子どもの「偏食」は“わがまま”ではない 見た目や食感などが原因に
子どもの偏食は単なるわがままではなく、食べ物の見た目や口に入れたときの感覚が大きな原因だそうです。「食べない子」に悩む親からの相談に乗る専門家が解説します。
子どもの「偏食」に頭を悩ませている親は多いと思います。偏食は子どもの単なるわがままではなく、食べ物の見た目や口に入れたときの感覚が大きな原因にもなるそうです。「食べない子」に悩む親からの相談に乗り、保育園・幼稚園や学校で給食指導の講演・研修活動などを行う筆者が解説します。
偏食は「感情的なわがまま」ではない
先月、あるお母さんから、「小学2年生の子どもが給食を食べられない」という相談が届きました。
給食の「残食ゼロ」の取り組みに熱心な小学校のようで、児童に配布している「給食だより」では「食品ロス」を取り上げ、完食したらご褒美として「完食シール」を配布。さらに、給食を残したら教室の掃除をするペナルティーがあるという「これは体罰と指摘されてもおかしくないのでは…」と思われる施策も行われているといいます。
相談対象となったこの子は、いわゆる「感覚過敏」が原因で、他の子よりも食べられるものが極端に少ないとのことです。お母さんから子どもの偏食の相談を受ける際、この例のように、感覚過敏などの感覚の問題が偏食に大きく絡んでいるケースがあります。
しかし、感覚過敏はなかなか理解されず、保育園や学校の給食で苦しむケースがとても多いです。偏食は「感情的なわがままによるもの」とされてきたからです。ところが、最近の研究では、それが間違いであることも分かってきました。
もともと偏食が多いといわれている発達障害の子どもを研究する中で、偏食に関する調査・研究も始めた東京学芸大学の高橋智教授も、NHKニュースおはよう日本「子どもの“偏食”実態明らかに」の中で次のように述べています。
「従来は『好き嫌い』『わがまま』と言われがちな問題だったが、これは生理学的な問題。そもそも、食に対する見え方の問題や、口に入れた感触、中には、うまく食べ物をかみ砕けなかったり、飲み込みが困難だったりする人がいて、そういった特性や身体的な問題が食の困難・偏食を大きく規定している」
このような感覚の違いは、一般に自閉症傾向のある子どもに多いのですが、それ以外のお子さんでも感覚の違いを抱える子がいて、給食など集団での食事機会で苦労することが多いのです。では、どのように解決していけばよいのでしょうか。
まず大切なのは、子どもの「苦手」を細かく見てあげることです。拙著「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)では、「感覚的な苦手」を6つに分類しています。
(1)見た目
視覚優位で「食べられる」「食べられない」を判断する。同じ食材もいつもと同じ形ではないと食べられない、など。
(2)味覚鈍麻
味覚が鈍く、味を感じにくい。例えば、白米も、ふりかけやカレーなどがないとまずく感じてしまい、食べられない。
(3)刺激
味を強く感じてしまい、濃い味付けが苦手。例えば、酸味を強く感じやすく、果物やマヨネーズが苦手など。
(4)食感
口に入れた時の食感=口腔(こうくう)感覚=が気になり、ぐちゃっとしたものや、ねっとりしたもの、ぬれたもの、やわらかい食感のものを気持ち悪いと感じる。まれに、パリパリしたものが苦手という子もいる。
(5)香り・風味
においを強く感じてしまう。例えば、生魚を食べられない、だしの風味が強いみそ汁やお吸い物が苦手、など。
(6)飲み込みやすさ
(こちらは感覚の問題とは少し異なりますが)そしゃくや嚥下(えんげ)の力が未発達なケースなど。例えば、パサパサした食感のものが飲み込みづらいと感じたり、硬い肉や生野菜、キノコ類など繊維質のものをかみ切れずに吐き出してしまったりする。
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