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「中間管理職は出社義務」の不公平感、それでも前を向くオトナの度量

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「中間管理職だけ出社が義務」という会社があり、社内に不公平感が生まれているようです。出社義務のある、アラフォー世代の中間管理職の声を紹介します。

テレワークで不公平感が生まれることも…
テレワークで不公平感が生まれることも…

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、多くの企業で行われている取り組みの一つ「テレワーク」。出社する社員を減らす、あるいはゼロにして、社員の感染リスクを減らす狙いです。

 テレワークの対象となる社員は企業側が決めますが、ある会社では「若手社員はテレワーク、中間管理職の社員は出社が義務」で、社員の間に不公平感が生まれているようです。

 そんな会社で出社が義務化された、アラフォー世代の中間管理職の声を紹介します。

決裁のはんこを押すために…

 大手の金融系企業に勤める中間管理職のAさん(42歳、男性)は、社内で新型コロナウイルスの影響でテレワークをする人が増える中、毎日出社していました。

「うちの会社では、お客さまとの取引や社内的な手続きで、中間管理職のはんこが必要な場合が多いです。そのため、そうした権限を持つ社員だけは出社を続けることになりました。権限を持たない若手社員はテレワークです」(Aさん)

 Aさんは会社の態勢を受け入れながらも、やや不満なようです。

「仕方ないことだと分かっていますし、感染拡大防止が大切ですから、積極的に協力したいとは思っています。

しかし、職場から徒歩5分の所に住む若手社員がテレワークで、電車で片道1時間かかる私のような社員が出社することが義務となっているのは、ちょっとどうなのかなと。年齢が高く、体にいろいろガタが来ている人が多い中間管理職の方が感染後のリスクも高いわけですし。

出社する人数が減れば、職場の安全はそれだけ確保されますが、電車通勤の感染リスクについてはあまり考慮していないようです。もし、私が感染してしまったら、結局は職場もよろしくなくなるのではと思うのですが…。

定時の午前8時40分よりずっと早い8時には出社するのが暗黙のルールで、満員電車を避けるのは難しいですし、時差出勤は一応認められているものの、上からは『時差出勤するなら(遅い時間でなく)早朝に来ればいい』という静かな圧力もかかっています。

まあ、社員数が多いので、私のようなケースをいちいち見直すような小回りがきかないのだと諦めています」

 会社から支給された、カラスのくちばしのようなマスクをつけて、Aさんは毎日電車に揺られています。

「電車通勤で同乗している他の人たちも、ほとんどがマスクを着用していますが、私のようにいかついマスクをしている人はあまり見かけないので、最初は恥ずかしかったです。今はもう慣れましたが。まあ、マスク不足の世の中なので、支給してもらうだけでもありがたいです。いかついマスクの方が効果は高そうですし」

普段とは“別の忙しさ”が発生

 では、出社したAさんの業務は実際、どのようなものなのでしょうか。普段の業務とどれくらい勝手が違うのでしょうか。

「新型コロナの影響で、普段の営業関連の業務は少なくなっています。ところが、この(若手社員がテレワークとなっている)態勢のせいで別の忙しさが生まれ、忙しさはトントンで以前と変わらずというところです」

 Aさんの言う“別の忙しさ”とは、どのようなものなのでしょうか。

「出社しているのは主に中間管理職で、私よりさらに上の役職の人は若手社員と同じくテレワークです。上の役職の人たちにテレビ電話で1日3回、業務内容を報告しなければならないのです。

その報告の前に、若手社員の業務内容の報告をテレビ電話で受け、まとめておかなければなりません。その後に上の役職の人とテレビ電話をして…ということを繰り返しています。わが社ながら滑稽だと思うんですが、体感的には一日中テレビ電話をしているようです(笑)

このような対・新型コロナ態勢がいつまで続くか分かりませんが、現状は始まったばかりで結構、非効率なところがあり、今後、見直されていくのではないかと思います。実際、本当にテレビ電話ばかりの日には『俺、出社した意味あるのかな…』と思うこともあります」

 会社の対応に関しては、幾つかの点に疑問を抱きつつも、「このご時世では仕方ない」と納得半分、諦め半分で受け入れの姿勢を見せるAさんには、アラフォー世代なりの大人らしさが感じられます。

 なお現在、Aさんの会社の態勢はまた変わり、若手社員と中間管理職が交互に出勤する形となったようです。会社の方も探り探りという感じですね。

 Aさんが言った通り、新型コロナに悩まされる日々はいつまで続くか、まだ分かりません。先行きの不透明さに不安が募ることもあるでしょうが、個人や企業がそれぞれ情勢を鑑みながら冷静に、その場その場で最善と思われる施策や態勢を取っていくことで、社会や個人の経済的損失、感染拡大を最小限にとどめることにつながっていきます。

 難しい状況となってしまった昨今ではありますが、多少の理不尽を、Aさんのように笑いのタネにできるくらいの心の余裕を持つことができれば、悲観ばかりしながら時間を過ごす必要もないのかなと感じさせられました。

(フリーライター 武藤弘樹)

武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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