒が密着してダンスを踊ったりするような内容です。いずれも制服姿だったため、たちまち校名が特定され、「ばか騒ぎ」「頭が悪い」などの中傷が学校に寄せられました。生徒が就職を予定する企業からも苦言があり、先生たちは謝罪に回ったそうです。

 別の高校では、校内のトイレで撮影されたと思われる写真や、更衣室で着替えをしている女子生徒の動画がネット上に流出しています。画像には「JK(女子高生)のナマ着替え」といった下品なタイトルが付けられ、一部はアダルト系のサイトに転送されていました。

 どちらの学校も、校内でのスマホ使用は禁止。「かばんやロッカーにしまっておく」というルールがありましたが、全ての生徒の行動を逐一把握するには限界があります。先生たちの指導が難しいだけでなく、生徒間にも「画像撮影の犯人は誰だ」といった疑念やうわさが飛び交い、自分の個人情報が流出するかもしれない不安も高まります。こうしたリスクやトラブルが今後、中学校でも起きる可能性は否定できないと思います。

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石川結貴(いしかわ・ゆうき)

ジャーナリスト

家族・教育問題、児童虐待、青少年のインターネット利用などをテーマに豊富な取材実績を持つ。ネット、スマホの利便性の背後にある問題に追った著書「スマホ廃人」(文春新書)は、国公立大学入試問題に採用されている。2020年から共同通信社の配信により、全国の地方新聞で「スマホ世代の子どもたち~大人の知らない最新事情」を連載。テレビ出演や全国各地での講演会など幅広く活動する。その他の著書は「子どもとスマホ」(花伝社)「ルポ 居所不明児童」(筑摩書房)など多数。

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