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偏食小食の子どもが朝食を食べず「熱中症」が心配…どうすればいい?

偏食や小食の子どもが朝ご飯を食べないため、「エネルギー不足で熱中症にならないか?」と心配する保護者がいます。熱中症にならないための解決のヒントとは――。

偏食の子どもを熱中症から守るには?
偏食の子どもを熱中症から守るには?

 筆者は子どもの偏食や小食に悩む保護者の相談に乗ったり、園や学校向けに給食指導の研修を行ったりしています。全国各地で暑い日が続く中、子どもたちにとっても心配なのが「熱中症」です。特に、偏食や小食の子どもを持つ保護者からは「食事を十分に取っていないとエネルギーが不足するのでは?」「わが子は熱中症になりやすいのではないか」といった心配の声が届きます。偏食や小食の子どもが熱中症にならないための解決のヒントをお伝えします。

暑い時期は特に心配…

 先日、3歳の娘がいる保護者から、次のような相談が届きました。

「子どもが幼稚園に行く前の朝ご飯についてです。朝ご飯用の小さなおにぎりを食べ終えるのに30分以上かかり、どうしてもイライラしてしまいます。親としては、暑い日が続いているので、熱中症も気になります。

以前、熱中症に近い状態になり、熱が40度近くある状態で幼稚園から帰宅させられたことがあり、不安と恐怖があります。あまり水分も取ろうとしない子ですので、とにかく何でもよいから、おなかに入れて出掛けてほしいと思ってしまいます。でも、時間のない朝、それを娘に求めると無理をさせるようで心配です。どうしたらいいでしょうか?」

「子どもが朝ご飯を食べない」という相談は普段からとても多いのですが、暑い時期になると「体調を崩してしまうのではないか」と特に心配になるのも無理はないと思います。そして、保護者が「子どもが食べないことでイライラしてしまう!」ということもよくありますが、人間の食べ物の好き嫌いがバラバラであるように、子どもにもいろいろなタイプがあることを知っていただきたいです。

 子どもの性質を受け入れた上で、無理のないように食事を進めることが大切です。そのために最初にチェックしたいのは、朝ご飯だけでなく、「1日トータルでエネルギー量がしっかりと取れているか」です。

朝ご飯以外で補えればいい

 厚生労働省「食事摂取基準2020年版」によると、3~5歳の子どもの場合、1日のエネルギーの必要量は男児1300キロカロリー、女児1250キロカロリーとされています。しかし、これはあくまで平均です。もともと体が小さい子どもや日常的にあまり動きが活発でない子どもの場合は例えば、1日のエネルギー摂取量が1000キロカロリーくらいであっても、元気に毎日を過ごすことができます。

 そしてもし、あまり食事を取らない日があったとしても、体の健康がすぐ損なわれるわけではありません。要するに、次の日にエネルギー量を補うことができればよいのです。これは一日の中でも同じで、朝ご飯をあまり食べなかったとしても、その日にすぐ体調を崩すわけではありません。昼ご飯、晩ご飯、間食の中で補うことができれば問題はありません。

 また、そもそもの話として、朝ご飯を食べられないという子どもに多いのは、1日のエネルギー摂取量が昼ご飯や晩ご飯、間食(おやつ含め)の中ですでにほとんど満たされていて、朝ご飯でエネルギーを摂取する必要がないという場合も多いのです。ですから、「本当に朝ご飯を食べないと危険なのか」を「トータルのエネルギー量」といった基準で、見直してみることが大切です。

 もちろん、朝ご飯を問題なく食べられるのであればその方がよいですが、無理して食べさせる必要はないということです。

水を飲みたがらない子ども

 また、熱中症に関連した相談として「子どもが水やお茶を飲みたがりません。暑い時期なので熱中症が心配です。園でも水分が取れていないのではないかと思います」というものがありました。

「水やお茶がまずく感じる」というタイプの子どもは、実は一定数います。これはわがままではなく、感覚的な問題が原因である(味覚が鈍磨傾向にある)ことも多いです。どのようなことかというと、普通の子どもよりも味覚を感じにくい性質で、濃い味が付いていないとまずく感じるというイメージです。

 このような場合は、今飲めるものの味を少しずつ薄くしていき、水に徐々に近づけていくことで飲めるようになります。ただ、すぐに飲めるようになるわけでなく、半年以上の長いスパンで考えて、慎重に行う必要があります。

「園で用意されている麦茶などが飲めない」という場合は、事前に園側に子どもの性質について説明し、今飲めるものを持っていけるようお願いすることも保護者としては大切になります。

 子どもが特定のものを食べないことに関して、「わがまま」だと考える先生もまだまだいます。「わがままではなくて性質であること」を理解してもらうことが大切です。そのためには、相手に伝わりやすいよう、口頭ではなく手紙などを使って説明することをおすすめします。

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)

山口健太(やまぐち・けんた)

月刊給食指導研修資料(きゅうけん)編集長、株式会社日本教育資料代表取締役、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ3000人以上の相談を受ける。著書に海外でも翻訳出版されている「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)などがあり、給食指導などの研修を保育所や学校などの栄養士・教職員に向けて行っている。「目からうろこの内容」と言われるほど“とにかく分かりやすい解説”と、今日からすぐに使える実用的な内容が特徴。月刊給食指導研修資料(きゅうけん)

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