「へそくり」は誰のもの? 夫婦間でモメがちな「3つのケース」、弁護士に聞く
夫や妻に内緒で「へそくり」をためている人はいませんか。夫婦間のへそくりは、ため方によっては自分一人のものにできないケースもあるようです。弁護士が解説します。
家の掃除や片付けをしていると、さまざまなものが思わぬ場所から出てくることがあります。実際に、「商品券が大量に入っている封筒を見つけた」「服のポケットから現金が!」など、思わぬ“棚ぼた”に恵まれた人も少なくないようです。
その一方で、「夫(妻)が隠していたへそくりが出てきて、ちょっとした口論になった」といったプチトラブルも起こっているようで、「へそくりって誰のものになるんだろう」「夫婦のものじゃないの?」といった疑問の声も上がっています。
夫婦間の「へそくり」は、法的にどのような解釈がなされるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士に聞きました。
出どころが生活費なら「2人のもの」
Q.一般的に、へそくりは法律上どのような扱いになるのですか。
若林さん「へそくりの出どころによって、位置付けが異なります。民法で次のように示されています。
『夫婦の一方が婚姻前から有する財産』および『婚姻中、自己の名で得た財産』は夫婦のものではなく、夫または妻の『単独財産』です。夫の給与であっても、生活費として妻に渡されれば、それは婚姻費用(=婚姻生活を営むためのお金)であり、夫婦の共同財産です(妻が主な稼ぎ手の場合も同様)。つまり、へそくりの出どころが生活費なら『共有財産』となります」
Q.法的に見たとき、夫婦間のへそくりはそれぞれ誰のものになるのか、ケース別に教えてください。
若林さん「例として、次の3つのケースについて解説します」
【夫(会社員)が稼いで渡す毎月の生活費から、妻(専業主婦)がやりくりをし、節約分を妻のへそくりにしている場合】
先述の通り、原資が生活費、つまり共有財産であるため、夫婦2人のものとなります。
【夫婦共働きで生活費を折半しているが、毎月の生活費(共有分)から夫妻のいずれかがへそくりをしている場合】
このケースでもやはり、生活費を原資とするへそくりなので、夫婦2人のものとなります。
【夫婦(もしくは家族全員)で使用していた家財道具をフリマアプリなどで売り、得たお金をへそくりにしている場合】
家財道具が婚姻中に得たものであれば、それは夫婦の共有財産となるので、それを売って得たお金も共有財産です。そのため、夫婦2人のものとなります。
Q.結婚後のへそくりと、結婚前のへそくりには、法的にどのような違いがあるのでしょうか。
若林さん「まず、結婚後のへそくりは原資にもよりますが、基本的には夫婦の共有財産からのものが多いと思うので、夫婦2人のものとなることが多いでしょう。
一方、結婚前のへそくりは夫、または妻の単独財産になるので、へそくりをしていたその人のものとなります。夫婦2人のものか、どちらか1人のものかは、離婚時の『財産分与』の対象となるかどうかの違いが生じます」
Q.法的トラブルを防ぎやすい、へそくりのため方とは。
若林さん「繰り返しになりますが、夫婦共働きの場合、夫婦間の生活費を原資とすれば、それはへそくりに該当します。しかし、例えば、妻が稼いだお金のうち、生活費以外の部分は(働き方にもよりますが)妻の単独財産です。そのため、これらが混同しないように通帳を分けるなどした方がよいでしょう。
なお、仮に離婚となったとき、夫側が『へそくりがあるだろう』と妻側に請求しても、妻がへそくりの存在を認めないケースもあると思います。この場合、へそくりをためている口座を夫側が特定できない限り、請求が認められることは厳しいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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