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体調崩しそう? 水以外を断つ「水断食」、健康にどんな影響がある?

短期間、水以外の飲食物を摂取しない「水断食」がネット上で話題に。確かに、体重は落ちると思われますが、健康に悪影響はないのでしょうか。

水だけ飲む生活、健康に影響は?
水だけ飲む生活、健康に影響は?

 正月はおせちや雑煮など、おいしいものをついたくさん食べてしまいがちです。そのため、正月明けの時期は体重を気にして、ダイエットをしようと考える人も多いと思います。

 そんな中、短期間、水(人によっては水と少量の塩分)以外の飲食物を摂取しない「水断食」がネット上で話題になっています。最近では、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが短期間の水断食を行い、体重が2.6キロ落ちたことを自身のブログなどで報告、ネット上でも水断食の体験談が多く上がっていますが、一方で、「絶対体によくない」「体調を崩しそう」「体重は落とせても、体への悪影響の方が大きいのでは?」などと懸念する声も少なくありません。

 水だけを摂取する「水断食」が体にもたらす影響について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

むくみは取れるものの…

Q.水だけを摂取し、それ以外の飲食物を取らない「水断食」を行ったとき、人の体内ではどのような変化が起こると考えられますか。

市原さん「人は食事から、炭水化物や脂質、タンパク質、電解質、ビタミンなどのさまざまな栄養素を体内に取り入れるのが通常です。水分だけを摂取した場合、体内の塩分が尿から排出されるのでむくみが取れると考えられます。しかし、塩分は血圧の調整も行っているので、水分だけを摂取すると血圧が下がりやすくなります。

また、糖質を摂取しないと健康な人でも低血糖になる可能性があり、この場合、倦怠(けんたい)感や手足の震えなどの症状を来すことがあります。体内の糖分が減ると脂肪が分解されて、『ケトン体』という酸性物質が作られ、吐き気や倦怠感、頭が回らないようなボーッとした感覚などの症状を引き起こします。また、同時に筋肉も分解されるので筋肉量の減少にもつながります。

つまり、『水断食で痩せた』という実感を得られることがあるのは、むくみが取れることによる水分量としての体重減、また、糖新生(体内でアミノ酸などから糖を作ること)で筋肉が分解されることによる筋肉分の体重減少によるものと思われます」

Q.水断食が体にもたらす、痩せること以外のメリットはあるのでしょうか。また、医学的観点からみて、水断食によるダイエットは推奨できるものですか。

市原さん「医学的には、水断食によるメリットはないと思います。一方、デメリットは空腹感によるイライラや、低血糖による倦怠感や手足の震え、ケトン体による倦怠感や吐き気などの症状が出ることでしょう。血圧低下による転倒も考えられます。

水断食をしても、水分や筋肉量が一時的に減っているだけなのですぐにリバウンドしますし、そもそも、『脂肪を燃焼する』という意味でのダイエットにはならないのでおすすめしません。健康を保つには、バランスよく食事を摂取することが大切であり、痩せたいのであれば、『食べる量を減らし、運動する』という基本的なことを行うべきです」

Q.水だけではなく、少量の塩分も一緒に摂取した場合はどうでしょうか。

市原さん「塩を取った方が、取らないよりは血圧の低下が起こりにくくなると思います。また、水分を過剰に取ると、血液中のナトリウム濃度が低下する『低ナトリウム血症』になることがありますが、これも塩分を取ることで予防しやすくなるとは思います。

ただし、水と塩だけでは空腹感によるイライラや、低血糖による倦怠感、手足の震え、ケトン体による倦怠感といった症状は防げないと思います。やはり推奨できません」

Q.水断食の期間中、「何も食べていないのに胃のむかつきを感じた」という体験談もあるようです。

市原さん「空腹が続くと、胃酸の分泌によって胃が刺激されたり、胃酸が食道に逆流したりして、胃に不調を来すことがあります」

Q.水断食を絶対に行ってはいけないのは、どのような人ですか。

市原さん「子どもや高齢者は絶対に行わないでください。成人でも持病がある場合はやめてください。健康な人でも弊害が出る可能性があるので、『水断食を行ってもよい』とは医学的にはいえません。決して、水断食を完全に否定するわけではありませんが、やるのであれば自己責任です」

Q.それでも、どうしても水断食を行いたいという場合、どのような点に気を付ける必要がありますか。医学的観点から注意喚起をお願いします。

市原さん「おすすめはしませんが、自己責任でどうしてもやるのであればという前提でお話しします。取る水分量を普段と同じ量にしてはいけません。期間中、水しか摂取しないのであれば、本来であれば、食事の中に含まれている水分量の摂取がなくなるので、その分、いつもより1リットル程度多く水分を取ってください。血圧の低下や低血糖などの症状が起こる可能性があるので、激しい運動はしない方がよいでしょう。

また、どうしても行う際は体調がよいとき、長くても3日程度にしてください。中には、健康診断などを受けておらず、自分がどんな病気を持っているか知らない人もいます。できれば、検査などで特に大きな病気がないことを確認してから行う方がまだましです。

そもそも、人間は水分だけでは長期間生きられません。水断食を行わずに通常の生活を送ることが大前提ですが、行うとすれば、体重や血圧など自分で測れるものは管理して、何らかの不調や普段と異なる症状が出たら、すぐに中止することです」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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