言うこと聞いたらお菓子 “餌で釣る”しつけは水族館のアシカと同じ、再考を
子どもに対して何気なく、“餌で釣る”しつけをしていませんか。これは、芸をさせて餌を与える水族館のアシカショーと似ているように思えます。
「ママの言うことを聞いたら、コンビニでお菓子を買ってあげる」
何気なく行っている、“餌で釣る”しつけ。これは、芸をさせて餌を与える水族館のアシカショーと似ている気がします。
人間の欲は切りがない
人間ほどには知恵のないアシカは「今度は魚を2匹くれないと芸をやらないぞ!」などと、相手の心理をつかんで要求をエスカレートさせるようなことはありませんが、人間はそうではありません。人間の欲は切りがなく、子どもならお菓子からゲーム機、しまいには「携帯電話買って」「バイク買って」と、手に負えなくなる恐れがあります。
「100点とったら、フライドポテトを好きなだけ買ってあげるよ」
「お手伝いしたら、お手伝い表にシールを1枚貼ってあげるね」
これらの他にも、「字の練習をしたら花丸をつける」「頑張って片付けたら頭をなでたり、抱き締めたりする」「好き嫌いしないで全部食べたら、家族みんなで拍手する」といった行為は全て、「ご褒美」で釣っている行為には変わりありません。しかし、与える品物の内容や言葉によって結果は変わってきます。
未就学児の学びの場である「幼児教室」は、その教育内容や目的はさまざまですが、中には「幼児教室」と称していながら、入会時にポイントカードを渡し、「シールを10枚集めたら消しゴム」「20枚になったらクレヨン」「30枚になったら…」と、通ってもらうことでご褒美(餌)をグレードアップする教室もあります。大事な教育の場にもかかわらず、です。
財布を握っているのは親なので、親の心理をうまく利用して、「1カ月継続したらキッチン便利グッズ」「さらに通い続けたら美容グッズ」など、親が欲しそうな景品を準備している教室もあります。
こうしたご褒美の習慣がどんどん身に付いていくと、子ども側もご褒美をもらえることが当たり前となり、やがては「ご褒美が豪華にならないとやらない」といった悪習慣がついてしまうかもしれません。
褒め言葉も“餌”?
自発的な行動を定着させるための学習を心理学用語で「オペラント条件付け」、そのご褒美や目的にあたるものを「強化子(きょうかし)」といいます。たとえ強化子がなくなっても、行動が定着した場合、ご褒美が有効に作用したということになります。お手伝いをしたら、親が「頑張ったね!」「すてきね!」と拍手する。こうした場合、最初は親から褒められたくて、親の喜ぶ顔が見たくて…が動機付けかもしれません。
しかし、ご褒美が品物ではなく、親からの感謝や称賛の言葉であることで、人間が本来持つ「誰かの役に立ちたい」という貢献意欲を満たすことができます。そのこと自体が強化子となり、褒め言葉がなくても拍手をもらえなくなっても、成長とともに行動が定着していくのです。学習を定着させるためには、とても有効な手段です。
シールや拍手、花丸を付ける程度の強化子の場合、子どもは最初、「シールが欲しくてやる」「花丸をしてもらいたくて頑張る」「褒めてもらいたくて片付ける」などの動機でスタートします。
しかし、これをきっかけにだんだんと「勉強したらたくさんの知識が得られて楽しい」「字を練習したらきれいに書けるようになって自信になり、うれしい」「部屋を片付けたら気分爽快になった」といった体験ができるようになっていくと、ご褒美がなくても勉強したり、片付けたりするようになります。そうなると、「強化子であるシールが有効に働いた」といえるのです。
ただし、例えば、強化子をシール→鉛筆→消しゴム→ゲーム…と豪華にしていくと、先述の例のように、学習そのものよりも「ご褒美目当て」にしか勉強しなくなってしまうので注意が必要です。
言い方を変えるだけで変わる
親は普段何気なく、「これをやったら遊んでいいよ」「これ食べたらデザートあげるよ」と連呼してしまいがちですが、「早く片付けて遊ぶ時間をつくろうね」「食事を全部食べられたから、デザートにしようね」と言い方を変えるだけで“餌”に釣られている印象が薄くなります。子どもに人として生きていく上で必要なしつけをしていくとき、「動物の調教」状態に陥るか、そうでないのかは、与えるご褒美の内容次第です。
「お菓子をくれるんだったら、ご飯を食べてあげてもいいよ」
「あめをくれないんだったら、お片付けしない」
「ゲームを買ってくれないんだったら、勉強しない」
子どもは親のまねをします。こんなふうに、子どもから“餌”で釣られないようにしたいものです。
(子育て本著者・講演家 立石美津子)
なんやこのロジックは。
お菓子をもらえるほど大事なことなんだと理解するとは思わんのか。
こどもをナメすぎ。