女かよ!と笑われ…人前で食べられない「会食恐怖症」の20代男性、症状を克服するまで
人前でご飯を食べようとすると吐き気などが出る「会食恐怖症」は、若い人も人ごとではありません。20代男性の体験から、どのようにして克服できるのか解説します。
「会食恐怖症」は、人前でご飯を食べようとすると耐え難い不安や恐怖を感じ、吐き気が収まらなくなったり、震えが止まらなくなったりして社会生活に支障をきたす病気です。精神科や心療内科での治療対象となる精神疾患で、子どもの頃から長年悩んでいる人が多いのも特徴です。筆者もかつて、この病気になり、同様の悩みを持つ人を少しでも助けられればと、団体を設立して会食恐怖症についての相談を受けています。
今回は、どのようにして会食恐怖症を克服していくのか、20代男性の体験を紹介しながら解説します。
社会人なりたての頃に症状悪化…
彼が会食恐怖症の症状で一番ひどかった時期は、大学を卒業し、社会人になった頃だったといいます。特につらかった印象的なエピソードを2つ挙げてくれました。
「1つ目は姉の結婚披露宴での会食です。新郎のご家族と初めてお会いするということもあり、『下手なことはできない』とかなり緊張していました。結果的にすぐ気持ち悪くなってしまい、ほぼ何も食べられずに席を外し続けていました。
2つ目は働き出してすぐ、同期の社員と昼食に行ったときのことです。会社の近くの中華料理店に行ったのですが、とても料理の分量が多いお店でした。なんとか食べやすそうなものを頼んだのですが、このときもすぐ気持ち悪くなってしまって、ほぼ食べられなかったのです。
それを見ていた同期(の男性社員)に『女の子かよ!』と笑われてしまい、冗談と分かりつつも傷つきました。目上の人や初対面の人、女性など緊張しやすい相手、そして、大盛りの定食など見た目で圧倒されてしまう場合に、不安が大きくなってしまうようでした」
そんな彼でしたが、最近はフレンチのコース料理を上司と不安なく食べに行けるそうです。どうやって会食恐怖症を克服したのでしょうか。
「1人で積極的に外食しました。調子が良いときは、あえて混んでいるお店に行ってみたり、多めに注文してみたり、ということを試しました。また、山口さん(筆者)の会で出会った、同じく会食恐怖症に悩む仲間と一緒にご飯を食べに行ったことも効果的でした。
同じように悩んでいることをお互い理解しているので、『食べられなくても気を使われたり、変に思われたりしない』という安心感を持った上で練習に励むことができ、結果的に普通に食べられることがほとんどでした。彼らと一緒に会食に行く機会がそれほどなかったとしても、自分と同じ悩みを抱えている人がいると思うだけでとても助けられました」
会食恐怖症を克服するには、無理せずスモールステップで会食に挑戦していくことと、「食べられるようになること」ではなく、「食べられなくてもいいやと受け入れられるようになること」が大切です。彼も考え方の部分が変化して、克服につながっていきました。
「“いつ誰とでもご飯を完食できる=会食恐怖の克服”という考えを少しずつ改め、『体調が悪いときも不安になるときも、食べられないときもあるかもしれないけど、それでも日常生活が送れているから大丈夫』という方向に持っていけるよう意識したのがよかったです。
また、『練習をしたからといって右肩上がりでよくなる訳ではなく、波打つようによくなっていく』ということを説明していただき、焦らなくなりました。他にも、『食べられるかどうかは関係なく、会食に挑戦すること自体がすごい』などと、自己評価の基準を変えてから調子が上がっていきました」
多くの場合、どうしても「これができたからよくて、できないとダメ」と考えてしまいます。食事に置き換えると「食べられたらよくて、食べられないとダメ」などですね。しかし、そうした「できたかできないか」という価値基準で見ることで、さらに苦しくなってしまいます。会食が苦手な人であれば、「苦手なことに挑戦している時点で素晴らしいこと」というように、自分を常に高く評価してあげることがとても大切です。
調子が悪いときは誰でもあるものです。そのときに「調子が悪い自分はダメ」と捉えてしまうと、さらに調子は崩れていってしまいます。「調子が悪いときもあるさ」くらいに考え、調子が上がるのを待つような感覚も時には大切だと思います。
(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)
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