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受験社数増で「オワハラ」懸念!? 企業、学生それぞれが心得るべきことは?

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「オワハラ」に遭ったら?
「オワハラ」に遭ったら?

 2022年春卒業予定の大学生を対象とした新卒採用も山場を越えてきています。最終面接を受けて、内定をもらえるかどうかという状況になっている学生も多いことでしょう。今年は事前にマスコミなどで「コロナ不況により氷河期再来か!?」などとあおられていたこともあって、学生の就職活動量が多くなり、新型コロナ以前は年平均10社程度だった受験社数が今年は倍の20社程度になっています。その結果、複数内定者も増えているようです。

 そうなると当然ながら、内定辞退も増えますので、企業の人事担当者も戦々恐々としているのが現状です。そこで懸念される「オワハラ」について、今回はお話しします。

熱意から「オワハラまがい」

 2015年の新語・流行語大賞にノミネートされたことで「オワハラ」、すなわち、「就職活動終われハラスメント」は有名になりました。当時は今よりも「売り手市場」で、学生の方が強い状況でした。そのため、辞退率が上がることを恐れた採用担当者たちが「うちの内定をなんとしても受諾してくれ」「他の内定や選考はすべて早く辞退してくれ」と学生に迫るケースが増えたために、オワハラという言葉ができたのです。

 今年は不景気と散々言われてきたので、採用する企業側が強い「買い手市場」と予想されていたわけですが、フタを開ければ、昨年と求人倍率はほぼ同じで、買い手市場にはなりませんでした。それで結局、コロナ下でもオワハラが問題になっているのですが、元々、企業で長く採用担当をしていた身として、学生の皆さんに伝えておきたいことがあります。それは、採用担当者が学生さんに「ぜひ来てほしい」と思うがゆえに「口説く」ことをついしてしまうのは、なかなか防ぎ難いということです。

 特に評価が高い人であればあるほど、自社に入社してほしいため、結果、強く引っ張ることになることもあります。オワハラ批判を恐れて、強く口説かない企業や採用担当者も最近は増えましたが(それはそれで一つの考えと思います)、本気で採用をしている人ほど、オワハラまがいの口説きをしてしまうこともあるのです。

 もちろん、どんなハラスメントでも、結局は受ける側がどう思うかですので、単に「ぜひうちに来てほしい」という熱意であっても、最終的に学生に「オワハラだ」と思われてしまっては元も子もありません。そう思われる時点で信頼関係ができていない自分を猛省して、もう一度、口説き方を考え直すべきでしょう。

 信頼関係のない人から口説かれても、うっとうしいだけで逆効果です。「ぜひ、うちに来てほしい」という前に「というか、あなたは一体何者ですか。私の何を見て、『来てほしい』と言っているのですか」などと思われないようにしましょう。ただ、学生さんには、この場合のオワハラまがい(結果としては“まがい”ではなく、もう、オワハラかもしれませんが)は自分への高い評価から来るものだと分かってあげてほしいと思います。

もう一つのオワハラまがい

 学生さんにとっては同じに見えるかもしれないのですが、実はもう一つのオワハラまがいがあります。それは「評価が低いゆえのオワハラ(まがい)」です。基本的に企業側は採用の際に、単なる合否だけでなく、A、B、Cと採用時評価を付けています。

 その際、採用基準のボーダーラインぎりぎりの人に対しては「いつまでも待つ」ということはあまりしません。なぜならば、次から次へと同じレベルの評価の応募者が来るので、「もし、この人が来てくれないのであれば、別の人に席を空けたい」と考えるからです。

 この場合も企業側が「今すぐ決めてほしい」という姿勢になることが多くなります。表面的には、先述した評価が高い場合のオワハラ(まがい)と似ていますが、実際は全く逆の理由によるものです。このケースが起こった場合、筆者は気を付けた方がよいと思います。

 というのも、低い評価で入社することになった場合、配属が希望通りにならなかったり、成果を上げにくいポジションに就けられたりすることもあり得るからです。どんな有名企業に入っても、トップで入るのとビリで入るのとでは、入社後のスタートダッシュができるかどうかが違ってきます。

 もちろん、採用時評価など関係なく、入社後の業績で純粋に人を評価するように今の企業はなっていますが、それでも、最初から良いポジションからスタートするのか、ハンディを負ってスタートするのかで成果の上げやすさは変化します。そう考えると「どうしても来たいなら来てもいいよ」くらいの評価で入社するのは、もしかするとあまりよくない選択かもしれません。

結論、オワハラは気にしない

 このように考えると、もし、就活生の皆さんが「オワハラだ!」と考えるような事態に遭遇したときには、その理由(企業側の理由)がどうであっても「なるがままに任せる」でよいと思うのです。もし、あなたの評価が高いのであれば、オワハラ(まがい)に従わずに「今は決められません」と言っても、内定を取り消されることはないでしょう。

 逆にもし、あなたの評価が低ければ、「では、内定はなかったことに」と取り消されるかもしれませんが、そういう評価であれば、入社すべきでないかもしれません。あくまで、私見ではありますが。

 つまり、採用担当者がどのように言ってこようとも、自分が納得できるまで就活を続けるもよし、続けないもまたよしだと思うのです。もちろん、一番よいのは内定を維持したまま就活を続けられることですが、それができない場合でも、不安かもしれませんが、納得がいくまで就活を続ければよいと思います。

 今回の説明でも不安が解消できない人もいるかもしれませんが、以上が、善しあしは別として、あまり語られない現実です。オワハラのような事態に陥った際の参考になれば幸いです。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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