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店員の“神対応”に学ぼう 子どもの「いたずら」「好き嫌い」にもまず共感を

皆さんは、言うことを聞かない子どもに対して、どんな言葉を掛けていますか。“神対応”の店員さんをまねてみましょう。

(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

 スーパーマーケットでの、ある光景です。

 新聞の折り込みチラシに「極上鮭(サケ)の切り身、5切れパック380円! 激安!」とありました。

 それを見て「夕飯のメニューは鮭にしよう」とスーパーに買いに行ったら、品切れでした。店員に「チラシに載っていた鮭はどこにありますか?」と聞いたら、さらりと「品切れです」の返答。客はその対応にムカッときました。

まず「共感」を示す

 しかし、仮に次のように言われたらどうでしょうか。

「夕飯の献立に鮭を、とお考えになったのですね。せっかく足を運んでくださったのに、品切れになってしまって誠に申し訳ございません。私も、お客さまの立場だったら、とても残念に思います」

「多くの皆さんが『今日の夕飯は鮭にしよう』と思われたようで、先ほど売り切れてしまいました。今度からはたくさん仕入れるよう、店長に申し伝えます。ところで、こちらのブリの切り身は脂がのっていておいしいですよ。夕方にはおそらく売り切れてしまうでしょう。かなりお買い得でございますが、いかがでしょうか」

 ここまで言ってくれる店員は、実際にはいないと思いますが、クレーム対応の極意は「相手の身になって共感する」「相手の利益になるように伝える」の2つです。

 同様に、スーパーではこのような光景もしばしばみられます。

 陳列されている鶏の胸肉のパックを触っている子どもがいました。母親は頭ごなしに「コラ!」「だめ!」「いいかげんにしなさい!」と角を生やして怒鳴っていました。

 しつけをしているという点では素晴らしいのですが、これでは子どもはおそらく、親が見ていなければまた同じことをするでしょう。肉をプスプスと指で触らなかったとしても、豆腐やトマトをブニュッと指で突いたり触ったりするかもしれません。

 こんなとき、店員の“神対応”から学びましょう。

 商品に触りそうになる子どもの手をパッと押さえつつ、「鶏の胸肉のパックって、どの肉のパックよりもプニョプニョしていて触りたくなるよね。分かるよ~その気持ち」とまず共感します。

 そして、「でも、これはまだお金を払っていないから、あなたのものではないの。あなただって、誰かが触った指跡の付いたお肉は食べたくないよね。だから、売り物はジーッと見ているだけにしようね」。

 この説明をすることで、子どもは「なぜ、それをしてはならないのか」の理由を理解し、豆腐やトマトを触ることはなくなるでしょう。

 そして、ブリの切り身を代わりに提案した店員のように「この鶏の胸肉を買おうね。おうちに帰ったらプスプスしようね」と伝えましょう。

「大人の都合」を押し付けない

 遊んだおもちゃを、いつまでも片付けない子ども。親の立場にしてみれば、「もう幼稚園に出掛ける時刻だから」「床に物が散らかっていると、掃除機がかけられないから」などの言い分がありますが、子どもの立場からみると、それはあくまでも“大人の勝手な都合”です。

 子どもは「幼稚園から帰ったらまた遊ぶので、このままの状態で置いておいてほしい」と思っているかもしれません。しかし、それを許してしまうと、お片付けの習慣が身に付きません。

 だからといって「いいかげんに片付けなさい!」「何度言ったら分かるの!」などの言い方をしても、それは親の思いであって、子どもは納得することはできません。

 たとえ、きつく叱られて親の思う通りに行動したとしても、それは「怖いから従っている」だけで、「本当にそうしなくてはならない」とは少しも思っていないのです。そのため、毎日同じことの繰り返しになり、親子のバトルになります。

 そんなときは“神対応”です。

「まだ遊んでいたいよね。片付けるのは面倒くさいよね」「帰ってきてから続きをしたいから、このまま置いておきたいよね」と、まず共感します。

 そして、「でも片付けないと、おもちゃがどこに行ったか分からなくなって、次に遊ぶときに困るかも! それにお母さんが掃除機をかけるとき、壊れてしまうかもしれないよ。吸い込んでしまってなくなるかもしれないよ、大変、大変」と話しましょう。

好き嫌いを直すためにも…

 子どもが食べ物の好き嫌いをするのには、「どうしても口に合わない」など必ず理由があります。しかし、好きな食べ物だけを食べていたら健康にも悪いですし、偏食が直りません。

 そんなときも、「出されたものは残さずに、全部食べなさい!」と一方的に押し付けるのではく、まずは共感しましょう。

「ニンジン、食べたくないよね。何だか変わった味がするよね。分かる、分かる。誰だって苦手なものあるからね」と共感し、その後に「ママも子どもの頃、ニンジンが嫌いだったけど、ちょっとだけ食べたら大きくなれたよ」と話しましょう。

 パクパクと食べるようにはならないかもしれませんが、少なくとも、叱られて「食べろ!」と強要されるよりは受け入れるでしょう。

“神対応”の店員が行うクレーム対応の極意を、子育てでもまねしてみませんか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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